ヨーロッパでAI(人工知能)を利用して進化論を研究する生物学者たちの間ではいま、「現代科学では未知の領域となる祖先が他にもいる」という説が話題となり、ざわつきを見せているようです。その想定されている祖先とは、「アジアを拠点とするネアンデルタール人とデニソワ人の混血種で、古代人類の亜種であったのではないか!?」と考えられています。 

デニソワ人は、ネアンデルタール人ほど有名ではありません。ですが、その名前の由来はロシア・アルタイ地方のデニソワ洞窟にて骨が発見されたことに由来します


 2008年に初めて発見されたその骨によると、彼らは約4万1千年前にそこに住んでいたとされており、この2種はおよそ74万4千年前に共通の祖先から分裂し、別々のグループとなったと推測されています。
 
 ネアンデルタール人はヨーロッパと西アジアの一部に定住していたようですが、デニソワ人は中央アジアとシベリアで発見されています。
 
 これらのグループは、互いに遺伝的に独立していました。さらにこの2種とも、現生人類と交雑(遺伝的組成の異なる2個体間の交配)している可能性もあると言います。80万年近く前の種の人口統計を調査する際、科学者たちはその複雑さに苦しんでいました。そこで助っ人が登場したわけです。それが、AIになります。

 CNA(Gentro Nacional de Análisis Genómico)の主任研究員であるスカー・ラオ博士は、次のように述べています。

 人類学のシュミレーション専門家によるプレスリリースに、「シュミレーションを行うときはいつでも、人類の歴史の中で可能性のある道を選択しています。シュミレーションの中でディープラーニング(深層学習)を重ね、祖先のパズルが合致する理由を観察することが可能になるのです」と。

 これらのシミュレーションでは、ネアンデルタール人とデニソワ人の祖先に焦点が当てられています。これは大きな仮定であり、実験的要素が強いと思われがちですが、実際のところアルゴリズムの積み重ねによって証拠は増えてきています。

 2018年8月に初めて、2種間の遺伝的雑種を示す化石が発表されました。それは 9万年前のデニソワ人の父親とネアンデルタール人の母親、そして一緒に暮らしていた女性のものでした。

 そうして多くの科学者たちは、「デニソワ人とネアンデルタール人は機会があったとき、交尾をしていた」という見解にうなずきを見せているのです。しかし、そこで唯一問題となる点は、「これまで発見されてきたデニソワ人とされる骨は、片手で数えられるほどだけです」と、シアトルにあるワシントン大学の集団遺伝学者のケリー・ハリス博士が「Nature」紙に述べていた件です。「集団で重なり合うメインサイトであった」と推測されるアルタイ山脈は、おそらく人口密度が低かったためでしょう。
 
 「われわれの理論は、近年デニソワで発見された混血の標本と一致します。が、まだ他の可能性を無視することもできない」と、AI研究に携わったエストニアの都市タルトゥにある大学、タルトゥ大学の研究者であるメイヤック・モンデール博士は言います。

まとめ

 今後、より多くの混血種が発見されれば、アルゴリズムの予測はより確証を得られるものとなるでしょう。

 人間の進化論は現在の一般論に落ち着くまでも多くの意見が飛び交い、とても複雑なものでした。それでもなお、人類の過去に秘められたものを解き明かすため、多くの考古学者や科学者たちが研究をすすめ、新種の可能性までも見つけ出しているのです。技術の進化により、これまでの通説が覆る可能性も高まっていくのでしょう。

  
Source: Center for Genomic Regulation
From POPULAR MECHANICS
Translation / Mirei Uchihori, Kaz Ogawa
※この翻訳は抄訳です。