記事のポイント

  • トルコの首都アンカラの約200km東に位置するボアズキョイ村にあるハットゥシャ遺跡は、青銅器時代のヒッタイト帝国のかつての首都であり、古代言語の宝庫となっています。
  • 2023年に行われた遺跡の発掘作業中に考古学者たちは、外国の儀式に関する内容が記された石板に書かれた新しい言語を発見しました。
  • 専門家たちは、「その慣用句が具体的に何を意味するのか」は未だに解明できていませんが、新しい言語がインド・ヨーロッパ語族のアナトリア語派に属することは確認されています。

発見された
新しい言語の正体は…

ヒッタイト帝国の首都であった古代都市ハットゥシャは、後期青銅器時代(紀元前1650年頃から紀元前1200年頃)に北中部のトルコを支配した場所として、また古代言語の宝庫として知られています。ハットゥシャ遺跡では過去1世紀にわたる発掘作業により、アナトリアの青銅器時代の歴史・伝統・社会を記した約3万枚の楔形文字の粘土板が発見されました。青銅器時代の歴史を紐解く文化遺産に富んでいることから、かつては強大な権力を誇ったこの遺跡は、1986年にユネスコの世界遺産に指定されました。

ハットゥシャで見つかった大半の粘土板には、ヒッタイト語が書かれています。これは最古のインド・ヨーロッパ語族と考えられており(そして英語が進化した言語の系統)、この地域の他の言語であるルウィ語、パライ語、ハッティ語を含む楔形文字も貴重な遺産の中から見つかっていました。

しかし、今回の遺跡発掘作業により、驚くべき発見がありました――。今まで見たこともない、全く新しい言語が発見されたのです! これは言語界の偉業と称するにふさわしい発見と言えます。

ハットゥシャ
Anadolu Agency//Getty Images
トルコのハットゥシャ遺跡

ドイツのユリウス・マクシミリアン大学(JMU)ヴュルツブルクの古代近東学の学科長であるダニエル・シュヴェーマー氏は、プレス声明で「ヒッタイト人は、異国の言語で儀式を記録することに独特の興味を持っていた」と述べています。

この古代の祭祀(さいし)文書には、馴染みのない言語で書かれた暗唱文が隠されていますが、考古学者によれば、「このヒッタイト語のテキストは、カラシュマ(ヒッタイト帝国の辺境北西端に位置する地域)で使われていた言語の慣用句を指している」とのこと。ですが専門家たちは、この楔形文字の一節が、何を意味しているのか全くわからないようです。ですが、「この言語がインド・ヨーロッパ語族のアナトリア語派であることは確認できた」と発表しています。

その名前が示すように、インド・ヨーロッパ語族は、ヨーロッパの多くの現代国とインド亜大陸を包括する多様な言語の大家族を構成しています。これらの地域におけるほとんどの言語はもともとの“母”言語にさかのぼるルーツを持っており(その中でもバスク語は、不思議な特徴を持った例外的な言語ですが…)、専門家たちは「インド・ヨーロッパ祖語は恐らく黒海周辺、現在のウクライナ南部に起源を持つのではないか」と考えてきました。

黒海の反対側にあたる地域では、「カラシュマは現代のトルコ北西部のボルやゲレデの近くに位置しており、これはパラー語が話された地域と地理的に近い」という証拠があります。ただし今回新たに発見された言語は、「ヒッタイト帝国の東南隅で話されていたルウィ語との共通点がより多い」とのこと。

現在はほんの一部しか分かっていないカラシュマ語ですが、この長く忘れ去られていた言語の新たな痕跡が、今後アナトリア半島の広大な地域のどこかで発見される可能性は十分にあります。

source / POPULAR MECHANICS
Translation / Yumi Suzuki
Edit / Satomi Tanioka
※この翻訳は抄訳です