【日本版編集長・後記】スタジオジブリ中でも宮崎 駿監督にフォーカスするなら、実写を超越するこだわり尽くした濃厚かつ、ときに軽快な描き方…だけが魅力ではありません。そこに登場するキャラクターは単純に表現されていない、「人生は常に白か黒か、善か悪か、というシンプルなものではない」と認識しているかのように思えるのです。そして、われわれに考えさせる――。それは個人の考えの尊重なのか、それとも警鐘を鳴らしているのかはわかりません。ですが、そこで何かを感じることで、明日の一歩につながる意志が得られる可能性を秘めています。
「そこがハリウッドと違うところ」と言えるでしょう。
私たちは自分を取り巻く世界の、困難や曖昧さを乗り越えて生きていく姿勢を参考例を見せてくれているような気がします。2022年に東京藝術大学学長 日比野克彦氏をインタビューしたとき、「芸術こそが『SDGs』に関係していかないと、継続していけないと思っています」と言っていました。他のインタビューでは、「アートを専門としている私たちが緊急事態の地球に対してSDGsに芸術がもたらす"心"を入れていかなければ、SDGs自体が持続できないという実感がある」とも…。
われわれの生活を阻む…いわゆる「災難」に対処するための足掛かりとなるのは芸術、そして芸術性を追求したエンターテインメントではないでしょうか。高畑 勲監督の『火垂るの墓』など、宮崎 駿監督以外の作品も重要な「戦争映画」の一つとしてわれわれに問いかけてくれました。歴史を観ても、そんな実例はいくつかあるはずです。ですが、それらを逆手に取って、さらなる困難の道へと誘導されてしまったことも…。
スタジオジブリの全作品を、単純にリストに載せるのは簡単ですが、ここでは海外の目から見た「おすすめジブリ作品」を8作品を紹介しています。
椅子やソファーに深く腰掛け、リラックスして子どもの頃に戻ったような気持ちでぜひご覧ください。そこには思いやり、想像力と思考力に富んだ知性、そして深い共感。暗い世の中で他者を受け入れることや喜び、勇気をボーダーレスで私たちに示してくれるでしょう。