欲求に素直に従った結果
見えてきた新たな道

いまやテレビCMで彼を見ない日はないでしょう。しかし、意外にも地上波の映像作品で、賀来賢人さんはここしばらく出演していません。

「気づけば、ネット配信の作品ばかりに出演しています。決めているわけではないのですが、やはりネット配信の場合は世界に向けた作品に出演する機会が多い。その可能性に魅力を感じている役者は、今増えていると思います」

2022年に前事務所から独立した賀来さん。この数年、英語学習に力を入れてきたのも、世界進出を見据えてのことだとか。

「せっかくなら面白いことをやりたい、本当に自分がやりたいと思えることをしたい。それが独立した理由。日本国内の市場だけをターゲットにすると、どうしても二番煎じなアプローチが多くなってしまうんですよね。でも作品づくりに携わる者としては、やはり内容ファーストであってほしい。そのためには、俳優として関わるだけでは不十分だと感じていました」

その覚悟は、2024年2月15日(木)に世界配信されたNetflixシリーズ「忍びの家 House of Ninjas」で示されました。

賀来賢人
CEDRIC DIRADOURIAN
ジャケット7万4800円、ロングスリーブTシャツ3万9600円、パンツ5万2800円(すべてコモリ/ワグ インク TEL 03-5791-1501)、靴はスタイリスト私物

世界に目を向け
歩き出したことで
“世界”を知る

「忍びの家 House of Ninjas」では、主演を務めるだけでなく、本作の原案者、また共同エグゼクティブ・プロデューサーとしても名を連ねます。

「原案を僕と村尾嘉昭さんと今井隆文さんで構想し、デイヴ・ボイルに監督を務めてもらいました。プロデューサーとしての経験は皆無でしたが、興味が先走ったといった感じですね(笑)。これまで役者として見ていた世界とはまるで違う世界があり、戸惑いながらもとても興奮しました」

まだ頭の中にあるだけの段階から、公開はNetflixと決めていたとか…。

「配信している作品数の数が多く、またバリエーションも幅広い。僕にとって初めてのチャレンジをするなら、絶好の場だと思いました」

同作品には吉岡里帆さんをはじめ、江口洋介さん、木村多江さん、高良健吾さん、そして宮本信子さんなど、錚々(そうそう)たるキャストが出演しています。

「正直、こんなに出てくれるとは思いませんでした。作品自体の内容に共感してもらえたと同時に、やはり世界配信という部分にも魅力を感じてもらえたのではないでしょうか」

netflix シリーズ「忍びの家 house of ninjas」
Netflix シリーズ「忍びの家 House of Ninjas」

「忍びの家 House of Ninjas」では、現代社会の中で生きる忍びの一家が、国家を揺るがす危機と対峙する姿を描きます。忍者と言えば、世界的に人気のコンテンツ。だからこそ、その表現において試行錯誤を繰り返したそうです。

「日本を代表するコンテンツでありながら、その姿を正面から描いた作品がないことに気づいたんです。海外における認識も、いわゆる富士山・芸者・寿司・天ぷらのような、ステレオタイプな忍者像が固まってしまっている気がしまして…。だから、まず念頭に置いたのは、忍者をデフォルメしたり下手に現代化させたりせず、ストレートに描くこと。忍者をテーマにした作品と聞くと、コメディの印象を抱かれがちではないでしょうか。本作では、あくまでリアルに描いています。戦闘シーンなどもかなり生々しくしていますよ」

奇抜な設定ながら、違和感を感じさせず自然な世界観を表現する。その微妙なバランス感は、監督デイヴ・ボイルの手腕と認めます。

「僕が思い描く現代に生きる忍者像を、見事に表現してくれました。日本人ではなくアメリカ人だからこそ、客観的に捉えられたのだと思います。劇中に流れる音楽も、戦闘シーンにあえてポップな音楽を使うなど、現代的なセンスが注入されています」

とは言え、撮影が進むにつれ悩むことも増えたとか。編集作業に入ったとき、作品をつくり上げることの大変さを改めて痛感したと語ります。

賀来賢人
CEDRIC DIRADOURIAN

挑戦が成長につながり
見えてきた新たな未来

「俳優として作品に携わっていたときは、どこか『編集って撮影現場に来なくていいから楽だよな』って思っていた部分もありました」

ですが、いざ編集作業に取り掛かると、その作業の複雑さや葛藤の連続に窮したそう。

「完全に舐めていました。楽どころか、『こんなに大変な作業をしてくださっていたのか』と、反省しました。そんな経験を経て、作品全体を俯瞰して見られるようになりましたね」

収穫があった一方、これまでに感じたことのないプレッシャーとの出会いも…。

「いざ配信されたら、どんな反応があるのか? これまでに感じたことのないドキドキをいま味わっています。関係者の方々の試写では、海外の方々の反応もかなり良かったので一応胸を撫で下ろしていますが、どうなるかはわかりませんからね…」

存在しない画像

原案から編集まで携わった今作。「その先に見据えているのは監督業ですか?」と尋ねたところ。

「いやいや、それはさすがに時期尚早です。今回プロデューサーとして携わらせていただいたからこそ、その大変さが身に染みてわかりました。今後も役者をベースにしつつ、さまざまな経験を重ねてゆけたらと思います。ただ、もっと世界に出てゆきたいという願望はありますね」

そうした世界を視野に入れることで、日本のエンターテイメントの底力に気づけたそう。

「Netflixにおいては、本作にも出演している山田孝之さんが先駆者だと思っています。日本から世界へ。その連鎖は、今後続くのではないでしょうか」

挑戦を繰り返しながら確実に先へ、そして広い世界へ。賀来賢人さんが見る未来は、ずっとずっと先のようです。が、そこまで到達するための糸口は、見え始めてきたのかもしれません。

賀来賢人
CEDRIC DIRADOURIAN

◇Profile/賀来賢人

1989年7月3日、東京都生まれ。2007年に映画『Little DJ 小さな恋の物語』で銀幕デビュー。2008年にはドラマ『太陽と海の教室』で初レギュラーを獲得。2009年には映画『銀色の雨』で初主演を果たし、その後もNHKの連続テレビ小説や大河ドラマ、舞台にと出演作が続く。2022年には所属事務所から独立し、自身の事務所を設立。2024年2月15日(木)からNetflixで配信された「忍びの家 House of Ninjas」で主演・原案を務めるなど、俳優の枠から飛び出た活躍を見せる。

◇Netflixシリーズ「忍びの家 House of Ninjas」(2024年2月15日<木>)からNetflixにて世界独占配信中)

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
『忍びの家 House of Ninjas』予告編 - Netflix
『忍びの家 House of Ninjas』予告編 - Netflix thumnail
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古い屋敷に住む俵一家は、表向きは酒蔵を営む一般的な家族だが、実は服部半蔵直系の忍び一族。忍者管理局なる組織の下で、現代においても忍びの任務を行なってきた。6年前に長男を任務で失ったのを機に忍びの引退を宣言したが、そんな一家に、改めて忍びの任務遂行を迫る事態が巻き起こる。

<スタッフ&キャスト>
原案:賀来賢人、村尾嘉昭、今井隆文
監督:デイヴ・ボイル
出演:賀来賢人、江口洋介、木村多江、高良健吾、蒔田彩珠、吉岡里帆、宮本信子、他

公式サイト

キービジュアル
Netflix シリーズ「忍びの家 House of Ninjas」

Photograph / Cedric Diradourian
Styling / Arata Kobayashi(um)
Hair & Make-up / Tatsuya Nishioka(Leinwand)
Text / Masafumi Yasuoka
Edit / Satomi Tanioka(HDJ)