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メッシの笑顔。

グループステージの全48試合が終了したFIFAワールドカップ(W杯)カタール大会。サウジアラビアや日本、韓国などが大番狂わせを演じるなど、波乱の展開となりました。アジア枠からは3チーム、アフリカからは2チーム、北中米カリブ海からは1チームが決勝トーナメントに進出。6大陸の国がベスト16に進出するのはW杯史上初です。

アジアやアフリカが躍進した裏には、開催国カタールの暑さや、例年とは異なる開催スケジュールによる有力選手のコンディション不良、サッカーの質自体の変容など、さまざまな要因が考えられています。とかくプレー全般で重視されているのが、“ハードワーク”です。例えば相手ボールになった瞬間に、高い位置からプレスを掛けてボール奪取をめざす戦術を採用するチームも多く見られます。

長年、そんな“ハードワーク”の対極にある存在と目されてきたのが、アルゼンチンのリオネル・メッシです。圧倒的な攻撃力を活かすためにも、前線での守備を免除されることが多く、「体力を温存することが勝利への近道」とされてきました。観る側もそれを承知の上で、相手ボールになってもほとんどプレスを掛けない(ときには走ることすらしない)メッシのスタイルに「メッシ、今日もピッチを散歩」などと、愛と期待を込めて話題にされることも珍しくありません。

ところが、大会14日目の対オーストラリア戦。そのメッシが、守備でも走りました。相手ボールとなった瞬間に猛然とプレスを掛けたのです。こんなことが話題に上ること自体がメッシの凄さの裏返しかもしれませんが、少なくともそのプレーには今大会に向けた彼の並々ならぬ思いがあふれ出ていたように見えました。

メッシの決定力の高さは今大会でも変わることなく、さらにプレーは円熟味を増しています。フリアン・アルバレスなどメッシ以外の選手の活躍も際立ち、チームからはまとまりも感じさせます。それもあってか、今大会のメッシは笑顔も多く、いつになく楽しそうにプレーしているようにも見えます。初戦こそ敗れはしましたが、徐々にギアを上げてきたアルゼンチン代表。次戦は準々決勝のオランダ戦です。W杯の歴史的に見ても、屈指の好ゲームが期待されてなりません。決戦は日本時間12月10日(土)です。