何十年もの間、このアメリカで最も有名な極秘軍事基地――ネバダ州の「エリア51」には宇宙人(とそのテクノロジー)が存在し、その壁の向こう側でさまざまな研究がなされているという噂、そして、それに関する証拠(のようなもの)を取り巻く陰謀論的な嵐の渦中にいました。

これまで本やテレビ番組、さらには大規模なオンライン調査によって、不審者の侵入を警告する標識の向こう側を垣間見ようと試みられてきました。

実際、宇宙人が基地内に住んでいるわけではないようですが、そこで起こっていることは実に興味深いものがあります。


エリア51とは?

不毛のネバダ砂漠の真ん中にわかりづらい乾いた土煙舞う道があり、それが「エリア51」の正面ゲートへとつながっています。その境界には、チェーンリンク(金網)のフェンスとブームゲート(遮断機)、そして侵入者に対しての威圧的な標識があるだけ…。そんなアメリカでも有名な神話化された最高機密軍事基地は、もっと厳重な警備がなされているだろうと考える人もいるかもしれません。そのとおり、見た目以上に間違いなく彼らは監視しています。

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ゲートの向こう側では、あらゆる角度からカメラによって監視されています。遠くの丘の上には、暗い色の遮光フィルムが貼られた白いピックアップトラックが、下界の全てを覗き込んでいるのです。地元では、「フェンスを飛び越える全てのもの…砂漠のカメやジャックラビットですら監視している」とまことしやかに囁かれています。また、「間近の道路には、センサーが埋め込まれている」と主張する人もいます。

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エリア51に宇宙人はいるのか?

月面のセットはあるのか?

ネバダ州レイチェル(ラスベガスの北北西の約200km)に位置するアメリカ空軍ネリス試験訓練場内の一地区であり、「ホーミー空港とも呼ばれるこのエリア51の中で、実際に何が行われているかは何十年もの間、さまざまな憶測が飛び交っていました。もちろんその中には、「銀河系の訪問者がどこかに隠れている」という宇宙人分野の陰謀論もあります。

それを色濃く示す噂の1つが、1947年のロズウェル墜落です。それは身体の小さなミュータントたちが操縦したソ連の航空機によるもので、それが墜落した残骸がエリア51の敷地内に残っているという説になります。また中には、「アポロ11号による1969年の月面着陸は、アメリカ政府によってこのエリア51内のハンガー(格納庫)の1つで撮影した」と信じる者もいます。

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その全てが神話や伝説の領域でありますが、その中にも真実はあります。それは、エリア51が実在しているということ。そして今もなお、非常に活発に活動し続けている場所であるということです。そのフェンスの向こうにエイリアンや月面着陸の映画セットが存在するという証拠はいまだありませんが、国民および世界に対し秘密にすべき何かが行われているのは確かなのです。

「エリア51が禁断の地となっていること、それこそが人々の興味をそそるもの――何かあるのか?と知りたいと思わせるのです」と、航空宇宙史家で作家のピーター・マーリンは語っています。彼は30年以上にわたってエリア51の研究を行っています。そして、こう続けます。

「そしてそこでは、いまだ多くのことが行われていることは確かです」

伝説のはじまり

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1957年より運用開始された高高度偵察機「U-2」。

エリア 51の起源は、偵察機「U-2」の開発に直接関係しています。第二次世界大戦後、ソビエト連邦は自国と他の東欧圏に鉄のカーテンを下ろし、他の国々に対してほぼ情報遮断の状態をつくり出しました。1950年6月、旧ソビエト連邦は北朝鮮による韓国への侵攻を支援。そのときクレムリンは、積極的に影響力を拡大することを明らかになりました。それはアメリカにとって、日本の真珠湾攻撃からわずか10年のこと。ソ連の技術、意図、および奇襲攻撃の能力に懸念を抱きました。

1950年代初頭、アメリカ海軍とアメリカ空軍は、ソビエト上空を低空飛行で偵察するための航空機を派遣しましたが、撃墜される危険性が常にありました。そうして1954年11月、アイゼンハワー大統領は「U-2計画」と呼ばれる高高度偵察機の秘密の開発を承認します。

その最初の仕事は、訓練とテストのための遠隔かつ秘密の場所を見つけることであり、ネバダ州南部の砂漠地帯にあるグルーム湖という塩田にたどり着きます。そこは第二次世界大戦中、陸軍航空隊パイロットの空中砲撃訓練場として使われていた場所でした。

アメリカ政府が管理する地域番号「Public Land Survey System(PLSS)」によって、地図上では「エリア 51」呼ばれるこの地が、新しい最高機密の軍事基地として選ばれたのでした。U-2プロジェクトの主要エンジニアの一人であるケリー・ジョンソンことクラレンス・レオナルド・ジョンソンは、この辺境地で働くことに魅力を見い出してもらえるよう「パラダイス・ランチ」という地名をつけました。

神話の誕生

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そうして1955年7月にU-2のテストが始まり、すぐに未確認飛行物体の目撃報告が殺到し始めるようになりました。1998年に一部の機密解除された(その後、2013年にほぼ全文公開された)1992年のCIA報告書の詳細を読めば、その理由は容易に理解できるでしょう。

これらの目撃の多くは、U-2のように高高度で飛行する飛行機を見たことのない民間航空会社のパイロットによって報告されたものになります。現在の旅客機に関しては、一般に4万5000フィートまで上昇可能とされています。ですが、1950年代半ばは1〜2万フィートの高度で飛行していたのです。既知の軍用機は4万フィートにまで到達することはできましたが、それ以上の有人飛行は不可能だという説もありました。そんな中、6万フィート以上の高度で飛行していたU-2は、完全に異質の存在に見えたに違いありません。

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U.S. Air Force
U-2偵察機とロッキード社の航空機技術者ケリー・ジョンソン(左)、そして空軍パイロットからCIAのテストパイロットとなったフランシス・ゲイリー・パワーズ。そして1960年5月、パワーズの操縦するU-2はソ連スヴェルドロフスク上空でソ連の地対空ミサイルによって撃墜された。

もちろん空軍当局者は、これらの説明できない目撃報告の大部分がU-2のテストだと知っていましたが、彼らはこれらの詳細を一般に公表することができませんでした。そのため、「自然現象」や「高高度気象研究」がUFO目撃事件の代表的な説明となりました。1960年には、ゲイリー・パワーズがロシア上空でU-2を撃墜された際にも同様でした。

また、最近の2013年の報告で興味深いところは、エリア51の存在が明示をされていることです。1998年版は、U-2テストサイトの名前や場所に関する記述に大幅な塗りつぶしがありましたが、2013年版はその多くを明らかにしており、エリア51やグルーム湖(Groom Lake)の複数に言及し、さらには地域の地図まで掲載しています。

「これは地球人の技術です」

U-2の運用は1950年代後半に停止しましたが、他の最高機密の軍用機は引き続きネバダ砂漠のエリア51でテストを続けました。これまでに、A-12やバード・オブ・プレイ、F-117A、ノースロップ タシット・ブルーなどの多数のステルス機が開発・試験されてきました。さらに機密解除された文書からは、1970年代に極秘裏に入手したソビエト連邦のMiG(ミグ戦闘機)を研究する「ハブ・ドーナツ計画(Project Have Doughnut)」にエリア51が関与していたことも明らかになっています。

“これは地球人の技術です。
「宇宙人の技術だ」
と言う人たちがいるが、
本当のところ古き良き
アメリカの技術です”

「これは地球人の技術です。宇宙人の技術だと言う人たちがいるが、本当のところ古き良きアメリカの技術なのです」と、前出の航空宇宙史家で作家のマーリンは言います。

「ソ連のミグ機をエリア51上空に飛行させ、既存の戦闘機と交戦させることでその戦術を練っていました。そして、その開発力を阻害することはできないが、出し抜くはできることを学びました。

そして、その競争は今でも続いていますが、かつてのミグ17やミグ21に代わって、ミグ29やスホーイ27が見られます」

それらのフライトは今も継続しています。2017年9月にネバダ州において空軍中佐が飛行機事故で死亡し、ペンタゴンはすぐにその飛行機の正体を明らかにしませんでした。彼が操縦していたのは、おそらくアメリカが入手した外国製ジェット機であったようです。

それでもエイリアン陰謀論は、1989年に航空機エンジニアのボブ・ラザールがラスベガスのローカルニュースで、「自分はエイリアンを見たことがあり、基地で働いていたときにエイリアンの宇宙船のリバースエンジニアリングを手伝ったことがある」と証言したことでエイリアンの陰謀説は一挙に広まりました。多くの人々はこれをフィクションとして無視していますが、E.T.に関する騒ぎに憤慨している元エリア51のエンジニアやスタッフたちと長年話をしてきたマーリンもそのように考えています。

「素晴らしい飛行機をつくり上げた人たちの中には、怒っている人もいる」
とマーリンは繰り返し言います。「これは地球の技術です。人々はそれを『異星人がもたらした技術だ』と言いたいようですが、それは本当のところアメリカの素晴らしい技術なのですよ」と続けます。

真実はそこにある

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2016年7月20日、エリア51にて

現在でも、エリア51は現役の軍事基地として使用されています。Google Earthによると、建設や基地拡張が継続的に行われています。早朝になると、上下に動く不思議な光を見つけることができるでしょう。でも、それはUFOではありません。ラスベガスのマッカラン空港から基地までの移動には、「ジャネット」というコールサインで準秘密輸送航空会社が運航しています。

そんなわけで、アメリカで最も秘密主義的な軍事基地でいま何が起こっているのかは、確かなことはほとんど知られていません。マーリンによれば、改良されたステルス技術、高度な武器、電子戦システム、特に無人航空機の開発などが推測できるということ。

U-2を探求する歴史家であり、この問題に関するいくつかの書籍の著者であるクリス・ポコック(Chris Pocock)は、「現在基地では機密の航空機、よりエキゾチックな形式の無線通信、指向性エネルギー兵器、レーザーなどが開発中だと推測する」と「ポピュラー・メカニクス」に語っています。

以上、「エリア51」の伝説は単なる想像上のフィクションにすぎないかもしれません。ですがそれでもなお、チェーンリンクのフェンスの向こう側を人々が見入ってしまうことを止めることはできないでしょう。

「人というものは、何かが秘密や禁止されていればいるほど、その世界に足を踏み入れたくなるものです」とマーリンは言います。「それが何なのかを、本能的に知りたくなるものです」と…。


🛸 エリア51を探索する方法

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それが事実であれフィクションであれ、いずれにせよエイリアンは大きな観光資源でもあります。1996年にネバダ州は375号線を「Extraterrestrial Highway(地球外生命体ハイウェイ」と改名。その道路周辺には、エイリアン研究センターや人口約54人のレイチェル・タウンの「リトル・エイリイン(Little A’Le’Inn)」などの観光地が点在しています。

エリア 51の西側には、地球で唯一のエイリアンテーマの売春宿として宣伝されている「Alien Cathouse(エイリアン・キャットハウス)」があります。また、アプリゲーム「ジオキャッシング(※)」はこの地域に2000以上の隠されたジオキャッシュが隠された“メガトライアル”とされているため、その利用者たちもこの地への訪問に対して心惹かれているといわです。

そのうえで、実際の基地もあります。ほとんどの人は中に入ることはできませんが、好奇心旺盛な市民は実際にゲートの手前まで車で行くことができます。地元民が案内してくれますし、Dreamland Resort(ドリームランド・リゾート)のウェブサイトは地図、運転ルート、第一級の情報がたくさんある素晴らしいリソースです。 

しかし、エリア51へのトレッキングを計画する際には注意が必要です。砂漠ですから当然十分な水やスナック、天候に合わせた適切な服装が必要です。電話サービスやGPSはほとんど機能しないため、プリントアウトした地図または実際の地図を持参してください。ガソリンスタンドはほとんどないので、予備の燃料やタイヤを持っていくことが必要です。

また政府はあなたに、エリア51をのぞき見することを望んではいないことも覚えておきましょう。マーリンとポコックはふたりとも、ガードやセキュリティによって厳密に監視されたり、ときに脅されたりした(F-16の飛来も含めて…)経験もあることも聞いています。なので、いかなる状況でも不法侵入はしないでください。逮捕や高額な罰金が待っていますので。

※Geocaching=GPS/GNSSを利用した宝探しゲーム。似たようなシステムに「ポケモン GO」などがある。


この記事のオリジナルは2017年9月14日に公開されました。
※この記事は抄訳です


From: Popular Mechanics