【玉山鉄二、独占インタビュー】実写映画『次元大介』prime videoで配信|エスクァイア日本版
Wataru Yoneda
ジャケット10万1200円、シャツ4万8400円、パンツ4万6200円(すべてIRENISA)、その他スタイリスト私物

引き算の美学とリアリティー

実写映画『ルパン三世』を観た原作者のモンキー・パンチ氏から直接、ほめ言葉をいただいたことが自信につながりましたと、俳優・玉山鉄二さんは言います。

今回、次元大介を9年ぶりに演じるにあたっては、「“引き算の美学”を大切にした」と語ります。

「次元には、余計なものが削ぎ落された魅力を感じます。前回(2014年公開の実写映画『ルパン三世』)も気をつけていた次元独特の所作や、首の角度などはそのままに、“無駄なものがない”ことを一番のテーマにして臨みました。無駄を削いでいくという美学は、僕個人の思考からも共感できます。

役でなくても、『こういう人間になりたい』と憧れを持ったときに、自分自身に何かを足していく作業でアプローチする人が少なくないと思います。でも僕の場合は、プライベートでも足す作業をあまりしません。ミニマルな思考が好きなんです」

それは、ストイックでクールな次元との共通点とも言えますが、玉山さんは役を演じる際、「その人物と自分の共通点を考えるような作業はしない…」と明かします。

「言い方は難しいのですが、演じる際に僕は自分がないというか…自分という軸から役をつくっていくことはありません。まずは自分を無にします。無から役柄になっていく感じです。『その人物に対して近いとか遠い』を判断して、その差分の埋め合わせをするような作業をするのではなく、全く無からキャラクターをつくり上げるようにしています」

その際に参考にするのは、「ドキュメンタリー映像」とのこと。

「役と同じ職業の方の映像を観て、近づいていく感じです。その人がまとう空気感や所作が大事だと思うので。例えば、戦争を描いた作品だったら実際の昔のフィルムを、実在の事件がモデルだったら当時のニュース映像を…ってな感じです。70年、80年前の映像が残っているじゃないですか。それを観ると、その時代に生きている人のメンタリティーが表情に出ています。実際にそれが観られるって、すごくないですか⁉ 観ていると、いろいろなイマジネーションが湧いてくるのです。だから、普段からドキュメンタリーや昔のニュース映像をものすごく観ますよ」

対して、フィクションは「あまり観ない」と言います。ドラマも映画も、自分の作品さえ観ないことが多いというのです。

「自分の作品は、観ると後悔ばっかりしちゃうんですよ。だったら、もっと前を向いて、次の役のためのノンフィクションや、自分とはかけ離れた職業の方の姿を見て勉強したいと思うんです。もちろん、フィクションも勉強になるのですが、先入観で埋められてしまう気がして……。例えば、こういう状況のときはこういう反応をする、みたいな固定概念を無意識にもってしまう自分が嫌なんです」

「フィクションをつくっていく者として、リアリティーを軸に、その中から自分の表現方法を見つけていきたい」

そう思ったきっかけは、2009年公開の映画『ハゲタカ』で投資ファンド代表の劉一華(リュウ・イーファ)を演じたときだそうです。

「最後は刺されて死ぬ役でしたので、可能な限り実際に人が刺される映像を探し観るよう努めました。すると、今まで映画(フィクション)の中で人が刺されたときのリアクションと全然違うんです。ウワーッ!みたいなドラマチックな声も出ず、(実際に人が刺されるときって…)“あれ? 今、人とぶつかったのかな?”というくらいの反応なんです。そういうリアリティーを大切にしたい。フィクションをつくっていく者として、リアリティーを軸に、その中から自分の表現方法を見つけていきたいと思っています」と、玉山さんは映画『ハゲタカ』で刺されたシーンについて、腰に手を当て再現してくれました。

つい数秒前まで、“玉山鉄二”というひとりの人間に撮影スタジオの中で、ただただインタビューをしていたのですが、何気なく見せてくれたその刺されたシーンの一瞬の動作・身振りに私たちは圧倒され、恐怖すら覚えたほどでした。これが、“俳優”なのだと。

【玉山鉄二、独占インタビュー】実写映画『次元大介』prime videoで配信|エスクァイア日本版
Wataru Yoneda

玉山鉄二の開けられないウイスキー

次元大介は実在の人物ではないですが、それ以上に、イメージが固まっている人物でもあります。にもかかわらず、劇中で愛用の帽子を目深くかぶった玉山さんは、まさにガンマン次元大介そのものでした。

「帽子は次元にとって、銃を撃つために必要なものだと思っています。つばを使って照準を合わせているんですよね。次元が次元になるために必要なアイコンの一つです」

そんな次元のように、玉山さん自身が俳優・玉山鉄二になるために必要なもの、意識的にスイッチを入れるためにすることはあるのでしょうか。

「僕はあまり器用ではないので、演技をするうえで瞬間的にスイッチを入れるようなことはないですね。やはり、ドキュメンタリーを観たりしながら、徐々に……ですね」

次元にとって大切な相棒、コンバット・マグナム。本作でも一緒に刻んできた時間を愛しむような場面があります。玉山さんにとっての“コンバット・マグナム”のような物があるのかとうかがうと、少し考えた後、「一つだけ」とうなずきながらこう続けます。

「……ウイスキーですね。『マッサン』(国内初のウイスキー製造に生涯をかけた竹鶴政孝とその妻をモデルに描かれた、2014年のNHK連続テレビ小説。玉山さんは主人公を演じました)をやっているときにいただいたもので、竹鶴さんが仕込んだ原酒も含んでいる40年物です。あれから10年経っているので、50年前のウイスキーになるのでしょうか。いまだに開けられないんです。リビングのいつも見えるところに置いているんですが、どう向き合っていいかもわからない。いつ飲むんだろう……。日々、そのハードルが上がっているような気がしています。妻には、開ける前に俺が死んだら、棺にかけてくれって言っていますよ(笑)」

19歳で俳優デビューしてから、来年は25年を迎える玉山さん。「歳を重ね、時間の概念も変化してきた」と言います。

「やはり、昔に比べたら時が経つのが早く感じますよね。だから余計に、『効率よく時間を使わないと』って思ってしまうんです。効率が悪いとイライラもしちゃうし、せっかちなんです。旅行に行くときも無駄なく最短ルートで動けるように、行先を事前に全て調べたり。でも最近、効率的な生き方をしている自分が嫌になることが多々あって。無駄な時間というか、そういうところにも良さがあるのではないかなと思うようにもなりました」

【玉山鉄二、独占インタビュー】実写映画『次元大介』prime videoで配信|エスクァイア日本版
Wataru Yoneda

ピンチを乗り越えてこそ、
見つかるもの

本編に先駆けて配信された『次元大介』の特報映像では、「面白くなってきやがった」と次元が言い残していきます。危機に直面したときに次元がつぶやく名台詞ですが、玉山さん自身がピンチを乗り越えるときに支えにしている言葉や経験がありますかという問いに、「ないなぁ。僕、そんなにロマンチストじゃないからな」と少しはにかみ、「サウナに行って忘れるくらい」と笑いました。

「何か壁にぶち当たるときは、自分の人生にとってそうあるべきタイミングだと考えます。だから、とことんへこんで、とことん悩む。誰かの言葉に救われるわけでもないので、基本的には人に頼ったり相談したりもしません。僕は、自分にも他人にもあまり期待しないんだと思います。誰かに相談したところで、解決できるような答えが返ってこずにモヤっとするのも嫌ですし、それは身勝手すぎる。もちろん、相談するのも一つの方法ですが、僕自身は一人で解決しないと意味がないような気がしています」

続けて、「自分のことですからね。その状況を受け入れるしかない」と真っ直ぐに語ってくれました。

「壁にちゃんと向き合い、苦しんで苦しんで悩み抜いたからこそ見つかるひらめきや、考え方があるはずです。『何かに頼って解決できるほど甘くないでしょ』って思うんです。『生きている以上、それを乗り越えていくのが人生なんじゃないかな……』と。そこから、自分の哲学や理念みたいなものが生まれてくる。僕の考え方は古いのかな。でも、そうやって経験値を積み重ねていくことで、人間の厚みが増していくのではないかと思っています」

一つひとつの質問に対して、真摯に自然体で受け答える姿に、約50年にわたり次元大介の声優を務めた小林清志氏の「次元は江戸っ子だ。雰囲気はJAZZにも似ている」という言葉を思い出しました。せっかちを自称しつつ、じっくりと自分と向き合ってきた玉山鉄二は、いつどんな時にウイスキーの瓶を開けるのだろう――。

[プロフィール]

【玉山鉄二、独占インタビュー】実写映画『次元大介』prime videoで配信|エスクァイア日本版
Wataru Yoneda

玉山鉄二(Tetsuji Tamayama)/1980年4月7日生まれ、京都府生まれ。1999年、テレビドラマ『ナオミ』で俳優デビュー。映画『ハゲタカ』での演技が高く評価され、2010年 第33回日本アカデミー賞 優秀助演男優賞を受賞。2014年、連続テレビ小説『マッサン』で連続テレビ小説初主演。次元大介役は、2014年の実写映画『ルパン三世』以来2度目。

Amazon Original映画『次元大介』

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
『次元大介』 予告動画 | プライムビデオ
『次元大介』 予告動画 | プライムビデオ thumnail
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  • 配信開始日:2023年10月13日(金)よりPrime Videoにて世界独占配信
  • キャスト:玉山鉄二、真木よう子、真木ことか、永瀬正敏、草笛光子
  • 脚本:赤松義正
  • 監督:橋本一
  • あらすじ:物語は、長年連れ添って来た愛銃に違和感を感じた次元が世界一のガンスミス(銃職人)を探して日本にやって来る所から始まる。辿り着いた先に待っていたのは、寂れた時計店とおよそ世界一のガンスミスのイメージとはかけ離れた女性・千春だった。「銃の仕事はもう辞めている」と修理を断る千春だが、そこへオトと名乗る少女が現れる。図らずも始まった疑似家族のような暮らしの中でオトが抱える悲しい過去が徐々に明かされる。そんな矢先、謎の集団がオトを連れ去る!!!謎の集団の正体は、悪名高いスラム・泥魚街のボス、絶世の美女にして伝説の殺し屋アデルとその右腕・川島と率いる私兵。なぜ彼らがオトを狙うのか。次元は、アデルの指揮によって要塞と化した街から囚われの少女を無事に救い出すことができるのか、そして彼女に感情を、笑顔を取り戻すことができるのか。
  • コピーライト: Original comic books created by Monkey Punch©2023 Amazon Content Services LLC or its Affiliates and TMS Entertainment Co.,Ltd.All Rights Reserved

Photograph / WATARU YONEDA
Interviewer / NATSUKO OHKI
Hair & make / TAKE(3rd)
Stylist / YOSHIO HAKAMADA (juice)
Edit / HIKARU SATO