注目のデザイナーが手がける
待望のコレクション

ハリー・ランバートは超多忙な男です。ファッション界でも人気のカリスマスタイリストの1人であることはもちろん、ロンドンのデザイナー、スティーブン・ストーキー・デイリーとハリス・リードのランウェイを手掛けたほかに、『ブリティッシュ・ヴォーグ』や『デイズド』のファッションページを数多く参加。なので、ファッション好きなら彼のスタイリングをきっとどこかで目にしたことがあるはずです。

でも、ハリーの名前を世界的なものにしたのは、「ワン・ダイレクションのメンバーだったハリー・スタイルズのスタイリストであったこと」と一番でしょう。現在の彼は、セレブリティ並みの知名度を得て、トップの座に上り詰めたと言っていいでしょう。それと同時に、スタイリストとしての功績も高く評価されています。それは、男性のマスキュリンなスタイリングを再定義することに挑戦し、スパンコールの採用など新たなアプローチを提案したことによるものです。

ハリー・スタイルズとの仕事においては、男性のファッションにおけるジェンダーの境界を超えたスタイリングが注目を浴びることになります。二人のコラボレーションでは、流行にとらわれずに個性的で実験的な要素を取り入れ新しい視点を提供。彼のアプローチはルールを尊重しつつも、個性を重視したスタイリング…その重要性を強調しているのです。

そんなランバードなら、スケジュールも常にびっしりと埋まっているはずです。でも驚くべきことに、ランバートはZARAとの新しいコラボレーションで、ファッションデザイナーとしての役割を引き受ける時間をどこからか見つけたようです。そうして完成したコレクション「Cutie Chaos(キューティー・カオス)」が、11月13日(月)から日本でも発売されました。

ZARA公式内キューティー・カオス

学生時代から探していたピースや、時間をかけて集めた服からインスピレーション得て、アニマルプリントのシャツ、クラシックなツイードのテーラリング、そしてレトロなアウターにヴィンテージな感性が注入されたコレクションは世界中で話題となっています。

「ZARAとのコラボは、私にとって本当のチャンスだと思いました。これまでずっと欲しかった、そして年月をかけて集めようとしていたワードローブをつくる機会となったからです」と、彼はエスクァイアUK版編集部に語っています。

さらに今回エスクァイアUK版編集部は、そんなファッション界のカリスマから、「混沌としたワードローブがいかに有益か」「最高のヴィンテージはどこで手に入るか」「ファッションの失敗は必ずしも悪いことではない」などについて話を聞くことができました。

ハリー・ランバートのキューティー・カオスコレクション
Zara
ハリー・ランバートのキューティー・カオスコレクション
Zara

ハリー・ランバートへ
インタビュー

Q:最近では、「Chaos:混沌」という言葉が特にソーシャルメディアでよく使われていますね。ワードローブにその「混沌」を取り入れることは、どんな意味がありますか?

A:もしかしたら、アシスタントは「私(ランバート)自身が『混沌』だ」と言うかもしれませんね。私は仕事や忙しさから気持ちを切り替えることが本当に難しく、働き続けるとか忙しいのが苦にならないので。私の脳は常に働き、考え続けているんです。

ワードローブに「カオス」があることは、いいと思います。私がタレントと一緒に仕事をするときにいつもフィッティングには、ワイルドカード(万能の効力を持つ特別な存在)になるような、ちょっと意外なルックを持ち込むようにしています。着るものに挑戦することは良いことだと思うし、店舗の中でラックにかかっているものを見て、「これは自分には合わないだろう」と思ったときにこそ、それを試してみるべきだと思っています。

Q:このコレクションにはレトロなエネルギーがありますね。あなたが好きなファッションの時代を教えてください、そしてその理由も。

A:私は「ファッションで育った」と言っても過言ではありません。その中でもアリスター・マッキーというスタイリストが大好きで、彼が私のスタイルのインスピレーションになっています。彼自身の私服にも本当に影響を受けました。初めて彼のスタリングを見たときに、すごくインスパイアされたことを覚えています。

私が大好きな70年代の美学が、「どこから来ているのか?」はわかりません。でも恐らくあの時代のポップスターは、男性たちが(ファッションを)とても楽しんでいて、とても革新的でエキサイティングだったからではないでしょうか。

ロンドンにいた20代の頃、ヴィンテージを買うことはとても楽しかった。隠れた宝物を見つけるような感覚です。そう思うと今は、特定のアイテムを探し回ろうとするあまり、その想いが少し抜けてしまっているのかもしれません。

最近は素晴らしいデザイナーヴィンテージが手に入りますが、50年代 / 60年代 / 70年代の良いものはとても高価ですし、アーカイブとなっています。そこで私のコレクションには、そうした要素を取り入れています。この茶色のスエードのジャケットはヴィンテージで見つけるのが本当に難しいから、私の友だちはみんな欲しいと思ってくれるはずです。

Q:学生時代の服装をちょっとした恥ずかしさをもって振り返る人が多いすが、このコレクションは部分的にそんな一面にインスパイアされていますね。あなたのファッションにおいて最悪の失敗は何ですか? そしてそこから学んだことは何ですか?

A:実際、学生時代はニューウェーブの時代にはまり、ネオンのトラックスーツにどっぷりと浸かっていたので、ちょっと恥ずかしく思いながら振り返っています。過去5年間を振り返ると、「あれ、本当にこんな服を着ていたの?」と思うこともあります。でも、その当時は自分にとって素晴らしいと感じ、着ているものにとても満足していたことを覚えています。

ファッションの失敗は、ときに最高のものとなります。なぜなら、ファッションは本当に思い出と結びついているからです。ある服を思い出して――今はそれを着たくないかもしれませんが――良かったときを思い出させてくれるのです。もちろん、後悔して手放したものもあります。そういう意味では、ファッションは常に旅のようなものです。

Q:学生時代のあなたなら、コレクションの中でどれを一番の気に入ると思いますか?

A:ウサギが描かれた黄色いシャツと、それとおそろいのネクタイ(共にSOLD OUT)が大好きです。これは若かったときには見つけることができなかったものであり、もし見つかっていたとしても当時の私の予算には範囲外となっていたものでしょう。

ハリー・ランバートのキューティー・カオスコレクション
Zara
ハリー・ランバートのキューティー・カオスコレクション
Zara

Q:最近は個性的なものが手に入りにくくなっているようですが、一点ものを買うならどこがおすすめですか?

A:Etsyで、ヴィンテージTシャツを探すのが大好きです。最近、休暇中にいくつか本当に欲しいものを見つけました。eBayはデザイナーズヴィンテージを探すのにすごくいいし、今は何でも鑑定してくれるから安心して買い物ができます。Depopも本当に素晴らしいです。

このコレクションで期待していることは、着終わった人がそれを売るか、誰かにあげたりしてくれることです。良い生地とディテールにこだわりましたので、これをワンシーズンだけ着てすぐに捨てられるような、トレンドのコレクションにはしたくありません。このコレクションが永遠に生き続けることが本当に重要で、「時代を超越した感覚の服であって欲しい」と願っています。

Q:スタイリングのコツを1つ教えてくれるとしたら?

A:例えそれが似合うと思っても、着心地が悪いと感じたら着ないことです。私の場合は外出したとき、そのとき着ている服が「きつすぎる」と感じると、「なぜ、こんなのを着てしまったのか?」って後悔します。少し古臭いかもしれませんが、自分が着ているものが快適なら自分自身の見え方も快適に見えるだろうし…つまり、より素敵に見えるはずだと思っています。

Cutie Chaosコレクションは2023年11月13日からzara.comおよび一部の店舗で発売
取り扱い店舗:新宿店、銀座店、池袋店、大阪心斎橋筋店、渋谷公園通り店

Translation / Yumi Suzuki
Edit / Satomi Tanioka
※この翻訳は抄訳です

From: Esquire UK