• 陸軍士官学校の士官候補生は、「バイオ包帯」と呼ばれる身体の一部分をつなげるため、3Dプリントの仕組みを利用した研究を行っています。
  • 3Dプリントの仕組みを利用したいわゆる「バイオプリンター」は、通常の3Dプリンターが固体オブジェクトを印刷するのと同じ方法で、骨軟骨や血管などをプリント形成することを目指しています。
  • この研究はまだ初期段階にありますが、戦場で負傷した兵士に適用できる可能性があるとのこと。

 米陸軍の陸軍士官学校の士官候補生はバイオプリンターを利用して、ボディーパーツに関してプリントによって再生する可能性を模索しています。ボディーパーツは幹細胞を使用して立体的にプリントされます。そして身体に素早く適応し、プリントされた身体部分の拒絶を防ぐよう研究されています。現段階で作成が可能と想定されているパーツに、血管や半月板軟骨、およびその他小さなパーツが挙げられています。

 現在、士官候補生は5つのチーム(合計26人の士官候補生)に分かれ、3つのバイオプリントプロジェクトに取り組んでいます。2つのチームは、火傷および創傷(そうしょう)治療のためのバイオ包帯の開発に取り組んでいます。

 バイオ包帯とは、プリントされた皮膚および幹細胞と組み合わせて、創傷部での瘢痕化(はんこんか:火傷や潰瘍などが完治せずに、隆起・陥没、色素沈着などを伴う痕となって残ること)の可能性を少くし、迅速に治癒へと導く包帯のことです。これらは負傷した兵士の細胞を材料に使用し、医療チームがプリントするフローになっています。

 次のチームは、血液を運ぶ血管の作成に取り組んでいます。この血管プロジェクトは、血液を運ぶ器官のプリントにおける先駆けと言えます。さらにもう1つのチームは大腿骨と脛骨との関節、つまり膝の奥にある分厚い軟骨である半月板を開発しています。そして最後のチームは、プロジェクトの中でも最も難しく野心的な取り組みです。それは、人間の肝臓をプリントで形成する研究をしています。

 バイオプリンターは3Dプリンターと同じ原理で動作しますが、異なる媒介を使用してソリッドオブジェクトを構築していきます。主にはコラーゲンですが、人体に自然に存在するタンパク質でできたバイオインクもあります。さらには幹細胞を使用して、組織からの拒絶反応のないパーツづくりを目指しているのです。

 士官候補生が行っているこれらのほとんどは、臨床を伴わない純粋な研究です。半月板、肝臓、血管、そして人体の治癒プロセスを研究し、プリントしたいオブジェクトをどのように使用することができるのかを研究するために行われています。

 プロジェクトの期間が終了に近づくと、その士官候補生たちは半月板と肝臓の両方をプリントします。しかしながら、そこで形成されたパーツは、前述のように人体での使用は意図していないものになります。

 これらはすべて近い将来、または遠隔地での平時の事故や負傷した兵士に役立つ可能性があります。これが実現できるようになった場合には、駐屯する地にある応急医療処置所に設置さえたモバイルバイオプリンターによって、兵士たちは細胞とコラーゲンを組み合わせて形成されたバイオ包帯や軟骨で応急処置がなされることでしょう。

 さらにおそらくいつかは、血管や人間の肝臓などの血液を運ぶように複雑で繊細な身体の一部も形成することが可能となり、移植することもできるかもしれません…。

Source / POPULAR MECHANICS