記事のポイント

  • 地球のオゾン層の穴が、2023年は早くも開きつつあります。
  • 80年代から90年代にかけてこの穴は多少回復しましたが、それでも毎年、開いては閉じるといったサイクルを繰り返しています。
  • 例年よりも先だったオソンホールの拡大は、2022年の巨大な海底火山の噴火によるもので、すでに気候変動による大きな悪影響にさらされている南極海をさらに温める可能性があります。

オゾンホールの現在

皆さんは、オゾン層の穴(オゾンホール)のことを覚えているでしょうか? 気候変動に伴うさまざまな兆候がこれほど容易に、そして顕著になる以前、南極大陸の上空にあるオゾン層に穴が開いたことは「私たちが地球に何かをしている」、つまり、深刻な悪影響を及ぼしていることを示す非常に強い指標となりました。

幸いなことに、オゾン層の保護と修復を中心とした国際条約である「モントリオール議定書」が1989年に発効し、オゾン層を破壊する物質として知られる化学物質(クロロフルオロカーボン。フロンの一種)の排出は段階的に削減されていきました。それ以来オゾン層は回復し始め、2066年までに1980年代以前のレベルに戻ると見られています。

これは良いニュースですが、残念なことにまだ完全に回復するまでには至っていないようです。現在に至るまで、オゾンホールは予測可能な周期で拡大・縮小を繰り返してきいるのです。

ですが、2023年は少し違うようです。8月から10月ごろに開き、11月から12月ごろに消滅するというオゾン層の穴が、なんと2023年初めに開き始めました。

原因となったのは
トンガ沖海底火山大噴火

その原因は、驚くべきことに私たちではありません。純粋に自然現象によるもので、2022年に南太平洋にあるトンガのフンガ火山(フンガトンガ・フンガハアパイ火山)で起きた大規模な噴火に起因しているということ。

このトンガ沖海底火山大噴火は、大津波と巨大な衝撃波を巻き起こし、とんでもない量の水蒸気を大気中に放出しました。その噴火の影響で、「現在の大気は通常の約3倍の水蒸気を含んでいる」とされています。そして、それがオゾン層に影響を及ぼしているというのです。

オゾン層
Naeblys//Getty Images

そもそも、オゾン層の穴が拡大したり縮小したりするサイクルは、上層大気の雲によるもの。このような雲を形成する水蒸気は、オゾンを破壊する反応性化学物質(特定の条件下で化学反応を起こす物質)を形成することがわかっています。気温の変動によって、その雲が出やすくなったり出にくくなったりする時期があるため、オゾンホールもそれに伴って変動するとされてきました。

そして、オゾン層に大量の水蒸気が注入されれば、「大気中の化学反応に影響を及ぼし、オゾン層の破壊が悪化するとされています。研究者たちは以前より、「大気中に放出される水蒸気の量によりオゾン層への長期的な影響がある」と知っていました。が、これまでそれを目の当たりにすることはなかったのです。

幸いなことにこの状況は、永久に続くものではありません。ですが、それでも世界の一部にダメージを与える可能性もあります。特に研究者たちが懸念しているのは、すでに気候変動の深刻な影響を受けている南極海です。また、北極海の海氷もこの時期としては史上最低とされているので、この地域の真上でオゾン層に穴が開くのは避けたいところと言えるでしょう。

南極大陸のペンギン
Bruce Wilson Photography//Getty Images

私たちがこのような事態を引き起こしたわけではありませんが、間違いなく言えるのは、私たちがこのような気候危機を主だって引き起こしているということ。

恐らく記録的な気温問題に直面していなければ、オゾン層の穴がいつもより早くから開いていたとしても、それほど大きな問題にはならなかったでしょう。ですが、将来的にこうした事態にならないようにしたいのなら、今私たちがやるべきことはたくさんあるのではないでしょうか。

source / POPULAR MECHANICS
Translation & Edit / Satomi Tanioka
※この翻訳は抄訳です