僕は写真を撮られるのが仕事で、17歳のころからカメラってずっと身近にあったんですよね。モデルを始めたころの当時は、完全にフィルムカメラでしたけど、ちょうど10年くらい前からデジタル化が進んで今に至っておりまして、フィルムだろうがデジタルだろうが写真というものはその時間を写すということ自体は同じわけで、過去の自分なんかを今見返すとなんとも恥ずかしい気持ちになりながらも、写真撮っておいて良かったなって思うことが増えてきたわけです。

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 2年ほど前に、女性誌の現場だったと思うのですが…。ライカ「M9」を使ってるフォトグラファーさんとご一緒いたしまして、普段、機材に関して質問などその類の話はあまりしないのですが、なんとも言えないオーラを放つカメラを目にし、つい質問してしまいました。そうしたら…ライカの表現する色の良さからレンズの素晴らしさ、もし買うならコレとかアレもいいとか、もうわんさかたくさん教えて下さいまして…。すっかりその日から、ライカというものが頭の片隅から消えなくなってしまっていたのです。

 そのとき「ハッ」となったのが、「もしや自分は、カメラをやってみたかったのではないか?」という思いが頭をよぎったんです。ただね、僕みたいな「コンサバ系モデル男子がカメラ好きっす」って言うのなんか恥ずいじゃないですか…。

 「俺、意識高いっす、アーティスティックっす」って言ってるみたいで、なんか恥ずかしいじゃないですか。そんなわけで、ものすごく始めることに抵抗がありまして、一瞬垣間見えたカメラ熱が、モヤモヤーっと消えつつあったんです。

 ちなみに僕は趣味という趣味ってあまり持っておらず、意識高い系のスポーツや意識高い系の習い事等に至っては、とてもとても遠い暮らしをしておりまして…(笑)。そのとき、僕まもなく39歳になろうとしていた38歳。そして程なくして、39歳になりまして、「あ~もう来年40かー」っなんて思っていた訳です。

 人はギリギリになると悪あがきと言いますか、何かやってやろうって思うものらしく、僕も「40までになにかやろかな~」などと、ぼんやり考え出しまして、それから数ヶ月が経ったころ、「あ!」となったのです。

 「40を言いわけに、カメラ始めちゃおうかな」と。

 それを言いわけにすれば、なんとなく恥ずかしくないような気がしたんですよね(何故か笑)。そう思ったら、もう欲しくて仕方ないわけです。あのとき教えてもらった携帯のメモを見直して、レンズやらボディーやらめちゃ調べ出しまして、現場行けば仲良いフォトグラファーさんに「何がいいと思う?」などと話し始めたりしまして、まだ決めてないくせにライカショップ行って知ってる顔して、「フンフン」言いながらカメラ触らせてもらったりして、それはもう決めるまでの日々は楽しかったわけです。

 そこで僕がようやく決めたのがコイツ、「LEICA M-P / SUMMILUX-M 35mm」でして…。

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Takashi Sakurai

 フォトグラファーのみんなが口を揃えて言っていたのが、「とにかく明るいレンズ買え」だったのもありまして、レンズは「ズミルックス」は外せなかったのです(その分お値段張りますけどね汗)。ボディーの「M-P」は、オールブラックのボディーに白文字という潔さと、あと何でもそうなんですけど、プロ仕様ってのが素人には響くわけで、このPってプロ仕様の意味なんです…ってあとこれね、動画も撮れちゃうんです。

 あるフォトグラファーM田さんがね、良いこと言ったんですよ。

 「新品のレンズで1枚目に、何撮るかじゃね?」

 もうね、話してるロケバスで、ハート撃ち抜かれましたよね。普段いつも、いっつもふざけてるM田さんなんですけど、なんていいこと言うんだって。もうその日から、尊敬の眼差しなんですけどね(うそです、昔から尊敬してます)。

 そこで色々悩んだ挙句、最初に撮った1枚目がこの自分が表紙のメンクラ2019年5月号なんです。

櫻井貴史, メンズクラブ, 画報
Takashi Sakurai
2019年3月25日発売の『メンズクラブ』5月号の表紙。表紙モデルは真ん中に僕、そして右にゾイ兄さん、左にナベタケくんです。

 丁度カメラを購入して、最初のロケの日に今月号が上がってきたタイミングだったというのもありまして、写真としてはなんの変哲もないファッション誌を外で撮っただけの写真なんですけど、「自分でシャッターを押して撮るってこういうことなのか」って思いました。

 1枚目のシャッターを押す緊張感とか嬉しさとか、それと自分の表紙を撮るというなんとも言えない特別感…そのとき湖畔に居たのですが、そこの少しひんやりしていた空気の感じとか、ファインダーを覗いてるときの目に当たる感覚とか、そのときの全身で感じていた感覚を、今見てもフワッと思い出すんですよね。そんなことも含めて、写真の良さ、素晴らしさかなとこの瞬間を捉えるだけでなくて、そのときの気持ちとか状況とか、さらにそれが特別な1枚であればあるほど強烈に思い出させてくれるんですよね。

 とは言え、まだ自分の中で「俺、意識高いっす」系の恥ずかしさは若干拭えてないんですが、「僕はなんていい趣味を手に入れたんだろう」と思うんです。40歳になれて良かったことの一つなのです。それと引き換えに、目ん玉飛び出るくらいのお値段でしたけどね(笑)

櫻井貴史, メンズクラブ, 画報
Takashi Sakurai
ボディーは「LEICA M-P」、レンズは「SUMMILUX-M 35mm」です。

…いまのところ、つづく(笑)!