アメリカ南東端・フロリダ州デイトナビーチにある、デイトナ・インターナショナル・スピードウェイを本拠地とするNASCAR(National Association for Stock Car Auto Racing|全米自動車競争協会)。このたび、IMSA(国際モータースポーツ協会)およびACO(フランス西部自動車クラブ)との合意のもと、2023年のル・マン24時間レースへ参戦することが決定しました。

参戦する車両は、NASCARの次世代車両(NextGen)のカップカー(編集注:カップカーとは、改造範囲が限られる同一車種で行われるレースに出場するためのレーシングカーのこと)となるシボレー「カマロ」。参戦カテゴリーはル・マン24時間レースの中で、革新的な技術を備えた次世代車両のための特別カテゴリーである「ガレージ56」です。

2023年6月にはル・マン24時間レースの会場であるフランスのサルト・サーキットで、風を颯爽と切り裂くこのNASCARの勇姿を目にすることができるはずです。

 
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2022年3月17日(現地時間)、ル・マン24時間レース参戦についての記者会見が行われました。

このプロジェクトチームの中心となっているのが、NASCAR史上最高のチームとの呼び声高い「ヘンドリック・モータースポーツ」です。そして、7度のNASCAR制覇を誇るこのチャンピオンチームをチーフとして率いているのは、あのチャド・クナウスです。

ル・マン24時間レースにとって2023年は、100周年目となる節目の年に当たります。NASCARが初めてル・マン24時間レースに公式参加したのは、アメリカ建国200周年に当たる1976年のことでした。ハーシェルとダグのマグリフ親子がダッジ「チャージャー」のカップカーを、そしてディック・ブルックス、ディック・ハッチャーソン、マルセル・ミニヨーがフォード「トリノ」を駆り、ル・マンのサーキットにNASCARのモンスターカーの雄姿を示したのでした。

今回、NASCARのル・マン24時間レースへの参戦計画について、このプロジェクトの鍵となる重要情報はまだ公表されていません。ですが、それも数カ月の内に明らかになる見込みです。約半世紀前に、7.0リッターのV8エンジンを積んだカップカーで乗り込んだ先駆者たちへのオマージュとなることが期待されます。

これはxの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

「NASCARの黎明期から、国際的なモータースポーツの舞台で結果を示すことを、私の父は長いこと夢見てきました。そんな私たちにとってル・マン24時間レースは最高のステージなのです」と、熱く語るのはNASCARの会長兼CEOであるジム・フランス氏です。

「ヘンドリック・モータースポーツとシボレーとグッドイヤーの共闘です。これはつまり、NASCARの歴史の中で最も多くの勝利を手にしてきたチーム、自動車メーカー、タイヤメーカーのパートナーシップが実現したことを意味します。『次世代を象徴するクルマをル・マンに持ち込み、高い技術力と競争力をこの由緒あるレースで発揮したい』と考えています」と、フランス氏は語気を強めます。

今後1年近くの間に集中的なテストが行われ、ヘッドライトやテールライト、エアジャッキなど、NASCARでは普段あまり使われることのないル・マンならではの装備にも慣れていく必要があるでしょう。もちろん、24時間繰り広げられるレースに備えて「カマロ」にも多くの改造が必要となることは明らかです。

FIA世界耐久選手権の公式戦であるル・マンにおいて、ガレージ56という栄えあるエキシビションに登場する「カマロ」には、その性能を存分に発揮して長丁場のレースを闘い抜く大きな責任が課されます。果たしてそこで、どのような物語が紡がれることになるのか。今から期待は高まるばかりです。

 
Sean Gardner//Getty Images
写真左端がヘンドリックモータースポーツのオーナー、リック・ヘンドリック氏。ヘンドリック・モータースポーツは、2022年3月20日に行われたカップシリーズでも見事優勝を飾ったばかりです。

NASCARとシボレーを代表して、自動車レースの最高峰の舞台に立てるのは、この上なく名誉なことです(リック・ヘンドリック氏)

ヘンドリック・モータースポーツのオーナーであるリック・ヘンドリック氏は、目を輝かせて次のように話します。

「今回のプロジェクト実現のために惜しみない努力を払ったジム・フランス氏は、称賛に値します。そしてわがチームを信頼し、この大役を任せてくれたことには感謝しかありません。ル・マンを愛するファンの人たちの期待に応えるためにも、競争力と驚きに満ちたマシンをサーキットに持ち込む予定です。チームにとっては、この先15カ月に及ぶエキサイティングな挑戦となりますが心の準備はすでに整っています」

Source / CAR AND DRIVER
Translation / Kazuki Kimura
※この翻訳は抄訳です