この記事をざっくり説明すると…
- なんと、絶滅したと思われていたカメレオンが、アフリカ南東部の島国マダガスカルに姿を現しました。
- この「フェルツコウカメレオン」の存在が最後に確認されたのは、100年以上も前。今回、その幻の生物が実に1913年以来初めて、私たちの前に姿を現しました。
- メスの存在も、史上初めて確認されました。
フェルツコウカメレオン(Voeltzkow’s chameleon)は、1913年にアフリカ南東部沖に浮かぶ島国・マダガスカルの大自然の中で目撃されたのを最後に、完全に姿を消してしまいました。それから1世紀以上が過ぎた2020年、すでに絶滅したものと考えられていたこの幻のカメレオンが、再び私たちの前に姿を現したのです。
野生動物保護団体の努力の賜物
この特種な爬(は)虫類と人類との再会を後押ししたのは、野生動物保護団体のグローバル・ワイルドライフ・コンサベーション(Global Wildlife Conservation)でした。米国テキサス州に本拠を構えるこの団体は、「サーチ・フォー・ロスト・スピーシズ(Search for Lost Spieces)」というプログラムを進めており、最低10年間は目撃されていない生物の種の捜索を世界各地で行っています。このプログラムによって、今回フェルツコウカメレオンが発見されたのです。
プロジェクトチームは2018年3月から、マダガスカルで幻のカメレオンの調査を開始しました。ですが、予定されていた調査期間の終了が近づくまで、「大きな成果を挙げることはできなかった」と言います。しかし、残すところあと数日となったある日、タスマニアのガイドがそのフェルツコウカメレオンらしき姿を見つけたことで、状況が一変したのです。
その後、研究チームは3匹のオスと15匹のメスの存在を確認しています。いずれも木の上や、カツェピーという町のホテルの敷地内で、夕暮れ後に眠っている状態で発見されました。オスの個体には噛まれた痕や小さな傷痕が確認されています。これを受けて、ドイツの爬虫両生類学の専門誌『Salamandra』は、「この傷は異種間での争いや、老化現象によるもの。寿命が近づいていることも推察されます」という研究者の言葉を伝えています。
世紀の大発見の余韻
実際のところプロジェクトチームは、メスのフェルツコウカメレオンの発見を期待していたわけではありませんでした。なにしろこれまで、一度も生きたメスが確認されたことがなかった生物です。メスの個体はストレスを受けると、「黒と白の表面に水玉模様と紫色の筋を見せる」という点でオスとは異なります。オスの場合は、さまざまな色調の緑色に変化することを科学ニュースウェブサイトの「Live Science」は伝えています。
フェルツコウカメレオンは、マダガスカルの極めて狭い地域に生息する固有種です。そのため研究者たちは、その個体数の継続的な減少を危惧しており、絶滅危惧種として認定するよう働きかけを行っています。
しかし一体なぜ、このカメレオンはこれほどまでに長い期間、あらゆるレーダーをかい潜って姿をくらましてきたのでしょうか? 謎は深まるばかりですが、研究者たちは次のように仮説を立てています。
フェルツコウカメレオンは孵化(ふか)した後、わずか数カ月間しか生きられないと考えられています。とても短い寿命ゆえに1世紀もの間、人の目に触れることなく存在し続けてきたのではないでしょうか? 生息エリアは雨期に入ると道が閉ざされ、出入りできなくなってしまうのです。
そんなわけでフェルツコウカメレオンについては、未だに分かっていないことが数多く、今回の発見を行った研究者らは、「この種の保全環境を確かなものとするために、この研究調査を続けたい」と話しています。
Source / POPULAR MECHANICS
Translation / Kazuki Kimura
※この翻訳は抄訳です。