昔から…と言いますか小学生のころからなのですが、アメリカの往年の大スター、フランク・シナトラの歌声がとてもとても好きでして、何故かしらとっても懐かしくて心地よく、もしや自分の前世はアメリカ人だったのではないかなぁなどとまで考えておりました(わりと本気で笑)。

 確か小学4年生のころ、街のCD屋さんで出合ったアルバムが、オムニバスでクリスマスソングが入っている『White Christmas - 24 Famous Christmas Songs(ホワイトクリスマス)』というCD。その中にフランク・シナトラの歌が入っていたんです。

 当時、なんでまた小4の僕がクリスマスのCDを買ったのかと言いますと、今思えばなかなかのおマセさんだったのかなと思うのですが、当時TVで流れてたJRのシンデレラエクスプレスというCMで、山下達郎さんのクリスマスイヴの曲がかかり、胸をときめかせながら彼氏を待つ健気な牧瀬里穂さんを見て、胸がキュッとなり『俺にはクリスマスなのに恋人がいない』と、こたつでひとりみかんを食べながら、スポーツ刈りでほぺたの赤い小4の貴史少年がおりまして、そんなマセた都会でのクリスマスへの憧れを強くいだく中、田舎の街のCDショップで出合ったこのCDは、少しでもあの理想のクリスマスにより近づけるかも知れないと、なけなしの小遣いを叩き手に入れたのがこの『ホワイトクリスマス』だったのです。

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Takashi Sakurai
シナトラの『ホワイトクリスマス』Spotifyで聴く

 当時、浅はかにもアメリカ人が前世かも知れないと思う僕には、このびしびしアメリカを感じる(あのころ英語は、大体なんでもかんでもアメリカだと思ってたので…)シャンシャン鳴るクリスマスソングが鳴れば鳴るほど憧れは膨らみ、その中でも「この人の声ええわー」となっていたのが、フランク・シナトラだったのです。

 豊かなアメリカを象徴せんばかりの煌(きら)びやかな世界観、そして、なんとも言えない艶のある美しい低音のセクシーな歌声に小学生が日夜酔いしれておりました。

 中学生になりますと、『行け! 稲中卓球部』(古谷 実作/週刊ヤングマガジン1993年14号~1996年47号まで連載)という、電車内などで読んだら爆笑してしまうので絶対読んではいけないと噂された最強のギャグ漫画が流行りまして、そのお話の中で医者に扮した主人公の前野くんが、悪さをしようと適当に病名を「フランク・シナトラ病です」と言い放つ言うシーンがあるんですけど、とうとう俺のシナトラも稲中に出てくるようになったかと、当時同級生でシナトラを知る者はひとりもおらず(と思ってました)、意味もわからず謎の優越感に嬉しくなったりしたものでした。

 実を言いますと、飛行機という乗り物がちょっとだけ苦手なのですが、搭乗時なんかは怖さを紛らわすために、飛び立つ前からずっとシナトラが僕の耳元で『Fly Me to the Moon(フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン)』あたりを優しく歌ってくれている訳なんですよね。

 もちろん、2019年の『メンクラ』ニューヨークロケなんかでは、部屋で『New York, New York(ニューヨーク・ニューヨーク)』を無限ループで聴いており、僕の生活には切っては切れないシナトラ兄やんになっております。大人になって気がつけば、至る所にシナトラが居ることに気がついた昨今。彼の偉大さを今でも日々発見し、今もなお僕の心を癒し続けてくれているシナトラ。あの日、ほっぺたの赤い少年の心を鷲掴みにして、いまだ41歳の僕の心を掴んで離さないフランク・シナトラ…あの日から僕は、『フランク・シナトラ病』のままなのです(笑)。

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提供:櫻井貴史
この写真はおそらく七五三のときに、自宅の和室で並んで撮らされた…という記憶です。お参りから帰ってきて、服を脱ぐ前に撮りたかったんでしょうね…。そしてこのおよそ4、5年後に、シナトラと出会うことになるわけです。

…つづく!