[目次]

▼ プロテインシェイクを飲むべきタイミングは?

▼ ワークアウト後に摂(と)るべきタンパク質の量は?

▼ 毎日のタンパク質の摂取量はどれくらいがベスト?

▼ タンパク質の摂取量を増やすためのコツ


現在ではアスリートばかりでなく、運動に日々接していない人々の間でも、タンパク質(プロテイン)という栄養素が何かと話題となっている今日この頃です。とは言え、それは決して無意味ではないことも皆さんもよくご存じのはずです。タンパク質と言えば健康的な基礎代謝をサポートし、筋肉増強に寄与する重要な栄養素です。ところでプロテイン(つまりタンパク質)を摂取する場合、運動の前か後、どちらが効果的なのでしょうか?

アメリカンフットボールのリーグNFLに所属するカンザスシティ・チーフスのスポーツ栄養士レスリー・ボンチ氏(R.D.N./M.P.H.*1)によれば、「プロテインの理想的な摂取方法について、特に決まりはありません」と言い切ります。ただし、「何よりも重要なのは一貫して摂取すること」と言います。もともと十分なタンパク質を摂取していない人であれば、いつ、どのように摂るかよりも、まずは不足を補うことを意識すべきということになります。特に、筋肉増強を目指しているのなら、これは必要不可欠なことのはず。

毎日決まった量のプロテインシェイクを1回(あるいは複数回)飲むなど、摂取量を最適化する方法もあります。ですが、プロテインシェイクをトレーニングの前に飲んでエネルギーレベルを高めるのが正解なのか? あるいは、トレーニング後に飲んで回復の助けとすべきなのか? そのことに関してはなんとも言えません。

プロテインシェイクを飲むべきタイミングは、トレーニングの前? それとも後?

プロテインシェイクを飲む男性
Nikolas_jkd//Getty Images

率直に言って、「必要な量のタンパク質を摂れてさえいれば、タイミングはいつでも良い」というのが現在の解答となります。「運動の前であっても後であっても、タンパク質の効果は等しく認めらる結果があります」と、メイヨークリニックで管理栄養士を務めるケイトリン・グワルトニー(*2)氏も言います。

確かに過去には、「運動後2時間以内にタンパク質を摂取すべき」と言われてきました。ですが、最近ではオランダのマースリヒト大学医療センターのJorn Trommelen博士らによる研究(*3)によって、「運動後数時間が経った後でも、筋肉の合成が継続する」という研究結果が導き出されています。

かつてはトレーニング後に筋肉が修復/回復するこの2時間以内という時間を、「ゴールデンタイム」と呼んでいました。これは「アナボリック・ウィンドウ」(あるいはメタボリック・ウィンドウ)と呼ばれてもいます。これをウォルトニー氏に言わせれば、「そのゴールデンタイムは、最大24時間まで継続する場合もある」ということなのです。つまり、「トレーニング後、すぐにタンパク質を摂らなければ」と切実に考える必要はないということになります。

かと言って、トレーニングの前にプロテインシェイクを飲むと満腹になり、ワークアウトのパフォーマンスの妨げになるかもしれません。ですが、運動前に適度の軽食を摂っておくことも大切です。手元にプロテインしかないという場合には、それを適度に摂取するのであれば特に問題ないでしょう。

「私はワークアウトの時間をカッコで括るように、その前後に少しずつプロテイン(タンパク質)を摂るという方法を推奨しています」と、ボンチ氏は言います。運動を開始する1時間ほど前にプロテインシェイクやプロテインバーを少し摂取し(そこから消化が始まります)、運動を終えた後に残りを摂取するということになります。

シェイクの場合には、バナナなど炭水化物を多く含む果物類を混ぜ、牛乳か豆乳(オーツミルクではありません)を使ってタンパク質を吸収しやすくすると良いでしょう。もっとタンパク質を強化したい場合には、ギリシャヨーグルトやピーナツバターを加えるのもおすすめです。


※運動時における栄養摂取のタイミングは、過去数十年にわたって多くの研究や議論の対象となっている問題です。しかし残念ながら、科学的知見の現状はいずれの方向においても明確な結論として支持はされていません。

というのも、これらの研究の大部分は、比較的トレーニングに習熟していない個人(典型的には高齢男性)を対象としていたり、他のいくつかの研究では、研究期間中におけるタンパク質の総摂取量が一致していなかったり…。さらに全ての研究において、異なるレジスタンストレーニングプロトコルを用いていて、かつ体組成評価方法もそれぞれ異なっていたりしているのが現状だからです。

ゆえに以上のことから、トレーニング後の栄養素の摂取タイミングに関する確固たる結論は、厳密な科学的証拠がまとまったものというよりも、純粋に意見や経験に基づいたものと判断すべきこととなります。「信じるも信じないも、あなた次第」とも言えることを忘れずに。


ワークアウト後に摂るべきタンパク質の量は?

ワークアウト後の食事
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運動の強度によって異なりますが、「一般的にはワークアウト後に20~30グラムのタンパク質を摂取してから、終日コンスタントに撮り続けることが推奨されている」と、ボンチ氏は言います。

運動後のタンパク質の摂取量は、特に上限はありません。ですが、腎臓への過度の負担を避けるためには、一度に過剰摂取しないほうがいいでしょう。「3時間ごとに分けて摂取するなど、小分けにするのが理想的だ」とウォルトニー氏は言います。

「ワークアウト後ということであれば、タンパク質だけでなく、炭水化物もまた(体内のエネルギーの蓄えとなる)貯蔵グリコーゲン量を補うために重要です。筋肉の損傷を減らすことにもつながりますので」と、ウォルトニー氏。

毎日のタンパク質の摂取量はどれくらいがベスト?

タンパク質食事
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求められるタンパク質の量は、目指す体形、年齢、活動レベルによって異なります。食生活のガイドラインでは、「体重1ポンド(約453グラム)あたり0.36グラムのタンパク質を摂取すべき」とされていますが、これは生きていくために最低限必要な量であり、筋肉増強を目指す人にとっては不十分です。身体を鍛えたいのでれば、体重1ポンドあたり0.8~1グラムを目安に摂取するのが良いでしょう。

※ちなみに日本…厚生労働省が発表した「日本人の食事摂取基準(2020年版)」(*4)では、「男性の場合、体重1キログラムあたり0.9グラム。女性の場合、体重1キログラムあたり0.8グラム」となっています。補足としてアスリートの場合は「体重1キログラムあたり1.2~2.0グラム程度」、高齢者の場合は「体重1キログラムあたり1.0~1.2グラム程度が必要」、妊婦・授乳婦の場合は「妊娠中は体重1キログラムあたり1.0グラム、授乳中は1.1グラム程度」が必要とされています。

「例えば、体重180ポンド(約82キロ)の男性が筋肉増強を目指すのであれば、一日を通じて154グラムのタンパク質量を目指すべきだ」とボンチ氏は言います。この数字を多いと感じる人もいるかもしれませんが、3度の食事でそれぞれ40グラム、2度の間食(あるいはシェイク)で20グラムのタンパク質を摂れば良いと考えれば、無理な量ではないでしょう。「朝食と間食に意識を向けてタンパク質の摂取に努めることで、目標を達成しやすくなります」と言うのが、ボンチ氏からのアドバイスです。

タンパク質の摂取量を増やすためのコツ

「準備を怠らないこと!」と、ウォルトニー氏は断言します。チキンサラダやゆで卵など、タンパク質を豊富に含む食品をあらかじめ用意し、さらにプロテインバーやプロテインドリンクの備蓄を切らさないように心がけるといいでしょう(ただし、これはあくまでもタンパク質量の観点から。健康上、添加物など気にしている人はご自身で内容物の確認をしてください)。

もちろん、植物性タンパク質も忘れてはいけません。「そもそも私たちの多くが野菜不足に陥りがちです。なので積極的に、植物を食べるように意識すべきです」と、ボンチ氏は警鐘を鳴らします。例えばマカロニ&チーズにペースト状にした大豆などを加えるとタンパク質の量も増え、またクリーミーな舌触りも増すのでおすすめです。

「あらゆる食事にタンパク質を取り入れていきましょう」と、ボンチ氏は言います。スパゲティのソース、フムス(*5)、ワカモレなど毎日の食事に、ノンフレーバーのプロテインパウダーを混ぜてタンパク質を増量するという方法もあります。ディップをつくる際には、サワークリームの代わりにギリシャヨーグルトを使うといいでしょう。サワークリーム3オンス(約85グラム)に含まれるタンパク質は1.4グラムですが、ギリシャヨーグルトなら9グラムですので。

ここで忘れてならないことは、必要な栄養素はタンパク質だけではないということ。「お皿を見回して、何か不足していないかを常に確認するようにしてください。タンパク質の他にも、重要な物があるのですから」と、ボンチ氏は指摘します。つまり、そこで注目すべきは野菜と穀類です。身体機能と活動のためのエネルギーを維持するためには、炭水化物と脂質も不可欠です。

「炭水化物は活動のための重要なエネルギー源です」とボンチ氏は言いと、こう続けます。

「炭水化物が不足してしまうと、運動中の燃料として筋肉が消費されることになります。それでは本末転倒、あなたが目指すゴールにたどり着くこともできず、むしろ遠ざかっていくことになるでしょう」


【脚注】

*1:Active Eating Advice:Leslie J. Bonci , MPH, RD, CSSD, LDN

*2:CAITLIN GWALTNEY

*3:National Library of Medicien:The anabolic response to protein ingestion during recovery from exercise has no upper limit in magnitude and duration in vivo in humans

*4:「日本人の食事摂取基準(2020年版)」

*5:フムスは中東諸国や地中海地域で広く食べられている伝統的な家庭料理。ひよこ豆からつくられるペーストで、前菜として食べられたり、野菜や肉にディップして食べられたりする。

Translation / Kazuki Kimura
Edit / Ryutaro Hayashi
※この翻訳は抄訳です

From: Men's Health US