2019年2月24日(日本時間25日)に行われた、第91回アカデミー賞受賞式は例年と異なり、司会者なしで行われました。
ですが、その代わりと言っては何ですが…授賞式の冒頭から、クイーンのメンバー(もちろん故フレディ・マーキュリーは除く)とアダム・ランバートがステージに登場。もちろん、クイーンのナンバーを披露したのです。
このステージは、どこか不思議なパフォーマンスのように見受けられました。そして、映画で主人公フレディ・マーキュリー役を演じたラミ・マレックと同じように、アダム・ランバートも最善を尽くし、音楽界の伝説的存在であるフレディ・マーキュリーの歌を再現しようとしていたことに多くの方が感動したことでしょう。
…ですが皆さん、ご存じの通り、あれはクイーンではありませんでした。
今回のステージでは、クイーンのオリジナル・メンバーであるブライアン・メイ(ギター)とロジャー・テイラー(ドラムス)が、ランバートとともに『ウィ・ウィル・ロック・ユー』そして『ウィ・アー・ザ・チャンピオン』を演奏しました。ただし、その演奏時間は悲劇的なほど短いものでした。私が悲劇的というのは、有名人たちが一緒になってクイーンの曲を歌う姿を眺めることが、実際にはなぜか楽しめるものだったからです。
アカデミー賞授賞式の中継を観ていて、次のことを知りました。俳優ハビエル・バルデムがクイーンの曲を愛するのと同じくらい、私も何かを好きであればよかったのに…と思ったのです。一緒に曲を口ずさむバルデムの声が、私は個人的に好きです。が一方で、優れた音楽アーティストでもあるブラッドリー・クーパーは、授賞式の様子を思慮深く眺めながら、ステージに登場したパフォーマーたちに贈るメッセージのメモを用意していました。
アダム・ランバートは2009年に、人気オーディション番組『アメリカン・アイドル』のシーズン8で準優勝した後、2011年からクイーンのリードボーカルをパートタイムで務めていました。そして、このプロジェクトの成功を踏まえて、クイーンとランバートは何度か世界ツアーも行っています。
ランバートはこの10年間で、クイーンの曲を巧みに歌いこなすシンガーとなり、そのため今回のステージでは、自分の個性を打ち出した歌いっぷりを披露してくれたのです。
「ただの模倣やコピー、モノマネはしたくない」と、ランバートは2017年に「エスクァイア US」に語っていました。また、「私がここにいるのは(フレディ・マーキュリーの)モノマネをするためではない。クイーンの曲を皆さんに聞かせるため、彼らの曲がライブで聴けるようにしておくためだ」と続けてコメント。
しかしながらフレディ・マーキュリーの声とその存在は、簡単に模倣できるものではありません。そして、アカデミー賞授賞式をロックコンサート(いちばんの見所はブライアン・メイの短いギターソロでした)で始めるというのは、全体として不思議なやり方であることは確かです。ただし、映画『ボヘミアン・ラプソディ』もそうですが、このパフォーマンスは結果的にクイーンの曲を多くの人々がどれほど好きかという点を見事に証明するものとなったことも確かなことです。
いずれにせよ、今年のアカデミー賞授賞式が変わったものになることは分かっていました。そして、幕開けのこのパフォーマンスは、不思議な映画と不思議なアカデミー賞授賞式の両方にぴったり合致したもののようにも思えました。
多くのアーティストが生演奏を披露した、第91回アカデミー賞授賞式。はたして来年も素晴らしい生演奏が用意されるのか? 早くも気になるところでもありますが…。
From Esquire US
Translation / Hayashi Sakawa
※この翻訳は抄訳です。