マスクが消えた
ニューヨークの街角

ニューヨークの街角からマスクが消えた。

spring at new york's central park
Anadolu Agency//Getty Images
2022年3月22日のセントラルパークにて。半分以上の人々がマスクなしので、散策を楽しんでいた。

地下鉄やバスなどの公共機関ではマスク着用が義務づけられているが、その他は着用義務がなくなって、会社でもジムでもレストランでもマスクをしていない人ばかりになった。

現在、ニューヨーク市内での新型コロナ感染陽性率は2.06パーセント(3月28日時点)。この数値はマスク着用義務がなくなる3月頭に、1.3パーセントまで減ったところから少し増えている。

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オバマ元大統領が新型コロナ陽性になったというニュースも入り、またオミクロン株の変異株BA.2系統の株がニュージャージー州で急増して、これは「オミクロン株よりさらに30%感染力が強い」とされる。

また、感染数が増えると予想はつくものの、専門家も従来のワクチンで対策できるものとして、ビジネスの規制やマスク着用義務については今のところ語っていない。病院が逼迫(ひっぱく)しないかぎり、ビジネス規制に戻ることはしないと思われる。

ロシア兵に殺害された
アメリカの報道人たち

そんなアメリカで連日大きく報道されているのが、ロシアによるウクライナ侵攻だ。アメリカ人ジャーナリスト、ブレント・レナウド氏がフィルムを撮影中に、キエフ付近でロシア軍に射殺されたニュースは世間を大きく揺るがした。

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さらにFOXニュースのレポーター、ベンジャミン・ホール氏がやはりロシア兵に脚を打たれて負傷、そして彼と一緒に取材をしていたカメラマンのピエール・ザクシェフスキー氏と、ウクライナ人記者のオレクサンドラ・クフシノワ氏が乗っていた攻撃を受けて死亡。

ジャーナリストが戦火の対象になることじたい、許されないことであり、アメリカ国内でロシアに対する非難の声があがっている。

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'No one is safe': CNN's Alisyn Camerota reacts to Fox reporter injured in Ukraine
'No one is safe': CNN's Alisyn Camerota reacts to Fox reporter injured in Ukraine thumnail
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バイデン大統領は15日、ウクライナに対する136億ドルの緊急支援を盛り込んだ法案に署名して法律が成立。これにはウクライナへの兵器の供与、食料や医薬品などの人道支援、そしてウクライナの周辺国にアメリカ軍の部隊を派遣する費用などが盛り込まれている。ウクライナに対する軍事支援では無人機や対空ミサイルシステムなどを供与すると発表した。

16日、ゼレンスキー大統領はアメリカの連邦議会で、オンラインによる演説を行った。空爆が続くウクライナの惨状を伝え、飛行禁止区域と戦闘機を要請して、「バイデン大統領が世界のリーダーになってくれることを願う」と訴えた。

今回のウクライナ侵攻ではロシアへの非難は声高でも、アメリカの世論で好戦的な意見や派兵を唱える意見はあまり聞かない。

911の同時多発テロのあとでは、いっせいにアメリカが好戦的になって、家々の玄関にアメリカ国旗がはためいた時の様相とはかなり違う。

世論の多くは、ウクライナに軍事支援はしてもアメリカ軍を派兵しないバイデン政権の姿勢に賛同しており、野党の共和党でも派兵を主張していない。

nato summit on russia's invasion of ukraine
Pool//Getty Images
2022年3月24日にベルギー・ブリュッセルのNATO本部で開催されたNATO首脳会合での米大統領ジョー・バイデン氏と英首相ボリス・ジョンソン氏、フランス大統領エマニュエル・マクロン氏。

これはアフガニスタン侵攻やイラン侵攻が、後になってみれば本当に必要な戦争だったのかという疑問が生じたこと、そして、いったん介入すると戦火が長引き、泥沼化してしまうことがあり、アフガニスタンからアメリカ軍を撤廃する時に大混乱を生じたことは記憶にも新しい。

メトロポリタンオペラで
ウクライナ支援のコンサート

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Mami Cho
3月14日、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場(Metropolitan Opera)が「ウクライナのためのコンサート」の開催。コンサートはライブ・ストリーミング配信され、ロシアの侵略で多くの犠牲者を出しているウクライナへの連帯を全世界に発信。収益は救援活動に寄付される。

一方、民間でもウクライナに対する人道的支援は熱心で、3月14日にはメトロポリタンオペラでウクライナ支援コンサートが行われた。販売開始後すぐに売り切れたというプラチナチケットだ。

オペラハウスの外壁は、青と黄色のウクライナ国旗カラーに包まれて、舞台にもウクライナ国旗が掲げられた。

ウクライナ人バリトン歌手によるウクライナ国歌から始まり、歌劇「ナブッコ」で故郷を追われた者たちが歌う最も有名な合唱曲などが歌われ、ベートーベンの第九が歌われた。

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Mami Cho
このウクライナ支援コンサートでの指揮は、音楽監督ヤニック・ネゼ=セガン氏。70分間の演奏はウクライナ国歌で幕開け。ウクライナ人歌手ウラジスラフ・ブヤルスキー氏が独唱パートで、「敵は消えうせるだろう。陽光の中の露のように」と歌い上げた。続いてウクライナ人作曲家ワレンティン・シルベストロフ氏による小曲「プレイヤー・フォー・ザ・ウクライナ」も披露された。

実際にコンサートに行った趙 まみさんは、「聴衆の熱意がものすごく、演者との一体感があり、ことに第九は今まで聴いたうちで一番。感極まって、涙が止まりませんでした」と語る。「私の隣に座っていた親子3人もウクライナの方のようで、国歌斉唱のところでお父さんが泣いていました」

今回のウクライナ侵攻は、メトロポリタンオペラにも大きな影響をおよぼした。ロシア人のソプラノ歌手で、世界で最高峰の歌姫とされるアンナ・ネトレプコ氏が5月に出演予定だったが、今回のウクライナ侵攻について、プーチン大統領を支持しない声明を出さなかったので、出演が取りやめになったのだった。

これは劇場側にとっても、アンナ・ネトレプコ氏側にとっても痛手のある決断だが、アメリカではアーティストといえども、この戦争に対して加担する者は出演を断るという断固とした姿勢を見せている。

メットではアナ・ネトプレコ氏の代わりに、ウクライナ出身のソプラノ歌手がヒロインを務める予定だ。はたして芸術家は、政治によって除外されなくてはならないのか。

私自身はアンナ・ネトプレコ氏の大ファンであり、彼女が出演する舞台のチケットを半年前から買っていたので残念で仕方がない。だが一方で、ウクライナ人歌手の支援になるのであれば払い戻しは求めず、その公演を観に行くつもりだ。

SNSの時代になって、アーティストもアスリートも自分の意見を表面できる現代では、モラルや姿勢が問われやすくなったとはいえる。

もしアーティストやアスリートが海外を拠点にビジネスで成功しているなら、その自由やシステムを謳歌しながら、はたして同時にプーチン大統領を支持できるのか、ウクライナ侵攻を支持できるのかという踏み絵がある。

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Mami Cho
ウクライナ支援コンサートの会場は満席となり、ウクライナのキスリツァ国連大使も参加した。

アメリカではディズニー映画『ムーラン』が封切りになる前に、主演女優の中国系アメリカ人(中国出身だが、国籍をアメリカにしている)リウ・イーフェイ氏が、香港の民主派デモ隊に対する香港警察の立場を支持する中国版ツイッター(Weibo)に投稿したことで、「#BoycottMulan(ボイコット・ムーラン)」というハッシュタグが広まり、映画をボイコットする運動が起きた。

イーフェイ氏自身が民主主義政治のもとで自由を得ているのに、それを求める民主活動家たちを弾圧する立場を表明するのは卑怯だとみなされたのだ。今やSNSの発達で芸術家やアスリートや映画スターが政治とは係わらない、その世界の専門家であればよかった時代とは、あきらかに変わってきているのだ。

アジア系女性が125回も殴られる
ヘイト犯罪が発生

そして現在、ニューヨークで深刻な問題となっているのは、アジア系住民に対する暴力事件があとを断たないことだ。

今年1月には、アジア系女性のミッシェル・ゴーさんが42丁目の地下鉄プラットホームで、見知らぬ男からいきなり線路に突きとばされて死亡するという悲惨な事件が起きた。その後NYPDの警官たちが主要駅のホームに立つようになっている。

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しかしながら暴力事件はいっこうに収まらず、アジア系住民に対するヘイトクライムは、前年に比べて339%の増加を見せている。これはパンデミックの渦中では、アジア系住民に近づくのも避けていたのが、ようやくコロナ感染の恐怖が過ぎ去ったために、見当違いの怒りをぶつける犯人が増えたためだろう。

3月11日には、67歳のアジア系の女性が125回以上殴られるというヘイトクライムが発生した。女性がアパートの入り口で玄関の鍵を開けようとしていると、後ろのドアから入ってきた男が殴りかかり、125回以上殴って7回踏み付けた後につばを吐き捨てて立ち去ったという犯罪だ。女性は顔面を骨折したほか、脳出血を起こすなど重傷となっている。

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また、マンハッタン内で2時間の間に、7人ものアジア人女性に暴力を加えるという悪質な犯罪が起きた。犯人は28歳の男で、最初の暴力は午後6時半にミッドタウンの30丁目で、通りすがりの57歳の女性の顔面を殴ったことから始まり、そこからつぎつぎと通りすがりのアジア系女性を殴るという凶行におよんだ。

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女性や高齢者に対する暴力がめだつが、男性はターゲットにならないのかといえば、そうともいえない。

14丁目の地下鉄駅構内では、アジア人男性(29歳)がハンマーで頭部を殴られ負傷するという事件が起きた。被害者は容疑者と争いはなかったと述べていて、警察はヘイトクライムとして捜査している。

こうしたヘイトクライムの犯人たちは精神障害を持っていたり、過去に逮捕歴があって暴行や窃盗で捕まりながらもまた、すぐに釈放されてきたりするケースが多い。精神障害者や怒りの衝動を抑えられない人物たちを、収監できる施設やケアする要員が追いついていないことも問題の解決を難しくしている。

アジア系ヘイトに対する
抗議集会がタイムズスクエアで

そうしたアジア系住民に対するヘイトクライムに声をあげる集会「沈黙を破れ(Break The Silence)」「アジア系女性に正義を(Justice for Asian Women)」が3月16日にタイムズスクエアで行われた。

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Ellie Kurobe-Rozie
3月16日、タイムズスクエアに集まった人々。

これはアトランタのマッサージ店で、アジア系女性8人が銃殺されたという傷ましい事件から一周忌となる日に合わせて、全米の12都市で同時に行われた抗議集会となる。

ニューヨークではタイムズスクエアに約250人が集まり、「アジアン・アメリカン・フェデレーション(Asian American Federation)」のジョー・アン・ユー(Jo-Ann Yoo)氏らが演台にのぼった。

アジア系の中でも女性は74%が差別を経験していて、12%は肉体的な暴力も受けたという。実際、私自身もアジア系差別の言葉をぶつけられたことがあるし、間違いなくアジア系女性たちは地下鉄のプラットホームでは端に立たないようにしているし、車掌が近い車両を選んでいる。

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ベストセラー小説「パチンコ(PACHINKO)」の著書ミン・ジン・リー(Min Jin Lee)氏は大学教授でもあり、事前にツイッターでアジア系女性たちの生活にどういう変化があったのかを尋ねたところ、多くの女性たちがヘイトクライムを恐れていて、

「出勤において不便でも安全なルートに変えた」

「帽子やサングラスでアジア系とわからないようにした」

「地下鉄を使わずにウーバーで移動するようになった」

「セルフディフェンスのクラスを取った」

「ペッパースプレーを買った」

といった回答があったという。

リー氏自身も口紅型のペッパースプレーをもらったものの、「私自身は(デモで)催涙スピレーをかけられた経験があって、それがどれだけ痛いかわかっているので、とても他人に対して使えない」と逡巡(しゅんじゅん=しりごみするしてしまうこと)したと言う。

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Ellie Kurobe-Rozie
3月16日、タイムズスクエアで行われた「アジア系女性に正義を(Justice for Asian Women)」に登壇したニューヨークのベストセラー作家ミン・ジン・リー氏。

そしてヘイトの被害者たちは、「なぜ私が憎まれるの、私があなたに何をしたというのと自問する。けれども憎まれるのは自分たちのせいではない、憎む方が恥ずべきことなのです」と、涙ながらに語りかけた。

ヘイトクライムは
性的ハラスメントと似ている

こうしたアジア系に対するヘイトクライムについて、日本のニュースサイトでのコメント欄で、「憎まれているのは中国人なのだから、自分は日本人であるといえばいいではないか」という意見を読んで、愕然としたことがある。

いったい自分が背後からいきなり殴られたり、ナイフで切りつけられたりしている時に、どう言い訳することができ、ましてや相手が説得されて暴力行為を止めるというのか? 話を聞いて暴力を止めるような相手なら、最初から見知らぬ人間に暴力をふるったりしないものだ。

また、「自分は日本人だから憎まれる理由がない」と考えるのは、まったく見当違いであって、アメリカ人にしてみればアジア系はすべて一緒に見える。それどころか東南アジア系やハワイ諸島系、あるいはインドやパキンスタンの人たちもアジア系とひとまとめにされてヘイトを受けているのだ。

増え続けるヘイトクライムを取り締まる特別チームも、NY市警には設置されている。それなのに、なぜ取り締まれないのか? 今回の集会で実際に、ヘイトクライムに遭った被害者たちの声を聞いて腑に落ちた。

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Ellie Kurobe-Rozie
3月16日のタイムズスクエアでの様子。

被害にあったエスター・リー(Esther Lee)氏のケースでは、こうだ。

地下鉄に乗ったときに空いている席に座ると、隣の男がフィストバンプ(拳をつきあわせる挨拶)をしようとする動作をしてみせた。それを断って立ちあがると、相手もついてきて「ふざけるな、誰がおまえなんかに触りたいものか」「ファッキン・キャリアー」(くそバイキン)と罵られ、ツバを吐きかけられる嫌がらせを受けたという。この「キャリアー」というのがウイルスの保持者であるという意味であるのは、明らかだ。

ところが警察に被害を届け出たときに、「アジアという単語が入っていないので、人種ヘイトクライムとは決めつけられない」と言われたというのだ。

さらに、警察で確認されたという質問が衝撃的だ。

「相手があなたのところに座ったのではなく、あなたが相手の隣に座ったんですよね?」

「相手は拳を打ちつけて、フレンドリーな挨拶をしたかったのかもしれないのに、あなたが過剰な反応を見せたのでは?」

「あなたが携帯で撮ろうとしたことが、相手を煽ったのでは?」

これではまるで、相手に非があるのではなくて、被害者にも非があるかのような質問の仕方だ。私自身が感じたのは、性的ハラスメント被害者に対するのと似ていることだ。性的ハラスメントの被害者はしばしば逆に非難や質問を受けることが多く、こんなふうに言われがちだ。

「あなたが挑発する恰好をしていたのでは?」

「彼があなたの家に侵入したのではなくて、あなたが彼についていったんですよね?」

「相手が冗談でいったことを過剰に反応しすぎでは?」

「あなたに隙があったのでは?」

ちょうど性的ハラスメントのように、「われわれがアジア系であること」自体が暴力を誘発していると認識されているのでは? とんでもない。

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Ellie Kurobe-Rozie
3月16日のタイムズスクエアでの様子。

犯罪は犯したほうが絶対的にいけない。被害者たちはすでに充分気をつけていても、ほんの一瞬の隙を見つけられて、殴られたり、殴られたり、突きとばされたりしているのが現実なのだ。

「警察官のバイヤストレーニング(人種偏見をもって考えないトレーニングのこと)が必要なのです」と、エスタ−・リーさんは強調する。

そして具体的に、ヘイトクライムを減らして行く方法として、複数のスピーカーから出た意見が、

「黙っていないで、警察に届け出ること」

「アジア系の議員を増やすこと」

「政治家が地域住民と話す集会であるタウンホール対話集会を持つこと」

「地域の議員にヘイト被害についてのメールを出すこと」

「高齢者たちを守ること」

といった方法だ。

「自分のストーリーをSNSで語ること」も大切だという。実際にTikTokでバイラルとなって、ヘイトクライムとして認識されるようになったケースもあり、スマホを向けることで相手がそれ以上の脅しを止めたケースもあったという。

主催者のひとりであるフランクリン・シェン(Flanklin Shen)氏は、「全米のアジア系が団結したのは初めてであり、快挙だと思います」と語る。

「今回はスピーカーが女性中心であり、実際の被害者たちにストーリーを語ってもらっているのが特徴です。ヘイトクライムはヘイトクライムとして認定されにくいですが、それを変えていくため、あなたのストーリーを語って欲しいと、実際の被害者に話してもらいました」

初の日本人スピーカー

また今回の集会では、日本人が初めて登壇したのも画期的だ。

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写真提供:辻村正幸
同じく、タイムズスクエアで登壇した宮嶋みぎわ氏。

こうした反ヘイト集会では、中国系や韓国系住民がスピーチすることが多く、今までもブラック・ライブス・マター(Black Lives Matter)の運動家がスピーチすることはあっても日本人が登壇する場面は見たことがなかった。

今回、初の日本人として登壇したのは、ビッグバンドジャズの作曲家で指揮者である宮嶋みぎわ氏だ。この日のために書き下ろした新曲「ハーモニー」を、和太鼓やバイオリン、サックス、トランペットなどをプロの音楽家たちが演奏して、その場にいる会衆たちが合唱した。

宮嶋氏は今回参加した意図について、こう語る。

「全米で起きているヘイトクライムに、私ができることなんてなにもない、と思ってしまっていたのですが、そういう考え方をしているから世の中が変わらないんじゃないかと自分に対して思ったのです。世の中を変えたいなら、まずは自分が行動して、その姿を見せなければと思いました。みんなに勇気を出して行動してほしい、行動して初めて、その先に何かが見えてくる、ということを伝えたいです」

また日本人として初登壇したことについて、

「ふだん国ごとに分かれてしまっていて、アジア人同士で助け合うチャンスがなかったから、こうしてアジア人が一致して助け合えることがうれしいし、日本人として手伝えたことが光栄です」

と答えてくれた。

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写真提供:辻村正幸
登壇したキャサリン・ホークル知事。

アジア系に対するヘイトクライムが減らなければ、ニューヨーク市の観光やビジネスにも大きなマイナスとなる。集会には、NY州のトップに立つキャサリン・ホークル(Kathleen Courtney Hochul)知事が登壇して、

「2000万人のニューヨーク州民にヘイトクライムはあってはならない。ニューヨークはレイシズムを許さない」

と力強く発言した。

反ヘイトにニューヨーク州の予算を割くと約束して、さらに取締を強化していく一存だ。あらゆるレイシズムのないニューヨークをつくっていくことこそ、課題だ。


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写真提供:黒部エリ

黒部エリ
Ellie Kurobe-Rozie

東京都出身。早稲田大学第一文学部卒業後、ライターとして活動開始。『Hot-Dog-Express』で「アッシー」などの流行語ブームをつくり、講談社X文庫では青山えりか名義でジュニア小説を30冊上梓。94年にNYに移住、日本の女性誌やサイトでNY情報を発信し続けている。著書に『生にゅー! 生で伝えるニューヨーク通信』など。