2017年11月、ニュージーランドの科学者たちは熱水ドリルを使用し、南極大陸で最も面積の大きいとされている「ロス棚氷」を掘削しました。その棚氷は最大1万フィートの厚さにもおよび、南極大陸西部の大量の氷雪の中でも最大規模を誇っています。「もしも、この棚氷が崩壊することがあれば、世界の海面水位は10フィート上昇する」と言われています。

 その掘削の様子は既に、2018年8月31日公開の南極地下300mの掘削孔を覗く― ロス棚氷の謎多き地下という記事で「エスクァイア・デジタル」でも紹介しております。


 ここは地球温暖化の現状を計りにかける場合において、重要なポイントとされている地であり、そこに穴を開けてビデオカメラと温度計を下ろした結果を公開することによって、よりリアルにより説得力のあるレポートで世界に警告を発しようという狙っていたことでしょう。
 
 確かに前の記事では、「70年代に記録された測定値と比較して、棚氷の下の水温が温かいことが示唆されています」という結果を公開しました。そして、これは明らかに悪い兆候であると…警告しています。そうした経緯を踏まえ研究者たちの誰もがこの穴の続報として、「ロス棚氷の下の氷は溶けている」ことを証明する動画とともに、世界に警鐘を鳴らそうと準備したいたに違いありません。ですが…この続報となる動画をご覧ください。

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
Deep Bore Into Antarctica Finds Freezing Ice, Not Melting as Expected | National Geographic
Deep Bore Into Antarctica Finds Freezing Ice, Not Melting as Expected | National Geographic thumnail
Watch onWatch on YouTube

 この『ナショナルジオグラフィック』の映像を観るに、ビデオカメラが海底へと向かって下降していく中、穴の周りの氷の結晶には白い点を帯びていることが確認できることでしょう。もしも、この棚氷が溶け始めているということであれば、この深度に達した穴の表面は滑らかになるはずなのです。この映像ではむしろ、凍結しているかのような様相を呈していたのでした。

 このプロジェクトの共同リーダーであるニュージーランド・オタゴ大学の氷河学者クリスティーナ・ハルベ氏は、「本当にびっくりしました…」と『ナショナルジオグラフィック』に語っています。

 そして、この探索に携わった科学者たちは、今後数年間は棚氷の下の水流と水温を測定するため、機器を穴の奥深くに残したままにするそうです。

earth, climate, climate change, ross ice shelf, antarctica, sea rise, glacier, global warming
NATIONAL GEOGRAPHIC

 このように、研究結果は予想外のものでした。ですが、それは加速している温暖化と氷結の融解という大きな傾向を覆すものではありません。

 実際にNASAは、南極大陸では毎年氷が急速に減少していることを発表しています。

 今回のロス棚氷における不思議な結果の理由は、今後さらに多くの研究が重ねられて初めて、明確な解答が導き出すことができるでしょう。

 そんなわけで今言えることは、「少なくとも近い将来、ロス棚氷の壊滅的な溶解が起こることはないだろう」という、まずまずの結果だったわけです。

 しかしながら2019年1月16日付(米国時間)の「Advances in Atmospheric Sciences」誌に掲載されCNNでも取り上げられていた新たな研究によれば、2018年の地球の海水温は観測史上最高を記録したとのこと。

 つまりは地球の温暖化現象によって、世界の海水はさらに急激に上昇しているという事実は拭うことはできないのです。




Source / National Geographic
From Popular Mechanics
Translation / Kazuhiro Uchida
※この翻訳は抄訳です。


Related Videos