街角でたやすく出会うであろう…今どきのミレニアル世代の女の子と何ら変わりない可憐さを持ちながらも、ひとたび、そのスタリッシュとも言えるディープでスモーキーな歌声を聴けば、誰もが心掴まれる…。そんなアーティスト、iriさん。

 そうして編集担当Oも2017年3月に、ある音楽ストリーミングサービスでリリースされたばかりの『Watashi』に偶然出会い、以来、虜となって現在に至っているわけです…。

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iri - Watashi (Music Video)
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 皆さんもこの曲を聴いていただけば、すでにファンになってしまった者たちの思いが理解できることでしょう。彼女は年齢など超越して、まさに「弾けて砕くYour Power」を感じさせてくれるのです。

 その奥深くスモーキーな歌声とともに、複雑とも言えるミックスされたリズム&メロディで紡がれた彼女ならではの人生観…そこには、極めて特別な存在感を放つ音楽として流れてくるでしょう。もはや素通りできないくらいの…。

 そんな彼女が2020年1月22日(水)、待望のニューシングル『24-25』をリリースし、再び底知れぬ才能と音楽性を我々に示してくれました。そこで、このタイミングで彼女の音楽性の原点、さらには音楽を通して何を伝えていきたいのか? リリースされたばかりの新作を起点に話をうかがいました。

 そしてその場には、自らiriのファンであると主張し、インタビュー同席を願ってきたモデル櫻井貴史さんとともに…。

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Yohei Fujii

編集部:iriさんの楽曲には、現代を生きる女性たちへのメッセージがふんだんに込められているようにも思えるのですが、そこにメッセージを込めているのですか?

iriさん:いえいえ、実際は「メッセージを伝えたい」なんていう大それた思いはありませんね(笑)。それよりも、「自分が思ったことを書いて歌う」そんな感じです。そんな私の気持ちをリスナーさんに共有して、あとは皆さんが自由に受けとめていただければ…と思っていつもつくっています。  

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櫻井さん:「女性たちの応援ソング」というような、余計なお世話はしていませんよね。それは僕も感じています。iriさんの歌詞は常に、自分の思いを洒落た言葉でライム(韻)を踏んで綴られていますよね。その言葉のセレクトが繊細かつ今どきでたまりません。

「わたし、こんなこと考えているの…」という事例を投げっぱなしのところが僕は好きで、逆に「自分はどうなんだ?」って考えさせられます。

編集部:たまに友人に、日々のことを相談することもじゃないですか? でも実は、そんなときって答えとか、「次なる行動はどうすべき?」などという正解を求めているわけじゃない…。簡単に言えば、単に聞いて優しく受け止めてほしいという甘えがあるじゃないですか。

それに的確に答えてくれている感じが、iriさんの歌にはあると思っているんです。「あなたはそれで悩んでいるけど、わたしだってこんな悩みがあるのよ…」と、いい意味で話をすり替えてくれて、そこにある相手の苛立ちを拡散してくれるようなパワーを持っているような気がするんです。ときに、iriさん「おれ以上に悩んでいるじゃん」みたいに…。iriさんは生きている中で、常に悩みっぱなしなんですか(笑)?

iriさん:はい、悩みっぱなしですね(笑)。それはいつまでも続く感じですね…。基本的には、それを歌にしています。私が曲をつくり始めたときというのは、例えば何かうまくいかなかったことがあったり、自分ですごく悩んでいることがあったり、コンプレックスがあったり、恋愛で失恋したとか…。

まだ20代で人生を語るのは何ですが、生きていれば年齢に関係なく、さまざまな壁にぶち当たると思うんです。その壁にぶち当たったときのさまざまな葛藤、その行き場のない感情を歌詞にして歌うことで、自分の気持ちをリフレッシュしていたと言っていいですね。

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そして、そんな私の思いをメロディに載せて、作品として皆さんに聴いていただくことができるってすごく素敵なことだって思い、この仕事をさせていただいているという感覚ですね。

 

櫻井さん:ミュージシャンになって売れたい」という気持ちではなく、単に思いを聴いてほしい…というのがプロになったきっかけなのですか?

iriさん:前々からシンガーとか、シンガーソングライターとかに憧れがあって、「歌う仕事がしたいなぁ」って想いはずっとありました。私自身の好みとしてはディーバ的な…それこそビヨンセさんのような歌い上げる系の方や、ゴスペルとかソウルフルな歌を歌うシンガーさんとかにすごく憧れていて、そういった方の真似したりして歌っていました。

でも、いざ音楽を仕事にしたいと思ったときに、単なるシンガーではなくてシンガーソングライターとして自分で歌詞も書いてメロディをつくって…といった風に、「可能な限り自分の思いを載せた曲を歌っていきたいなぁ」と思いようになってきたのです。すると、それがすごく自分にしっくりきたときがあって、以来、そこからシンガーソングライターとして自分の現在の感情みたいなものを、ストレートに歌詞と曲に乗せて表現できるようになれました。

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編集部:個人的には、詞もかなり心掴まれています。自分は女性でも、その年代でもないのですが…むしろ、その子たちの父親レベルと言っていいでしょう(笑)。ですが、その年代の女性の心を具体的につかんでいるなぁって、勝手に感心しています。

でも、リスナーとの間には絶妙な距離感も存在している…。ウェットになりすぎないギリギリのところで、ある種センチメンタルでいながらポジティブな内容といった印象です。楽曲をつくるときって、どんなことからインスピレーションを受けることが多いのですか?

iriさん:普段、曲をつくるときは、テーマなど決めずにつくることが好きですね。自由につくっていきます。歌詞を書き留めておいて記録されたノートから拾うことなどもしません。そのときに感じたことをつづっていくような。なので、歌詞の内容は実体験で感じていることがほとんどですね。

基本的には自分の実体験とかで、見てきた状況やそこで考え、さらにその状況を持ち帰って考え直した思いなどから、インスピレーションを得ていることが多いですね。

櫻井さん:僕の場合、歌詞はもちろん心に染みてくるのですが、それ以上に、その歌詞を載せているメロディにやられちゃっている感じです。すごくモダンと言いますか、ひと筋縄ではいかないメロディラインがたまらないんです。

ときにラップであり、ときにソウルフルなメロディラインのバリエーションがすごくモダンな感じがして…。「これはもはや、時代の最先端のメロディでは?」って思っていいます。ちなみにその音楽性って、どのように生まれたんですか?

iriさん:小学生や中学生のころにMTVをよく観るようになって、そこに出てくるアーティストたちがビヨンセさんやアリシア・キーズさんでした。それで彼女たちが歌っているのを観て、すごく憧れるようになりました。特にアリシア・キーズの「If I Ain’t Got You」のライブ映像を見たときには、涙が出るほど感動しましたね。

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このように、最初はブラックミュージックのシンガーさんが入り口にいたのですが、別にジャンルにとらわれず聞くようになって…自分の波長にあった音楽は、すべて聴いていました。邦楽もAIさんや久保田利伸さんが好きで、よく聞いていました。それは中学生・高校生時代で、それが私の音楽のベースにあると言っていいかもしれません。

そこからさらに広がって、邦楽のラッパーなどを聴くようになって日本のヒップホップシーンにも惹かれるようになりました。でも、そこのベースには、レイドバックした感じの、急がずくつろいだ…リラックスした感じの歌い方をするシンガーとかアーティストが好きでしたね。
 

編集部:なるほど、なんかiriさんの根底に宿るものが見えてきたような気がします。歌い上げとライムが混ざったような感覚でしょうか?

iriさん:そうですね。いろいろな音楽がミックスさせた感じになっています。


櫻井さん:でも、AIさんや久保田利伸さんというと、少し世代が違うような気もするのですが?

iriさん:いやそんなこともないですよ、AIさんは2005年に、『STORY』を出したときにその曲と一緒に大好きになって…。久保田利伸さんのほうは、両親が聞いていたからですね。

両親は全く音楽関係の人ではなく、音楽も詳しいわけではありません。でも母親は音楽好きで…。特にボサノバやジャズなどが好きで、一緒に聞いていましたね。家にはいつも音楽が流れていました。母親がかけていたので、休日は毎回ボサノバからスタートするような…(笑)。

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櫻井さん:では、とても素朴な質問で恐縮なのですが…。そもそも音楽の仕事をやりたいと思ったきっかけはなんだったのですか?

iriさん:シンプルに言えば、「自分が音楽にすごく助けられていた」からです。自分が学生のときに嫌なことがあったときなど、側に音楽があって、音楽聴いているときは自分一人の世界で癒される感覚を持ちました。すごくホッとしたりとか、力強くなったりとか…という経験をしてきたんです。

一方で、「誰かの力になれる仕事をしたい」という思いが小さい頃からありましたので…。小学生のころ、学校にいるスクールカウンセラーの先生にすごく支えられたこともあったので、自分も「カウンセリングの仕事がしたいな」と思っていた時期もありました。そんな風に、自分も誰かを支える手助けになれたら…って考えたとき、「これを自分でつくった音楽ですることもできる」って思いつき、つくっていくうちにプロになっていた…という感じでしょうか(笑)。

櫻井さん:でも、実際に歌うとなると、度胸が必要じゃないですか⁉ そこを一歩踏み出した時のことを覚えていますか?

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iriさん:中学校のころから、音楽を仕事にできたらと思っていたのですが、それなら、基礎から音楽を勉強しなければいけないと思って、高校生になってからは部活の代わりにボイストレーニングに通い始めました。

ゴスペルを学んでいた先生に、歌を基礎から教えていただいたりもしました。それと同時に、友だちにギターも教えてもらってもいましたね。そうしているうちに、逗子のカフェとかで少しずつ歌い始めて…という流れになります。

編集部:なるほど~、これでiriさんのバックボーンが少しかもしれませんが、知ることができたので、これからますますiriさんの楽曲に浸れます。ありがとうございます!

1月22日にニューシングル『24-25』がリリースされるのが待ち遠しいですね。では、絶好のタイミングなので、そこに込めた思いをお聞かせください。

iriさん:それほど大それたものではありませんので…(笑)。タイトルは私の年齢になります。2020年に私は26歳になるので、「自分の音楽性など、自分自身のさまざまな面と向き合わなければならないな」という思いを書き留めて歌にしています。

自分にとっては前年である2019年、24歳の私としては、25歳を目の前に年を取っていく不安・怖さみたいなものがあって、周り友だちも結婚したり子どもできたり…など。そんなプライベートなことばかりでなく、私自身の音楽に関しても「何が自分らしいのか?」など色々悩む年だったんです。

そういう意味で、24歳から25歳へと時間が過ぎていく間に感じてきたさまざまな葛藤に向き合って吐き出したあと、それをすべて塗り替える年にする…という節目の年における決意表明的な面も持っていますね。

編集部:25歳になった昨年、2019年ってiriさんにとってどんな年でしたか? リスナーの私にとっては「とうとう完全メジャーになった!」と喜ぶ半面、お気に入りのレストランが予約取らなければ入れなくなってしまったような、悔しさもあるのですが(笑)。

iriさん:いえいえ、そんなにメジャーでもないですよ…。でも、ライブでもお客さんの数がだいぶ増えてきたことは実感しています。そこでファンの方から求められていることに、変にプレッシャーを感じてしまう年でもありましたね。

「iriさんっておしゃれで、メッセージ性があって、新しいサウンドをやっていて、カッコいいですよね」って言われたりするのですが、自分の中では別にカッコいい曲をつくろうとか、最先端のサウンドをいち早く発信します…とかっていう思いは全くなくて…。

そんなギャップの中で、果たして今後自分はどんなジャンルがやっていったらいいのか? 例えば、昔から聴いているジャズへ方向転換してもいいのかな…とか、やっぱりブラックミュージックをベースに音楽をつくっていくほうが自分はしっくりくるとか思ったり…。でも、バンドサウンドがいいんじゃないか?などなど、悩んだ年でもありました。

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ライブも、「もうちょっとセッション感のあるライブをしたほうがいいんじゃないか?」とかって、2019年はライブをするたびにいろいろ悩んできました。次どうしよう? 2020年はどうしよう?という風に悩んだ年が2019年です(笑)。

櫻井さん:ニューシングルの話に戻るのですが…。ターゲットはないと仰ってましたが、こんな心境で聞いてほしいな…というのはありますか?

iriさん:そうですね。サビの部分で「ずっとズレてきた24-25」と歌っているんですね。もちろん、これは私自身のことで、流行りものとかも好きじゃないし、みんなの輪に入ってワイワイするのもあんまり好きでない自分のことを言っています。割と一人でいることが好きで、そうすると「人とズレているなぁ」って思ったりするじゃないですか…。

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でも、そういうズレっていうのは、当たり前のことなんだと自分に納得している歌でもあります。それが個性であって、人はそれぞれ違っているものというストーリーです。なので、自分がみんなとズレていることに対して、コンプレックスを持ったり不安に思ったりしている方にこの曲を聴いていただいて、そのズレというのが自分の輝きのひとつであることを認識できるチャンスになればいいなって思っています。

こんどはそれを武器として何かにチャレンジしたり、前に進んでいったりしてほしいなぁって思います。そのズレはそのまま埋まることなくずっと続いていくと思うので…。その隙間を自分の手で、自分色に染めていくしかないかなって思っています。そんな私の気持ちに共感を抱いていただければ幸いです…。

でも、まったく別の理解でもぜんぜん構いませんので…(笑)。できる限り多くの人に、私の歌が届けられればとってもうれしいです。


最新作『24-25』にご注目を!

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シンガーソングライター
iriさん

神奈川県逗子市在住。自宅にあった母のアコースティックギターを独学で学び、アルバイト先の老舗JAZZ BARで弾き語りのライブ活動を始める。2014年に雑誌『NYLON JAPAN』と「Sony Music」が開催したオーディション「JAM」でグランプリを獲得し、時代の息吹を感じさせるHIP HOPテイストのリリックとソウルフルでスモーキーな肉声で、ボーダーレスに2020年代を代表するとも言える音楽を展開。2016年10月、ビクター・カラフルレコーズよりアルバム『Groove it』を発売しデビュー。2017年3月には、Nike Women「わたしに驚け」キャンペーンソングとなったシングル「Watashi」をリリース。続く11月、EP「life ep」をリリースし、再びiTunes Storeのヒップホップ/ラップチャートで1位を獲得。今年2月、2ndアルバム「Juice」をリリースし、またもや同チャート1位、Apple Musicのアルバムランキングでは最高位2位を記録するなど注目を集める。この他、ChloeやVALENTINOのパーティーにてパフォーマンスを披露するなど、ファッション界からも注目されている新進気鋭の女性アーティスト。2020年1月22日(水)、ニューシングル『24-25』をリリース。2020年4月20日(日)~6月7日(日)まで、東京・新木場STUDIO COASTを含むiri Spring Tour 2020を開催。

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