2014年10月のこと、FIFAバロンドール賞候補である23名のサッカー選手が選ばれました。が、しかし、サッカーで守備型のポジションであるGK(ゴールキーパー)とDF(ディフェンダー)で選ばれたのは、たったの4名だったのです。

 その選ばれた4名の選手とは、ドイツ代表DFのフィリップ・ラーム(バイエルン・ミュンヘン)、ドイツ代表GKのマヌエル・ノイヤー選手(バイエルン・ミュンヘン)、スペイン代表DFのセルヒオ・ラモス(レアル・マドリー)、そしてベルギー代表GKのティボー・クルトワ(チェルシー)でした。

 世界一のサッカー選手に授与されるバロンドール賞の歴史は1956年に始まり、その約50年におよぶ歴史のなかで守備的な選手が受賞したのはたった4回。過去の受賞者は、元ドイツ代表DFのフランツ・ベッケンバウアー、同じく元ドイツ代表DFのマテウス・ザマー、旧ソ連代表GKのレフ・ヤシン、そして元イタリア代表のDF、ファビオ・カンナバーロ、その4名だったのです。

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守備的な選手でありながら、見事バロンドールを2006年に受賞したカンナバーロ。同年に行われた2006FIFAワールドカップドイツ大会では、イタリア代表のキャプテンとしてチームをまとめあげ、優勝に貢献しました。

 過去の守備的選手の受賞のデータがあったため、ドイツ代表GKのマヌエル・ノイヤー(バイエルン・ミュンヘン)がアルゼンチン代表FWリオネル・メッシ(バルセロナ)とポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウド選手(レアル・マドリー)と並び、バロンドール受賞最終候補者の3名のなかに選ばれたことにかなり驚きました。

 これはもしかすると、FIFA(国際サッカー連盟)があらゆる得点シーンを阻止したノイアーを認めたということなのでしょうか?

 我々がいつもバロンドールについて気になっているのは、試合中における守備的な試合展開を過小評価しているのかという点になります。

 そこまで試合のバランスを無視してまでも、我々は攻撃的なサッカーやゴールシーンを好むものなのでしょうか?

 簡単に言うと、「はい。我々は攻撃的なサッカーやゴールシーンが好きなのです」と言えるのです。ゴールシーンを見ることは、多くの人々にとって最もエキサイトすることとなっているのです。その理由としては、サッカーはバスケットボールやラグビーなどの他のスポーツと違い、あまり得点が入りにくい競技のため、希少価値があるからなのでしょう。

 我々がサッカーに何を望むか…、おそらくそえがバロンドール賞にも反映されているのかもしれません。サッカーでは、大きく分けて2つのタイプがあります。創造性溢れるプレー、ゴール感覚、そしてそのゴールにより勝利をもたらす攻撃的な選手を重要視するチーム、そしてサポーターの見方。一方で、目の前のボールを跳ね返したり、相手選手を全力でブロックしたり、失点をゼロに抑える守備的な選手を重要視します。

 そんななか、これをお金で換算すると…。攻撃が勝利をもたらす近道なのでしょう、攻撃的選手の報酬や移籍金は、とても高くなりがちなのです。

 クリス・アンダーセン、デヴィッド・サリーが著者を務めた、サッカーについて詳しく書いた書籍「The Numbers Game: Why Everything You Know About Football Is Wrong」では、次のように分析しました。

彼らはイングランドリーグ「プレミア・リーグ」の試合を参考にして、ゴールと無失点を試合で得る勝ち点の価値について分析した結果、無失点で勝利した場合の得られる平均勝ち点は2.5と結果が出ました。勝利すると勝ち点が3ですから、かなり良い数字だと思われます。ゴールを決めた際の平均勝ち点はわずか1となっており、比較してみると大きな差が生まれていることは一目瞭然です。 

 話が戻りますが、それではなぜ我々はそこまでゴールシーンなどの攻撃にこだわるのでしょうか?

 部分的な理由としては、心理学的要素が入っているからと言えるとのことです。人間の脳は、ゴールシーンのような瞬間的な快感を好むものだということ。瞬間的な快感のないシーンにおいて、サポーターたちが総立ちして応援しているさまはあまり見ることがありませんものね。

 アンダーセンとサリーは「我々はGKやDF出身の監督が世界トップクラブを指揮することはあまりないと思っています。それはディフェンスが世間にあまり理解されていなく、高い価値が示されていないためです」とも述べています。

 この二人の著者の分析によれば、攻撃陣は愛されている。そして守備陣は、尊敬されている。との見解を述べていますが、そのマインドも少しづつ変化していくことでしょう。

Source / ESQUIRE UK
Translation / MEN'S +
※この翻訳は抄訳です。