Netflixが、過酷なサバイバルゲームを描く韓国ドラマ『イカゲーム』の配信を9月に開始して以来、その視聴回数は多くの国で最多記録を更新しています。そして、その影響力の広がりはとどまるところを知らず、私たちのワードローブにまで及び始めているもようです。

スニーカー関連の情報を提供しているイギリスのECサイト、ソール・サプライヤー(Sole Supplier)によると、「ヴァンズ」の白のスリッポンの売上高は、このドラマの配信が開始されて以降、およそ7800%も増加しているそう。

イカゲーム ヴァンズ vans スリッポン
Vans//Netflix
『イカゲーム』で主人公ソン・ギフンを演じるイ・ジョンジェと、「ヴァンズ」の「クラシック スリッポン」

もちろん、ハロウィンが間近ということも理由のひとつでしょう。ですが、8000%近い増加となれば、それらのスニーカーがすべて、たった一晩のパーティのためだけに買われたものとは考えにくいとも言えます。多くの人が、このシューズを気に入り、よく似た「ヴァンズ」のスリッポンを購入しているに違いないのです。

「ヴァンズ」はこれまでも、若者文化とは切り離すことができない関係を享受してきました。1966年にカリフォルニア州で創業されたこのブランドは、当初は厚底のデッキシューズを製作していました。

70年代半ば以降は、人気が高まり始めたスケートボード用のシューズを手がけるようになり、その後もカウンターカルチャーのレーベルとして、高い存在感を維持してきました。それから数十年がたった現在も、ティーンを中心に幅広い年代に愛用されています。

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Netflix

「ヴァンズ」のように、“幼稚園から墓場まで”愛用されるブランドのリストは、ここ数年ますます長くなってきています。メンズウェアは“コード化された”ようなテーラリングからは距離を置き、ますますカジュアル化が進んでいます。

子どもの頃に男子が身に着けていたショートパンツ(代表ブランド:「プラダ」)や白いジムソックス(スケートカルチャー)、通学用バックパック(「フェールラーベン」)、恐竜のプリントTシャツ(「コーチ」)、テディベアのプリントトレーナー(「ポロ ラルフ ローレン」)なども同様です。オーバーオール(「ディッキーズ」や「カーハートWIP」、「ビームス プラス」)にさえ、カムバックの兆しが見え始めています。

こうしたブランドには、本質的な若々しさと、私たちに心地よさを与えてくれる何かがあります。そして、「こうあるべき」とされてきた息苦しい装いから解放されて以来、スタイルは間違いなく広がり続けてきました。私たちには今、より多くの選択肢、そしてより多くの自由が与えられているのです。

ただしこうした変化は、コロナ禍で(仕事や家を奪い、両親のもとに戻らざるを得ない状況を生み出し)男性たちの“子ども返り”が起きるよりもずっと以前から、見え始めていました。

おそらく、かつてないほど先行きの不確実性が高まった世界で、私たちは自分の気分に合う、より快適な装いを望むようになっているのでしょう。

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Netflix

『イカゲーム』の登場人物たちは、オランダの画家エッシャーの絵を再現したような悪夢の世界で、本当の私たち――浮かび上がった疑念により光を失った未来に恐怖心を抱く、大きくなり過ぎた子どもたち――を表す衣装を着用しています。それは、生死をかけたゲームに参加しなくとも、感じ取ることができます。

実際のところ、イカゲームは単なるゲームにすぎません。スキルや強さ、知性には何の価値もなく、単なる“運”が勝敗を左右します。そして、イ・ジョンジェ扮する主人公ソン・ギフンは、スリッポンを脱ぎ、裸足で飛び出していきます。

そこにセーフティネットはなく、幼い頃に履いていた運動靴も、彼を包み込んでくれる“ライナスの毛布”もありません。

現実の大人の世界でも『イカゲーム』の世界でも、 次の踏み石が未知の世界への第一歩で、その先自分の立場が保たれる保証はまったくないという瞬間が、必ず訪れます――。

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
『イカゲーム』舞台裏映像 - Netflix
『イカゲーム』舞台裏映像 - Netflix thumnail
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Source / ESQUIRE UK