今年記念すべき80回目を迎える、「世界三大映画祭」の中で最古の歴史を誇るヴェネツィア国際映画祭。現地時間2023年7月25日公式サイトおよびSNSで作品ラインナップが発表となりました。

日本からは『ドライブ・マイ・カー』で米アカデミー賞を獲得した濱口竜介監督の新作が、最高賞・金獅子賞を狙うコンペティションに選出。 塚本晋也監督新作と、2023年3月に亡くなった坂本龍一氏のドキュメンタリーがアウト・オブ・コンペ(コンペ外選出)に入り、上映されます。現時点でのリストは以下の通り。

会期は8月30日(水)~9月9日(土)。審査員長は2016年に『ラ・ラ・ランド』で、2018年に『ファースト・マン』で映画祭に参加したデイミアン・チャゼルで、ジェーン・カンピオン、マーティン・マクドナーなどが審査員を務めます。 

80th venice film festival
Courtesy of Searchlight Pictures
『哀れなるものたち』(2023年11月17日日本公開予定)公式サイト

コンペティション(COMPETITION)

『Comandante』  エドアルド・デ・アンジェリス 

『The Promised Land』  ニコライ・アーセル

『Dogman』 リュック・ベッソン

『La Bête』 ベルトランド・ボネロ

『Hors-Saison』 ステファヌ・ブリゼ

『Enea』 ピエトロ・カステリット

『Maestro』 ブラッドリー・クーパー

『Priscilla』 ソフィア・コッポラ

『Finalmente L’Alba』 サベリオ・コスタンツォ

『Lubo』 ジョルイジオ・ディリッティ

『Origin』 エイヴァ・デュヴァーネイ

『The Killer』 デビッド・フィンチャー

『Memory』 ミシェル・フランコ

『Io capitano』 マッテオ・ガローネ

『悪は存在しない(Evile Does Not Exist)』 濱口竜介

『Zielona Granica(The Green Border)』 アグニエシュカ・ホランド

『The Theory of Everything』 ティム・クレーガー

『哀れなるものたち(Poor Things)』 ヨルゴス・ランティモス

『El conde』 パブロ・ラライン

『Ferrari』 マイケル・マン

『Adagio』 ステファノ・ソッリマ

『Woman Of』 マウゴシュカ・シュモフスカ&ミハウ・エングレルト

『Holly』 フィーン・トロフ 

実話もののハリウッド作品がずらりと並ぶコンペ。ブラッドリー・クーパーが主演と監督を兼ねレナード・バーンスタインの人生を描く『Maestro』。エルヴィス・プレスリーの妻プリシラ・プレスリーの自伝『Elvis and Me』を映画化した、ソフィア・コッポラの『Priscilla』。マイケル・マン監督がフェラーリの創設者エンツォ フェラーリの人生を描く『Ferrari』などなど、すでに大きな話題になっている作品ばかり。

デヴィッド・フィンチャーとヨルゴス・ランティモスの新作も入り、濱口竜介監督の『悪は存在しない』などとともに、金獅子賞の候補になっています。

アウト・オブ・コンペティション(OUT OF COMPETITION)

フィクション

『Society of the Snow』 J.A. バヨナ

『Coup de Chance』 ウッディ・アレン

『The Wonderful Story of Henry Sugar』 ウェス・アンダーソン

『The Penitent』 ルカ・バルバレスキー

『L’Ordine Del Tempo』 リリアーナ・カヴァーニ

『Vivants』 アリックス・ドゥラポルト

『Welcome to Paradise』 レオナルド・ディ・コスタンツォ

『Daaaaaali!』 カンタン・デュピユ

『The Caine Mutiny Court-Martial』 ウィリアム・フリードキン

『Making of』 セドリック・カーン

『Aggro Dr1ft』 ハーモニー・コリン

『Hitman』 リチャード・リンクレイター

『The Palace』 ロマン・ポランスキー

『雪豹(Snow Leopard)』 ペマ・ツェテン

リチャード・リンクレイターやハーモニー・コリン、ウェス・アンダーソンの新作はアウト・オブ・コンペに。2023年5月に亡くなったチベットの映画監督ペマ・ツェテンの作品もここで出品されています。

ノンフィクション

『Amor』 バージニア・エレウテリ・セルピエリ

『Frente A Guernica (Uncut Version)』 イェルバン・ジャニキアン&アンジェラ・リッチ・ルッキ

『Hollywoodgate』 Ibrahim Nash’at

『Ryuichi Sakamoto — Opus』 空音央

『Enzo Jannacci Vengo Anch’io』 ジョルジオ・ヴェルデッリ

『Menus Plaisirs』 フレデリック・ワイズマン 

息子である空音央(そら ねお)氏が監督した坂本龍一氏のドキュメンタリー『OPUS』は、コンペ外のノンフィクション部門に選出されています。

シリーズ部門

『D’argent et de sang』 グザヴィエ・ジャノリ&フレデリック・プランション

『I Know Your Soul』 ヤスミラ・ジュバニッチ&ダミル・イブラヒモビッチ 

連続シリーズものの最初の数話が公開されるのも、この映画祭の特徴。

80th venice film festival
Courtesy of Kaiju Theater
『ほかげ』(2023年11月25日公開)公式サイト

オリゾンティ(ORIZONTI)

『A Cielo Aperto』 マリアナ・アリアガ&サンティアゴ・アリアガ

『El Paraiso』 エンリコ・マリア・アルターレ

『Behind the Mountains』 モハメド・ベン・アティア

『The Red Suitcase』 フィデル・デブコタ

『Tatami』 ガイ・ナッティヴ&ザーラ・アミール・エブラヒミ

『Paradise is Burning』 ミカ・グスタフソン

『The Featherweight』 ロバート・コロニー

『Invelle』  シモーネ・マッシ

『Hesitation Wound』 セルマン・ナカル

『Heartless』 ナーラ・ノルマンデ&チアゥン

『Una Sterminata Domenica』 アラン・ペローニ

『Ser Ser Salhi(City of Wind)』 Lkhagvadulam Purev-Ochir

『Magyarázat mindenre(Explanation For Everything)』 ガーボル・ライス

『Gasoline Rainbow』 ビル・ロス&ターナー・ロス

『En Attendant La Nuit』 セリーヌ・ルゼ

『Housekeeping for Beginners』 ゴラン・ストレフスキー

『ほかげ』 塚本晋也

『Dormitory』 ネヒール・トゥナ 

オリゾンティ エクストラ(ORIZONTI EXTRA)

『Bota Jonë』 ルアナ・バイラミ

『Forever Forever』 Anna Buryachkova

『The Rescue』 ダニエラ・ゴッジ

『Day of the Fight』 ジャック・ヒューストン

『In the Land of Saints and Sinners』 ロバート・ロレンツ

『Felicità』 ミカエラ・ラマッツォッティ

『Pet Shop Boys』 オリモ・シュナーベル

『Stolen』 Karan Tejpal

『L’Homme D’Argille』 アナイス・テレーヌ 

革新的、実験的、そして挑戦的な視点で評価される作品が集うオリゾンティ部門には、塚本晋也監督の新作がイン。ジュリアン・シュナーベルの息子オリモの監督デビュー作『Pet Shop Boys』では、ウィレム・デフォーとピーター・サースガードという実力派が共演します。 また『あの日、欲望の大地で』(2008年)のギジェルモ・アリアガ監督の娘マリアナの作品も、この部門で上映されます。 

80th venice film festival
Courtesy of Tandem
『Vermine』

国際批評家週間(INTERNATIONAL CRITICS' WEEK)

コンペティション

『About Last Year』 Dunja Lavecchia&Beatrice Surano& Morena Terranova

『Hoard』 ルナ・カームーン

『Life Is Not a Competition, But I’m Winning』 ジュリア・ファー・マン

『愛是一把槍(Love Is a Gun)』 李鴻其

『Malqueridas』 タナ・ギルバート

『Sky Peals』 モイ・フセイン

『The Vourdalak』 エイドリアン・ボー

『God Is a Woman』 Andres Peyrot

『Vermin』 セバスティアン・ヴァニチェク

コンペ外選出

『Passione Critica』 シモーネ・イソラ&Franco Montini&Patrizia Pistagnesi

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
天国の日々(字幕版)
天国の日々(字幕版) thumnail
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ヴェニス・クラシックス(VENICE CLASSICS)

『Slike Iz žIvota Udarnika (Life of a Shock Force Worker)』 バウルディン・チェンギッチ

『カニバル』(1977) ルッジェロ・デオダート

『農園の寵児』(1938) アラン・ドワン

『ワン・フロム・ザ・ハート』 フランシス・フォード・コッポラ

『エクソシスト』 ウィリアム・フリードキン

『銃殺』(1964) ジョゼフ・ロージー

『天国の日々』 テレンス・マリック

『ハーモニカ』(1974) アミール・ナデリ

『父ありき』(1942) 小津安二郎

『火の馬』(1964) セルゲイ・パラジャーノフ

『深紅の愛 DEEP CRIMSON』(1996) アルトゥーロ・リプスタイン

『The Working Girls』(1974) ステファニーロスマン

『狩り』(1966) カルロス・サウラ

『田舎女』(1953) マリオ・ソルダーティ

『お引越し』(1993)相米慎二

『アンドレイ・ルブリョフ – ディレクターズ・カット』(1971) アンドレイ・タルコフスキー

『Les Créatures (The Creatures)』(1966) アニエス・ヴァルダ

『ベリッシマ』(1951)ルキノ・ヴィスコンティ

『妖街皇后』(1995) 楊凡

『Portrait of Gina』(1986) オーソン・ウェルズ 

カンヌ国際映画祭と違い、一般の人もチケットさえ手に入れられれば楽しめるヴェネツィア映画祭。懐かしい過去の名作も上映され、もう映画館では楽しむことができなのでは…と思ってあきらめていた作品をスクリーンで観られるのは感動もの。

過去1年間に復元されたクラシック作品から、特に優れた作品が選出されるヴェニスクラシックスは、世界中で語り継がれている小津安二郎監督の『父ありき』(4Kデジタル修復版)、相米慎二監督の『お引越し』がヴェネツィアの町で鑑賞できることになります。 

今回、未成年への性加害で有罪判決を受け米国に入国できなくなっているロマン・ポランスキーの名がリストにあることで、すでに議論が巻き起こっています。映画祭で作品がどう評価されるのか? そもそも上映会場に訪れる人がどれほどいるのか? 作品と”罪”をどう捉えるのか?…。映画界そのものの姿勢が、注目される場ともなりそうです。