[目次]

▼ ぺロニー病とは?

▼ ぺロニー病の診断方法

▼ ぺロニー病の原因は?

▼ ぺロニー病のリスクを高める要因は?

▼ ぺロニー病と関わる他の疾患がある

▼ ぺロニー病に最善の治療法とは


ぺロニー病とは?

自分のペニスが曲がっているのを発見したら、どれほど不安なことでしょう。こんな不幸な目に遭っているのは、自分だけ?――そんな心配に襲われてしまうかもしれません。「酒場で気軽に打ち明けられるような悩みでもありませんし…」と、セントラル・オハイオ・ユーロロジー・グループ(Central Ohio Urology Group)の泌尿器科の専門医フレデリック・テイラー博士()は言います。

とは言え、日本の成年層中には1980年代後半の人気漫画『右曲がりのダンディー』()をご存じの人も少なくないと思うので、その可能性は知っていたかもしれません。そして、やや曲がっていることを確認した人も…。ですが、ここで触れているのは、後天的に明らかな変形していたら…の問題になります。かと言って、この主人公の一条まさとは極端な曲がり方のようで、男子トイレでは横を向いて用を足すというほどでも、それが先天的なものか? 後天的なものか? はわかりませんが…。

本題に戻りますが、ここでフォーカスする曲がったペニスに象徴される「ぺロニー病は、あなたが思っているよりも一般的な症状とも言えます。なぜなら、「男性のおよそ100人に1人(*⁴)は、人生のいずれかの時点でペニスの形状の変化を経験する」とも言われているからです。

そしてぺロニー病の罹患率はその程度に推定されているところ、「実際は、判明しているよりも多くの患者がいるのではないか?」と見る専門家もいます。そんなわけで、今回はこの病気について知っておくべきこと、また、ペニスに異変を覚えた際に医療の助けを求めることの重要性を紹介します。

ぺロニー病の診断方法

なので皆さん、ペニスの見た目や機能に異変を感じたなら、「ぺロニー病」を疑うべきかもしれません。

「勃起した状態のペニスに、違和感を覚えたとします。角度や方向は個人差があるでしょうが、まっすぐに天井を向かって湾曲しているのが一般的です。そこであるとき、それが思い掛けない方向に曲がって変形してしまうことがあります」と、テイラー博士は言います。

そのような変形は、ペニスの見た目に影響を与えるだけではありません。ペニスの機能そのものにも影響を及ぼし、性交渉が困難になったり、場合によっては勃起するだけで痛みを覚えるといった状況も起こり得ます。

なので、すぐに医師による診断を受け、場合によっては陰茎の血流やその内部の瘢痕(はんこん)組織(※編集注:組織の「創傷(切り傷、擦り傷、やけどなど)」が治癒するときに生じてしまう結合組織のこと)を検知するための超音波検査など、原因究明をするべきでしょう。

ぺロニー病の原因は?

「Peyronie's Disease(ぺロニー病)には、“Disease(病気・疾患)”というワードが当てられていますが、実際には“Disease”というべきものではありません。その正体は、けがなのです」と述べているのは、イェール医学校の泌尿器学教授スタントン・ホーニグ博士(*⁵)です。ちなみに日本では、「陰茎硬化症」「形成性陰茎硬化症」と呼ぶこともあります。

スポーツをしていてボールが直撃したとか、犬に襲われたとか、あるいは性交中に抜けてしまったペニスでパートナーの恥骨を突いてしまったなど、その原因はさまざまとのこと。「患者の5人に1人は具体的な原因を記憶していますが、多くの場合は何が原因だったか明確に覚えていません」と、ホーニグ博士は言います。

いわゆる、“一般的な性行為”が原因となる場合も多々あります。「勃起するたびに、あるいは性交のたびに、ペニスというものはその組織に微細な外傷が生じるものです。コーヒーテーブルに膝をぶつけてしまうのと、なんら変わりがありません」と、テイラー博士。

通常であれば、気づかないうちに身体がその微細な外傷を自己修復するのですが、場合によってはうまく治癒できず、瘢痕(はんこん)組織が残ってしまうこともある。瘢痕組織は「プラーク(*⁶)」とも呼ばれ、正常かつ健康な組織の機能を阻害するものです。

「その結果、ペニスが健康時のように膨張したり、血流で満たされることもできなくなるのです」とテイラー博士は解説します。つまり、それがぺロニー病の正体です。

ぺロニー病のリスクを高める要因は?

誰にでもなる可能性のあるぺロニー病ですが、その発症リスクを高める要因がいくつかあります。

ぺロニー病の男性の約11%が1型糖尿病(※編集注:膵臓<すいぞう>のインスリンを出すβ細胞が壊されることにより、慢性高血糖状態となってしまう糖尿病)あるいは2型糖尿病(※編集注:遺伝的素因によるインスリン分泌能の低下に、環境的素因としての生活習慣の悪化に伴うインスリン抵抗性が加わり、インスリンの相対的不足に陥った場合に発症する糖尿病)を患っており(*⁷)、これらの疾患が大きく関与することが分かっています。

また、指が曲がってしまうこともあるデュプイトレン病(※編集注:手掌腱<けん>膜が肥厚,線維化し,収縮することによって指がしだいに曲がってくる病気<*⁸>)を疑わなければならないケースもあります。デュプイトレン病を患っている男性がぺロニー病を発症する可能性は低くありません(*⁹)。「手指とペニスと言う、全く異なる部位に現れる病状ですが、いずれもその分子メカニズムも同一であると考えられています」と、テイラー博士は補足します。

ぺロニー病と関わる他の疾患がある

また、ぺロニー病を患うことで、精神的および肉体的な健康問題を引き起こす危険性もあります。性の健康について専門に扱う医学誌『The Journal of Sexual Medicine(ザ・ジャーナル・オブ・セクシュアル・メディシン)』に掲載されたぺロニー病の研究報告(*¹⁰)によると、ぺロニー病患者の半数ほどが、うつ病を発症する傾向にあるとのこと。

「ぺロニー病には、常に感情的な側面がつきまといます」とテイラー博士。さらに続けてこう言います。

「ペニスに起こる変化は、それがどのようなものであれ、不安や抑うつを引き起こすものです。また潜在的に、パートナーとの関係に悪影響を及ぼす可能性も無視できませんので…」

ぺロニー病の副作用として、「勃起不全が起こる可能性もある」と言います。

「変形したペニスを目にすれば、その機能について『心配するな』と言うほうが無理な話。その不安感によって勃起しにくくなってしまうのです」と、ホーニグ博士は加えて説明します。

ぺロニー病に最善の治療法とは

変形したペニスを発見すれば、おそらく大多数の人が「すぐにでも手を打ちたい」と考えるのは自然なことでしょう。ですが医師の中には、また別の考えをもつ人もいます。

「というのもペニスを治療したのに、また悪化してしまうことは避けたいからです。通常は、状態が安定するまで大きな治療を行わないのが一般的です。なぜなら、治療によってむしろ、事態が悪化してしまうことを避けるためです。通常であれば、ペニスの損傷から1年ほどの治療期間が必要となります」と、ホーニグ博士。

その間、医師は症状の改善を促すために、市販の鎮痛剤やED(勃起不全)治療薬をすすめられる場合もあるかもしれません。そうしてペニスの状態が安定してやっと、治療法を決定することになるということ。

「状態によって、治療法はさまざまです。勃起が可能で、湾曲もさほど気にならない程度であれば、そのまま経過観察ということになるかもしれません」というのが、ホーニグ博士の見解です。つまり、軽度であれば様子を見守るということです。

「そのような場合、湾曲した状態がそのまま変化しない可能性が85パーセント、少しずつ悪化する確率が5パーセント、快方に向かう確率が10パーセントと言ったところでしょう」と、テイラー博士は冷静に言いながらこう続けます。

「そして患者さんには、診察の6カ月後を目安に再診するようにしています。その先も経過を見守る必要がありそうなら、年間1度の通院で状態をチェックします。そこでぺロニー病がより深刻になり、性交に困難をきたしたり、うつ状態が引き起こされたりするようであれば、治療を進めなければなりません。その場合、以下の治療法の選択肢が考えられます:

注射治療

中等度のぺロニー病であれば、まずはコラゲナーゼ製剤の注射(※編集注:手術療法に比べ簡単で、神経血管損傷の発生抑制などの点においても有効とされている酵素注射療法<*¹¹>)を行い、問題の組織やプラークを分解していきます。

「この治療によって、湾曲が20度ほど改善するケースもあります。つまり、治療を始めるにあたり合理的な方法と言えます。が、より重度の湾曲が起きている場合には、他の治療法を試すべきかもしれません」と、テイラー博士は指摘します。

ペニスに注射するのを想像するだけで、怖(お)じ気づいてしまうかもしれませんが、プラークを分解しようと思うなら、瘢痕組織に薬を注入しなければなりません。これが唯一の方法になるからです。「もしこれが患者の健康状態に合うのであれば、効果を見込める治療法です」とホーニグ博士も述べています。

そしてこう言います、「これまで約7割の男性に、改善が見られました」とのこと。

形成手術

湾曲の外側に縫合手術を行い、ペニスをまっすぐに形成する方法です。「ペニスが右に曲がっている場合、左側を縫合して形を整えていきます」とホーニグ博士。「成功確率の高い手術ですが、ペニスが少しだけ短くなってしまうことになります…」

移植

湾曲がひどい場合にはペニスを切開し、湾曲の原因になっている瘢痕組織を除去し、そこに組織移植を行います。

「移植した組織により勃起時の血流を保持され、正常な機能を復元させる手術になります」とテイラー博士は言います。

陰茎インプラント

「これはぺロニー病の患者にも、ED(勃起不全)の患者にも有効な治療法です。陰茎インプラントによって、どちらの問題に対しても解決策となります」と、テイラー博士は述べています。

インプラント式の陰茎ポンプを陰茎海綿体内に移植し、形をまっすぐに整え、勃起可能な状態にする…これは“やや手のかかる手術”ということです。

🍌 🍌 🍌

治療法の選択肢は複数あるため、まずは専門医の診察を受けるのがおすすめです。「なによりも重要なことは、ぺロニー病に詳しい医師を見つけることです」とホーニグ博士。

アメリカであれば「北米性機能学会(Sexual Medicine Society of North America=SMSNA<*¹²>)」のウェブサイトに情報が掲載されています。「どのような治療が最善かを見極めるには、あらゆる治療法に通じた医師の手助けが不可欠です」と、ホーニグ博士は念を押します。


【脚注】

*1:Frederick L. Taylor

*2:『右曲がりのダンディー』 (著:末松正博)仕事を完璧にこなし、夜は「右曲がり」のアレであらゆる女性たちを悦ばせる…クールで二枚目の完璧なスーパービジネスマン 一条まさとの物語 Amazonで見る

*3:Peyronie's Disease フランスの医師フランソワ・ジゴ・ド・ラ・ペイロニー(1678生~1747没) の名前に由来1743年に王立アカデミー医学部で発表した論文で、男性器の繊維性硬結症について初めて詳細な記述。この病気が性交障害や心理的苦痛を引き起こすことを認識し、治療法の開発を提唱

*4:National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases また東邦大学医療センターの大森病院 リプロダクションセンター(泌尿器科)の当該ページには、「2001年イタリア男性647人の一般人調査では、7.1%の頻度、2001年ブラジル人の前立腺検診男性954人で3.7%の頻度、2004年アメリカ人の前立腺検診男性534人で8.9%、2006年インド人男性2130人の一般調査で2%の報告があり、2~8.9%の発生頻度となっている」と記載

*5:Stanton Honig

*6:Plaque(プラーク) 細菌やその死骸、代謝物などが絡み合ってできた粘着性の膜で、一般的には歯垢(Dental plaque)として知られているが、動脈硬化の原因となる血管壁のプラーク(Atherosclerotic plaque)や、ペロニー病の陰茎内部の瘢痕組織(Peyronie's plaque)などが存在する。

*7:National Library of Medicine

*8:MAYO CLINICサイト内の「Dupuytren contracture」ページを参照

*9:Cleveland Clinicサイト内の「Peyronie's Disease」ページを参照

*10:National Library of Medicineサイト内のレポート「Predictors of Depression in Men With Peyronie's Disease Seeking Evaluation」を参照

*11:Medline PLUSサイト内のレポート「Collagenase Clostridium histolyticum Injection」を参照

*12:SMSNA 日本なら「アスクドクターズ」でまずは相談し、「名医ログ」で探すという方法も

Translation / Kazuki Kimura
Edit / Ryutaro Hayashi
※この翻訳は抄訳です

From: Men's Health US