経済活動にも必要なメンタルヘルスの改善

独立系シンクタンクの「レゾリューション財団(Resolution Foundation)」による新しい報告書*¹によれば、「20代前半の人々が健康上の理由で職を失う可能性が、40代前半の人々よりも高い」ということが明らかになりました。

「ヘルス・ファウンデーション(The Health Foundation)*²」が資金提供する3年間の研究プログラムは、若者のメンタルヘルス、教育、雇用の改善を目的として開始されました。この報告書は、「若者の経済的非活動の増加は高齢者の減少と相まって、健康上の理由と年齢の間にもはた単純な関係は存在しないことを意味している」と述べています。

研究はまた、18〜24歳の若者のメンタルヘルスも調査し、その結果、うつ病、不安、双極性障害を経験していると示唆する症状を報告した若者が3人に1人の割合でいることも報告しました。これは2000年以来10%増加し、50万人以上の若者が抗うつ薬を処方される結果となっています。

当然のことながらこの報告書では、メンタルヘルスの悩みを経験した若者は、健康な仲間よりも「経済的に非活動である可能性が高い」ということを示しています。また、大学生の中で精神的障害を経験している人の割合が、有職者または仕事のない若者よりもはるかに多く、37%も増加していることも指摘されました。

レゾリューション財団のシニアエコノミスト、ルイーズ・マーフィーは、「メンタルヘルスの悪化が経済的に最も深刻な影響を及ぼすのは、大学に進学しない若者であり、一般的な精神障害を抱える非卒業生の若者の3人に1人は、現在、職に就いていない」と述べています。

*1 レゾリューション財団 2024年2月26日配信 “We’ve only just begun

HP

young man is honest
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英国の子どもを襲う精神疾患の陰にSNS 

精神疾患は、子どもの教育にもネガティブな影響を与えています。2023年の秋学期には、精神的健康に問題を抱える11〜16歳の子どもの約12%が、15日以上学校を休んだと推定されています。逆に、健康な生徒はわずか2%…これを比較すると、かなりの差です。

この報告書では最新の研究を参照しながら、ソーシャルメディアの普及と若者への増加したプレッシャーが原因である可能性を示唆しています。また、英国特有の原因も挙げられており、「重要な支援策への予算削減が結果的にネガティブな影響となって現れているかもしれない」と述べています。

別の要因としては、これまでにメンタルヘルスの問題に対する社会的なスティグマ(偏見)が年々の減少していることが挙げられています。これにより若者が、直面している心の問題を気軽に報告することができるようになったからと推察できます。

最後にマーフィーは、「2020年代に無職の若者の増加というリスクを抑制するために、政策立案者は経済的非活動状態にある若者の支援に重きを置くことでしょう」と述べています。

From: Men's Health UK