「Backyard Bill」の写真家とファッション撮影「ニューヨークどこかの家の裏庭で」
フォトグラファーのビル・ジェントル氏は、ニューヨークを拠点に活躍する英国人で、スタイリッシュな知人を自宅の庭などで撮影し続け、独自の手法でフォトグラファーとしてのキャリアを築いていきました。
フォトグラファーのビル・ジェントル氏は過去12年間、自宅の庭で撮影するという斬新なアイデアで、メンズのスタイルシーン全体に影響を与えただけでなく、自身のキャリアも成功へとグッと押し上げました。
「もともと私は、ファッションフォトグラファーになろうとしていたのですが、そう上手くはいきませんでした」と、ジェントル氏は話します。続けて、「しばらくして私は、大きな裏庭のあるウィリアムズバーグのアパートに引っ越しました。そして、自分の家の裏庭だけで、出会った人々や友人を撮影しようと思い立ったんです。正直、3回目くらいの撮影から退屈になっちゃいましたけどね…。だから自分の家だけでなく、彼ら(モデル)の裏庭とか、家の周りとか、撮影する場所を広げていったんです」とのこと。
これがジェントル氏が2008年に立ち上げ、今では多くの方が参考にしているスタイルブログ「Backyard Bill」の起源となります。そのアイデアは個人的かつ斬新な着こなしという言語を学ぶ際に、現実からかけ離れたとも言えるランウェイの光景よりもはるかに、共感に満ちたにインプットしやすいキャプチャーだったのです。
そしてジェントル氏は重ねてこう言います。「このことによって、自身の服を着こなした…まさに、リアルクローズについて紹介することができたのです。そしてそれは、ファッションというクリエーションの新たな伝え方として、現在もなお、ある種ムーブメントとなっているような気がします」と彼は言います。
そして今回「ESQUIRE」US版では、彼の撮影スタイルを受け継ぎながら、ニューヨーク中のガレージや私道、そしてもちろん裏庭を1週間かけてゆるやかに移動し、10人のスタイルに精通した男性を撮影する企画を進行させました。そうしてわれわれは、2020年に起こった新たな現実の渦中にいながらも、写真という世界で彼がたどった最初の一歩をたどることができたような気がしてなりません。物事が変わっても、基本的価値観は同じだと考えています。
「皆さんご存知のとおり現在はフェークではない、信頼できるものに誰もが飢えているはずです」と、ジェントル氏。そして、「最近、友達が派手に着飾っている様子など見ることもなくなっています。逆に、以前よりもトーンダウンした方法で自分のスタイルを模索している友だちはいます」とも言います。
この企画はスタイルのPOV(point of view=一人称視点での撮影)であり、それが現在における大多数の心の状態でもあるのです。私たちもこれに倣(なら)うべきでは…と思うのです。