「うちの会社は宣言好きなんです…」とボルボの広報。
果たして、“宣言好き”とは?

 2017年、ボルボは「2030年までにすべてのボルボ車を電動化させる」と宣言をしました。しかしそのときに、一部メディアで「ボルボ全車EV(電気自動車)化へ」という話が流れ、世間をざわつかせました。

 何が誤っているのかと言えば、「電動化」と「電気自動車」は一見、同じように見えるかもしれませんが、全くの別モノなんです。「電気自動車」は100%電気で走るクルマですが、「電動化」というのはモーターのアシストが付いたもののことを指し、ハイブリッドやプラグインハイブリッドモデルのことです。

 ボルボのその計画は2019年から実行され、2020年にはボルボが販売するモデルにエンジンのみを動力源とするクルマはなくなりました。現在は、各モデル「リチャージ プラグインハイブリッド」と「48Vハイブリッド」というラインナップになりました。

 しかしその後、ボルボは「2030年までにボルボはEVメーカーになる」と宣言。4年前の2017年に流れた「誤報」が、なんと現実のものに…。

 そして2021年3月2日、ボルボ初のピュアEV「C40 リチャージ(Recharge)」をオンラインで世界初公開しました。と言っても、まだプロトタイプの段階でしたが、ほぼ発表されたデザインのままで市販化されるそうです。

ボルボ、驚きの販売方法も宣言

 このワールドプレミアの直後、東京・ミラノ・ニューヨークで実車が公開されましたが、このときの宣言に大きな反響が寄せられました。その宣言とは、「C40リチャージ」を含めたEVモデルの販売が、オンラインのみになるということです。中でも、「C40リチャージ」の最初に販売される100台には、新たなサブスクリプションのプランが用意される予定であること。このサブスクは、車両代や任意保険などが含まれるのですが、3カ月で解約可能という内容になるのだとか…。 

 ボルボは今まさに、「大転換点の真っただ中にいる」と言えるかもしれません。

 ちなみにボルボの場合、「V」シリーズがステーションワゴン、「XC」シリーズがSUV 、「S」シリーズがセダンとなります。ボルボのEVとプラグインハイブリッドにつけられたのが「リチャージ」ですが、これは「外部充電可能」という意味に由来しています。

 そんなボルボが始めた電動化ラインナップの拡充ですが、日本での販売モデルが出そろったということで、今回その中の1台を、石川県の古都・金沢で試乗してきました。

試乗するのは「S60リチャージPHEV T6 AWDインスクリプション」

 私が選んだのは、「S60リチャージプラグインハイブリッド T6 AWDインスクリプション」。日本市場には最後に導入されたモデルでもあります。

ボルボ「s60リチャージ phev」で金沢をドライブ!【yy carlife】
Yumi Yoshida
ボルボ「s60リチャージ phev」で金沢をドライブ!【yy carlife】
Yumi Yoshida

 このモデルは、「SPA」という中型&大型車用のプラットフォームをベースにしたPHEV(プラグインハイブリッド)となります。Drive-E 2リッター4気筒スーパーチャージャー付き直噴ターボエンジンと、240Nmの電気モーターを組み合わせています。

 最高出力253PS(186kW)、最大トルク350Nm。ドライブモードは、バランスの良い「ハイブリッドモード」、ガソリンエンジンを停止したまま電気モーターのみで走行する「ピュアモード」、強い加速の「パワーモード」、力強い走りをする「コンスタントAWDモード」があります。

いざ千里浜なぎさドライブウェイへ!

 今回の試乗は、石川県金沢市を中心に1泊2日の日程で行われました。試乗自体は1日ですが、金沢には行ったことはあっても観光をしたことがなかったので、試乗の前日に金沢に到着し、ミニ市内観光です。

 お約束の兼六園、金沢公園を次の日のための下見も兼ねて駆け足で巡りました。そして翌日は試乗日本番。朝に茶屋街で撮影を済ませてから、今回一番行きたかった「千里浜(ちりはま)なぎさドライブウエイ」へ。

image
Yumi Yoshida

 千里浜海岸は、砂浜を一般車で走行できることから全国的に有名なスポットです。石川県の羽咋市(はくいし)千里浜町から羽咋郡宝達志水町(ほうだつしみずちょう)にかけての全長およそ8kmにもおよぶ海岸を走行できる砂浜の道路で、国定公園の一部でもある景勝地です。金沢市内からはクルマで約40分。金沢に行ったらドライブで訪れたい場所なのです。

 しかし最近では、地球温暖化の影響からか砂浜のエリアの浸食が進行し、走行できない日もあります。詳細は羽咋市公式ホームページを。走行可能な距離や場所は、千里浜なぎさドライブウェイ通行情報「石川みち情報ネット」で毎日朝8時半ごろ発表されます。コロナ禍が落ち着いてからのお出かけの際は、そちらを確認してください。

 この「千里浜ドライブウェイ」は砂浜なのに、なぜ走行できるのか?というと、その秘密は砂浜の砂にあります。他の海岸の砂の粒径は1mm~0.5mmほどなのに対し、千里浜の砂の砂径はなんと1/4mmなのだとか。その細かな砂の粒子の間に海水がしみ込むことで「ダイラタンシー」なる物理の現象が生まれて、スピードある抵抗に対して砂浜は固くなります。そうして道路として走行できるわけです。

 とは言え、海岸から少し陸側に外れると柔らかい砂のまま。しかし、ここはボルボ「S60リチャージプラグインハイブリッド」のコンスタントAWDモードの腕の見せ所。他のモードでは砂を噛んでしまい、脱出できませんでしたが、コンスタントAWDモードにしたら余裕で脱出できました。

ボルボ「s60リチャージ phev」で金沢をドライブ!【yy carlife】
Yumi Yoshida

 通常のドライブでは、走り出しはモーターなので、もちろん静かで滑らか。しかし、ハイブリッドモードも負けずにスムーズ。状況によってエンジンが作動しますが、それもスムーズなのでとても自然な乗り心地です。車両重量が2トン超えなこともあるせいか、どっしりと構えていて、上質感と安定感を兼ね備えています。

V60リチャージ PHEV T6 AWD インスクリプション
image

 ボルボ「S60リチャージプラグインハイブリッド T6 AWDインスクリプション」は四輪駆動ですが、ピュアモードではリアのモーターだけのFR(フロントエンジン・リアドライブ)になるのもポイント(その場合、モーターのみで走行できる最高速度は時速125キロ)。回生ブレーキ(クルマを減速させるときに発生したエネルギーを電気に変えてクルマを動かす)のフィーリングも悪くありません。

 そして、やはりボルボと言えば、先進技術を用いてドライバーの安全運転をサポートしてくれる運転支援機能にも期待してしまいますが、もちろん全車標準装備です。

 エンジンスイッチを押すと、メーターパネルに搭載機能の一覧がズラリと表示されます。「シティセーフティ(衝突回避・被害軽減ブレーキ)」には「対向車対応機能」や「歩行者・サイクリスト検知機能」なども装備され、他にも「オンカミングレーンミティゲーション(対向車線衝突回避支援機能)」など安全のフル装備。

 実は私の現在の愛車はボルボ「XC40」というクルマなので、「ボルボの世界」はとても親近感があります。なにしろ機能の操作方法などは同じなので。いつも思うのですが、ハンドルに描かれている機能は、文字の説明はなく、グラフィックのみ。しかし、言葉が書かれていなくても、直感的に意味が分かるのが凄いなと思います。

 ボルボといえばステーションワゴンやSUVの人気が高く、セダンの影は薄いのですが、実はスタイリッシュで上品。さらにプラグインハイブリッドで静かさとしっとりとした乗り心地を手に入れて、より洗練された大人な乗り物となりました。

 そして私は、ボルボが次に出す「宣言」が気になります…。


image
TATSU YUASA

カーライフ・エッセイスト
吉田由美

2月23日、岩手県生まれ。短大在学中に「ミス渋谷」、「ミス・チェッカーモータース」、「準ミス・エチュード」など、10個以上のミスコンタイトルを受賞。卒業後、本格的にモデル活動をはじめる。1998年より、モデル業とともに日産ドライビングパークで、セーフティ・ドライビング(安全運転講習)のインストラクターに。3年間務めた後、現在は「カーライフ・エッセイスト」として、著書、雑誌、ブログなどの執筆活動を行っている。