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モロッコ旋風が止んだ夜

モロッコのチームカラーである真っ赤に染まるスタンド。選手を後押しする声援は地鳴りのように鳴り響き、相手選手を狙い撃ちするブーイングは鋭く重い。アラブ諸国との深い関係性から、モロッコ戦はモロッコ出身者以外も応援に駆けつけます。モロッコ旋風は大会を通して吹き荒れ、遂には準決勝のピッチに選手たちを運びました。

カタールで開かれているFIFAワールドカップ(W杯)。この日行われたのは、準決勝・フランス対モロッコ戦。神の子リオネル・メッシ率いるアルゼンチンが待つ決勝戦への切符を賭けた大一番です。しかし、強大なサポートをもってしても、フランスの牙城を崩すには至らず、試合はフランスが2-0でモロッコを押し切りました。

1失点を喫した後、モロッコはDFのアクラフ・ハキミ、MFのハキム・ツイエクのいる右サイドを中心に攻勢を仕掛け、得点の匂いも感じさせました。ところが後半20分、フランスのディディエ・デシャン監督がFWのマルクス・テュラムを投入し、左サイド(モロッコの右サイド)を活性化。そうしてモロッコの右サイドを、守備に押し込めることに成功します。ここでモロッコ同点の雰囲気は大きく萎み、この時点で勝負はある程度決したように見えました。すると後半34分に投入されたフランスのコロ・ムアニが、ファーストタッチで2-0と突き放すゴールを決めます。

盤石の選手のパフォーマンスと冴えわたる監督の采配。キリアン・エムバペをはじめとする個の力は圧倒的で、相手チームのミスを見逃さないしたたかさもあり、フランスの強さが際立った一戦に感じられました。王者死角なし。そう結論づけることもできそうな戦いぶりでした。

モロッコ旋風はここで潰(つい)え、フランスはメッシの待つ決勝戦へと駒を進めました。