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日本メンズヘルス医学会による一部監修記事

今回の記事を作成するにあたり、社団法人「日本メンズヘルス医学会」に監修協力をお願いしました。「日本メンズヘルス医学会」とは、男性医学を専門とする医師が集う医学会であり、主に男性ホルモンが関係する疾患(男性更年期、LOH症候群、男性性機能低下症など)を臨床研究し、男性の健康医学の確立・発展に貢献する学会です。

テストステロンの「正常」値とは、人によって異なる

自身のテストステロン値が健康で、正常な範囲にあるかどうか気になりませんか? 

「テストステロン」の誤解。正しく付き合う方法を専門家医師が解説』の記事では、「テストステロンは“忍耐力”、“緻密性”、“協調性”、“計画性が高く”…など、世のリーダーに必要な特性をもたらしてくれるであろう重要なホルモンである」と専門家医師による解説を行いました。

その記事でも触れていますが、テストステロン値が低下した場合には性欲減退、筋肉減少、気分の落ち込み(うつ病)、エネルギー低下など…さまざまな不快な影響が生じることがあり、実際には非常に深刻な問題となってしまう可能性もあるのです。

そこで難しいのは、「何をもって正常とするか?」は人によって異なるということなのです

米国・フロリダ州にある病院「メモリアル・ヘルスケア・システム」の泌尿器科医であり、メンズヘルス専門医でもあるジャスティン・デュビン医学博士も、「正直なところはっきりしていません。医師にとっても状況を理解する必要があるのです」と、話しています。

テストステロンとは、睾丸(精巣)から分泌される男性ホルモンで、性欲、精子の形成、筋肉の成長、骨の成長、髪の成長、声の太さ、赤血球の生成など不可欠な役割を担っている男性ホルモンです。ですが、「テストステロン値が低いからといっても必ずしも治療(テストステロン補充療法)が必要なわけではない」とも言います。デュビン博士は、「完全に正常と感じ、介入を望まない人もいます。人には数字以上のものがありますから、その人の考えや検査結果に基づいて治療をします」と解説してくれました。

さらに、テストステロン値は1日の中でも変動するため一定の値ではありません。

日本国内では、自宅から唾液を郵送するだけでテストステロン値を測定できる『HPテスティング』というサービスがあります。

とは言え、どの程度のテストステロン値が正常とされるのか?

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Getty Images

人によって異なるとは言え、目安は必要です。一般的に、いわゆる“正常で健康的な”テストステロン値と考えられているのはとても大きな範囲にわたります。

低テストステロン値の目安

健康的なレベルは、通常264~916ng/dLの間とされています。

低テストステロン値は250ng/dL以下と見なされることが多いのが現状のよう。

「一般的にテストステロン値は30代以降、年齢とともに減少する傾向にあります。テストステロン値は人によっても大きく異なり、1日の中でも変動することもあり、一般的には午前中が最も高い数値を示す傾向にあります」と、自然治癒力を活かすことを目的とした自然医学の権威である米国オステオパシー協会に認定された医師、ブライアン・ブラック博士は話します。

1日のなかでテストステロン値が高い時間帯は?

このブラック博士によれば、テストステロン値は午前中にピークを迎えるので、通常その時間帯に検査するそうです。そして正確な数値を知るために、異なる日に2つの検査を行うとのこと。そして、「テストステロン値が低い場合は、医師が最適な治療方針を決定します」と付け加えます。注射などによるテストステロン補充療法は、その一般的な治療法のようです。

テストステロン値に影響を与えるものは?

非常に多くの要因がテストステロン値に影響を与えます。値が250ng/dL以下であっても、低テストステロンの症状が生じない可能性もあります。

デュビン博士は「250ng/dL以下だから自動的に低テストステロンというわけではなく、315ng/dLであっても低テストステロンの場合もあるのです」と、話しています。

「年齢は大きな影響力を持っている」ということ。年齢を重ねるにつれ、テストステロンの総量が年に約1.6%減少するとも言われています。

体重もまた関係があるようです。肥満とテストステロン値の低下には、関連性があることがわかっています。「脂肪細胞に含まれるホルモンである“レプチン(Leptin=食欲を抑制するホルモン)”は、テストステロンの生成を抑制すると考えられています」と、デュビン博士は述べています。また、過剰な脂肪細胞はテストステロン値を低下させるエストロゲンを増加させる可能性もあるそうです。

テストステロン値を低下させる可能性のあるその他の要因としては、以下のようなものもあります:

  • 化学療法を含む投薬治療
  • 睾丸(精巣)の損傷
  • 甲状腺機能問題
  • HIVなどの慢性疾患または感染症
  • オピオイド鎮痛薬(麻薬性鎮痛薬)の使用

注意点:テストステロン値が高ければ良いというものでもない

テストステロン値が“高すぎる”デメリット・副作用
Men's Health US

テストステロン値に関しては、「高ければ高いほど良い」とは限りません。医師たちによれば、「テストステロン値は“男らしさ”の指標にはならないものである」と言います。

テストステロン値は“男らしさ”の指標にはならない

デュビン博士は、「テストステロン値が非常に高いからと言って、性欲が優れているわけではありません。人間の身体は人それぞれ違っています」と説明します。

「テストステロン値が高い場合(高すぎる場合)、数値によっては実際に害をもたらす可能性もあります」と、米国オステオパシー協会認定の内視鏡医であるジョン・ライナム博士は言います。

テストステロン値が“高すぎる”デメリット・副作用

テストステロン値が高いと、精子数の減少、高血圧、気分の落ち込み、不眠症など、さまざまな症状の引き金になる可能性もあるとのことです。

「男性で、自然にテストステロン値が高くなることは稀(まれ)です。もしそうであれば、それは通常、精巣腫瘍や副腎の状態が原因によるものと考えられます。筋肉増強剤の一種であるアナボリックステロイドを服用したり、医師の指導なしにテストステロン補充療法を行ったりする男性も、高値になる可能性があります」と、ブラック博士は述べています。

自分のテストステロン値を知る方法

「多くの医師は、男性にテストステロン値の定期的なチェックをすすめることはありません。一般的に気になる症状がない限り、正確なテストステロン値を気にする必要はなく、その数値さえも知る必要はないかもしれません」と、ブラック博士は説明しています。

内視鏡の専門医であるライナム博士は、「私の哲学は絶対的な数値よりも、その人とその症状の治療に重きを置いてきました。テストステロン値が低い人であれば、治療の選択肢もあります。高い人であれば、有害になる可能性もあります。良いことだからと言ってやり過ぎてしまうことは得策ではありません」と、警鐘を鳴らしています。

まとめ

性欲減退、疲労、うつ病、勃起不全、集中力の低下など…テストステロン値が低下した際の症状がある場合は、テストステロン値の検査について医師に相談してみてください。テストステロン値が低下し、低テストステロンの症状がある場合、テストステロン療法の対象となる可能性があります。

「偏見があるのではないかと、このような兆候や症状について話すことを恥ずかしく思う人もいるかと思います。ですが、医師は相談を受けなければ救うこともできませんので、心配な人はぜひ受診してみてください」と、デュビン博士はアドバイスしています。

Source / Men’s Health US
Translation / Kazuhiro Uchida
※この翻訳は抄訳です。