俳優ジョナサン・ベイリー
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俳優ジョナサン・ベイリーにとって、なによりも大事なこととはなんでしょう? それは、時間を厳守することだそうです。

「遅刻して相手を待たせるのが、とにかく嫌なのです」と、英国ハンプシャーの田園地帯に建つ大邸宅、ヘックフィールドプレイスのスイートルームで彼はそう切り出しました。そして続けて、「撮影現場での仕事では、役者という立場なら多少の遅刻は大目に見てもらえることも少なくありません。ですが、だからこそ私は時間が気になってしまうのです。歳を重ねるごとに、いかに自分が時間ばかり気にして人生を費やしてきたのかと思うほどです」と…。

そう証言する35歳の俳優は──もちろん最善のタイミングで──オメガ「シーマスター」の75周年を祝す晩餐会の主催者として、この場に立っています。そう、彼は今年4月にオメガのアンバサダー就任したばかり。あの小説家ジェーン・オースティンの暮らした屋敷の向かいに建つジョージアン様式(ハノヴァ―朝の国王ジョージ1~4世から。18世紀に発達したこのシンプルなデザイン。イギリス建築の基礎となった)の邸宅でのディナーですが、ベイリー演じるアンソニーの過ごした館(やかた)を思い起こさせかのような建築です。

あの英国人貴族アンソニー・ブリジャートン(シーズン1だけで8200万再生を誇ったNetflixの人気ドラマ『ブリジャートン家』の主人公)の邸宅を想像してください、念のため。そのアンソニーが最も大切にしているのが父親から譲り受けた懐中時計であり、ベイリー自身もまた、役を演じるなかでそのタイムピースをなによりも大切に扱っていました。

「私の父は、オメガで育ったようなものです…」と懐かしそうに言いながら、「祖母は彼女の母親…つまり、私にとって曾祖母(そうそぼ)のオメガをしていましたので」と、ベイリーは目を細めます。「子ども心に、オメガは大人らしさと洗練の象徴だと感じていました」とも言います。

そして今はさまざまな役柄を演じ分けるのに腕時計が役立つのだと、オックスフォードシャー出身の俳優は打ち明けます。「役に入り込むために、音楽やフレグランスやジュエリーの力を借りるという役者は多いかもしれませんが、私の場合、それが腕時計なのです。個性的なキャラクターを何人も演じてきましたが、役づくりをするとき、時計がとても重要であることに気づいたのです」。

俳優ジョナサン・ベイリーの勝負時計は、オメガ「シーマスター」|エスクァイア日本版
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『ブリジャートン家』シーズン2の主役を演じたことで、ベイリーの名声は一気に跳ね上がりました。Netflixの英語ドラマとして絶大な人気を誇るシリーズですが、わずか4週間で、なんと約6億2711万時間という驚異の再生時間を記録しています。その影響で、シーズン1も第2位に再登場したほど。まさに絶好調のベイリーですが、そのキャリアの幕開けは少年時代に遡(さかのぼ)ります。

ジョナサン・ベイリーの
キャリアと少年時代

9歳で『レ・ミゼラブル』のガブローシュを演じ、ウエストエンド(ロンドンのミュージカルの中心地。ニューヨークのブロードウェイと比較して「ウエストエンド」と呼ばれている)の舞台を踏みました。20代になって刑事ドラマ『ブロードチャーチ〜殺意の町〜』、ミカエラ・コーエル主演のコメディドラマ『チューインガム』、フィービー・ウォーラー=ブリッジ脚本・出演の『クラッシング』などでテレビの世界にも進出。ミュージカル「カンパニー』でのローレンス・オリヴィエ賞受賞やマイク・バートレットの戯曲『コック』の出演などを経て、俳優としてのキャリアを着実に積み上げてきました。

「舞台に立つことは生きている実感そのもの」

「舞台への出演は、演技を磨くのにとても重要だと考えています。毎日、舞台に立たなければならないからです。さまざまに異なる演技を学ぶには最善の方法でもあって、そこで培われた技術がスクリーンでも活きます。そしてなによりも、舞台に立つことは生きている実感そのものですし、人生と演技とは切っても切れない関係ですね」と、ベイリーは語ります。

ベイリーはこの秋にはまた、新作の歴史ドラマでテレビの画面に帰ってきます。トーマス・マローンによる2007年の小説『Fellow Travelers(フェロー・トラベラーズ)』を原作にしたドラマです。

戦時下で活躍したホークンス・フラー(マット・ボマー)と信仰心の厚い理想主義者ティモシー・ラフリン(ベイリーの役です)の間のロマンスを、1950年代初頭に起きた「ラベンダースケア」(Lavender Scare=アメリカで行われた政策:同性愛が社会的パニックの原因とされ、ゲイやレズビアンなど同性愛者の政府職員が監視・解雇の対象となった)を皮切りに、80年代のエイズ危機までを描く内容です。

歴史モノを得意とするように見えるベイリーですが、彼の最大の関心は演じるキャラクターたちに備わる人間としての普遍的要素です。「私の内なるオタク心が、人間に宿る普遍的な性質についてもっと掘り下げたいと渇望しているのです。いかに世の中が進歩しても人々の基本的な部分は、ずっと変わることがありません」、と彼は言います。

ジョナサン・ベイリーはダイバーズウォッチがお好き

ジョナサン・ベイリーはダイバーズウォッチがお好き
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ベイリーが時計好きであることは明白です。が、果たして蝶ネクタイを巻いたドレスウォッチ派なのでしょうか? それとも、レトロなデジタルウォッチ派? もしくは、時計機能と歩数計とが一体化したハイテク派? 実際には…ベイリーはダイバーズウォッチを使いこなすタイプであることが判明しました。

「水中に潜ると、とても平和な気持ちに包まれます」とベイリーは言います。スキューバダイビングは、時計好きなベイリーが好むアウトドア活動のひとつです。「海中の静けさの中で『シーマスター』のようなダイビングウォッチを巻いていると、時を刻む音だけが聞こえてくるかのようです」と、最後に話してくれました。

Source / Esquire US
Translation / Kazuki Kimura