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『メディア王 〜華麗なる一族〜』ケンダル・ロイのファッション、オールタイム・ベストテン
HBOで放送されているTVシリーズ『メディア王 〜華麗なる一族〜』で、俳優ジェレミー・ストロング演じるケンダル・ロイは野心家であるが薬物依存症に苦しんでいる敗北(!?)キャラクターのように描かれています。ですが…、ファッションに関しては「無敵な存在」と言えるのです。
マルジェラの無地のTシャツは、あなたの1カ月の家賃とほぼ同じくらいの値段に相当するかもしれません。登場人物が着こなすスーツの値段は、自動車並みのプライスとなるブランドかもしれません…。ベースボールキャップ、スニーカー、サングラスにはいずれもロゴが入っておらず、極めてベーシックなお手ごろ価格の生活必需品に見えますが――もちろん、そんなことはありません。
これらは『メディア王 〜華麗なる一族〜(原題:Succession)』に登場する唯一無比のキャラクターで、ウェイスター・ロイコ社の後継者と目されるケンダル・ロイのワードローブです。そして彼は、私(筆者Rikhy)にとってはゆるぎないファッションの象徴なのです。
『メディア王 〜華麗なる一族〜』を観ている人なら(そして、この調子だとたぶん観ていない人も)、このドラマに出てくる億万長者たちのキーポイントが目立たない贅沢――言わば、“隠れた高級品”であることがわかります(ここ最近のトレンドで言うなら、「ステルスウェルス<stealth wealth:知る人ぞ知る密かな贅沢>」や「クワイエットラグジュアリー<quiet luxury:静かで主張しないラグジュアリー>」)。ブランドなし、ロゴなし…にもかかわらず、とてつもなく高価なのです。ここで言っているのは、数百ドルもするカシミアのベースボールキャップとか、私なら恐ろしくてとても外には履(は)いて出らないスエードのモカシンのことです。
ウルトラ富裕な人々には、身の回りの品を派手なプリントやデザインやモノグラムで飾る必要がない、ある種の控えめな柔軟さがあります。それらの品々はごくベーシックなものに見えるかもしれませんが、その一点一点が数百ドルはくだらないものであることは誰でも察知していることでしょう。
派手なデザイナーズブランドを身につけて、ロイ家の輪に加わってくる人たちはその趣味をバカにされてしまうわけです。このような目立たない贅沢の前では、それはケバケバしく陳腐なだけなのです――RIP, Ludicrously Capacious Bag Girl(安らかに眠れ、あきれるほど大容量のバッグの女よ)*1。
*1 シーズン4で、セレブ生活への憧れが強く出世を目論むトムと、失業してロイ家の家長を頼ってNYに出てきたグレッグが、パーティー会場の片隅に大きなバックを肩にさげ出席したある女性を観察しながら発したセリフ。