サッカー界のトップアスリートからビジネスアスリートとして頂点を目指す、サッカー元日本代表(U-23代表:2002-2004、A代表:2006-2008)であり元浦和レッドダイヤモンズ(2000-2015所属のバンディエラ)所属の鈴木啓太氏へのインタビュー第2回目。

 2月に公開したインタビュー【第1話】「新商品への想い」の続編として今回の【第2話】では、鈴木氏のビジネスマインドのもとになったものは何なのか? をお訊きしました。


スポーツ界でもビジネス界でも
「勝ちたい」というマインドは同じ
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写真提供:鈴木啓太
地元の「清水第八スポーツクラブ」に所属していた小学生時代の鈴木啓太氏(写真向かって左)。

編集部:サッカー界でトップアスリートとして活躍したからこそ、気づくものがあって、それを現在のビジネスに落とし込んでいるのだと思うのですが、幼稚園生から30代までサッカーをやってきて、学び得たこととは何ですか?

鈴木啓太氏(以降、鈴木氏):サッカーを生業としていた時期を卒表し、今こうしてビジネスの現場に立っていますが、最初はサッカーのキャリアとビジネスでのキャリアは全く違うものに感じていました。そこで新たな気持ちで、「ゼロからスタートだ!」って思いで当初はスタートしたのですが、それからビジネスにおいてさまざまな経験していく中で、ある時期、「あれ? これって全部サッカーでやったことと一緒だな」って思ったんです。そうして会社を運営して早6年という月日が経ちますが、今では「サッカーを通して学んだことは、すべてに通じるんだ」と確信しています。

 当初は単に、そこで使われている「言語」が違うだけということに気づかなかったんですね。それに気づいてないので、その「言語」を変換すればいいというアイデアも浮かばなかった…。なので、当時は頭の中を白紙にして、日々学びながら目標に向かって邁進していました。

 スポーツ全般、特に球技の分野で言えることですが…。例えばサッカーならポジションがあって、そのポジションにふさわしい選手を監督が決め、そしてその各選手のパフォーマンスとコンディションを把握しながらプランを立案します。そうしてその都度、微調整を加えながらそのシーズンの頂点に立つことを目指して日々をおくっています。

 「ただ目の前の試合に勝てばいいか?」というと、そうではありません。そのチームにはさまざまな人がいます。試合に出場できる選手も、出場できない選手、ベンチにすら入れない選手もいるでしょう。また、裏方に徹している多くのスタッフもいます。さらには、ステークホルダーとしてのスポンサーも存在も重要です。ファン・サポーターの皆さんこそ、最も大切にすべきステークホルダーでもあります。サッカーで言えば、チームが各街にあることを考えれば、その地域の住人の皆さんすべてがステークホルダーだと考えるべきかもしれません。そう考えると、それこそ「本当にビジネスと一緒だな」と思うんですね。

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Yohei Fujii
「サッカーで学んだことは
ビジネスの世界でも活かせる」
という気づきで加速する

鈴木氏:例えるなら、監督と選手の関係は上司と部下の関係ですし、あるいは同じ目標を持つ仲間という考え方でもいいでしょう。そういったスポーツ界における、それぞれの関係性のひとつひとつは、ビジネスにそのまま置き換えることができたんです。その瞬間、「全部同じなんだ」と自分自身で納得。そこから、新たなパワーが湧いてきたのを覚えています…。

 そうして「サッカーで学んだことはそのまま、ビジネスでも活かせる」と気づいた瞬間、僕のビジネスパフォーマンスもアップしたと言って過言ではないですね。最初はビジネス界を「新たなフィールド」と感じ、アウェイ感に圧迫されて疑心暗鬼になっていたのかもしれませんが、以来、もはやビジネス界もホームススタジアムでのプレーのように思えるようになり、ベストパフォーマンスが発揮できるようになったと言えるかもしれません。

 あとは、“ビジネス”という違う競技をやっていく上でのスキルなど、新たな情報をインプットすればいい…。そこで得た「言語」を、自分がすでに体得しているものへと変換することが一番のポイントだと思いました。そうして身体に馴染ませたビジネスのスタイルを、今度は私たちが対面するそれぞれのクライアントの方々の環境に合わせ、さらに変換しておとどけすればいい…ということに気づくことができたのです。

 このことは、実に大きな発見でした。以来、ビジネスはうまく進むようになったと言あっていいでしょう。

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編集部:前回のインタビューで、アスリートの腸内環境の解析を手掛けるスタートアップ企業AuBを起業したきっかけは「母の教え」とうかがいました。そうして現在、アスリートばかりでなく、ビジネスというフィールドで活躍する皆さんも対象に、生活する上の「コンディション」を整えることを目指しているのでしょうか?

鈴木氏:はい、そのとおりです。

 前回のインタビューでも話しているかもしれませんが、僕自身そんなに能力が高い選手はなかったので、母親がすごく僕に対して色々なことをしてくれいたんですね。発酵食もそうですし。やれることは全てやってくれていたんですよ。

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写真提供:鈴木啓太
お菓子も自ら手づくりで、子どもの栄養補給に細心の注意をはらってくれていた母の行動を目の当りにしていた鈴木氏。そんな母とサッカーから学んだことを活用し、現在のビジネスに邁進する鈴木氏でした。

鈴木氏:僕自身、身体が大きかったわけでもなかったので、母は単純に最大限の情報を集めて、親として子供がどんなことでも吸収できるような身体づくりに誠心誠意傾けてくれました。特にコンディショニングがすごく大事だなって思い始めたのは、中学生ぐらいのときでしたね。自分からプロテインを摂るようになったり、「プルーンも食べたほうがいいかな?」とか自分で考えたり、鉄分やカルシウムといったミネラルが豊富な食べ物を能動的に摂るようになっていました。

 そんな母のおかげで、スキルが発揮できるコンディションを得ることができたので、私もサッカーで実績が残せるようになります。すると、それが自分の身体で覚えた成功事例となったというわけです。なので、現在はそこで身体で覚えた意識と知識をフルに活用することが、現在のビジネスの原動力になっているという感じですね。

 中学時代には、スポーツ時の体内エネルギー源の中で最も重要な、筋肉と肝臓に貯蔵されるグリコーゲンの重要性も知り、前もってそのグリコーゲンを十分に蓄えておく食事方法の「グリコーゲンローディング」に心がけていました。こうして徐々にですが、コンディショニングの大切さを学んで、それをチームメイトにもすすめるようにしていましたね。これに関しては中学3年生のときに、新たにサッカー部の顧問になってくれた若手の先生に教えてもらったことです。その先生は順天堂大学でスポーツ科学を学んでいた方で、それまでの監督はいわゆる「練習中に水を飲むな!」と言っていた世代で、厳しくすることも練習のうちだったんです。中学1年生までは、そんな「水飲むな」世代でした。ですが2年生になったときには、なんとなくゆるくなって、3年生からスポーツを科学的に考える世代になったというハザマの世代かもしれません。

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写真提供:鈴木啓太
東海大一中(現在の東海大学付属静岡翔洋中学校)時代の鈴木啓太氏。キャプテンとして、全国中学校サッカー大会優勝の原動力となりました。

編集部:なるほど、お母さまの日常的な栄養指導と、新たに加わった科学的アプローチの知識を持つ先生との出会いで、スポーツのスキルアップには栄養学をともなったコンディショニングが大切だということを確信したというわけですね。そうして浦和レッズでプロとなり、日本代表の主力選手にまでなったわけですが、そんな中でいくつか体調を崩されたこともあったかと思いますが、そこで学んだことはありますか?

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鈴木氏:大きく体調を崩したのは、2008年ですね。2007年にクラブワールドカップが終わって、ほとんど休まなかったんですよ。確か2007年の一年間で出場した試合数は、合計60試合を超えていたと思います。1週間だけ休んでから、自主トレをするために海外に行きます。そして2月にはワールドカップの三次予選があって、その後、浦和レッズに合流する…という流れだったのですが、そのときにはもう疲労が回復しきれてなかったのだと思うのですが、扁桃炎になってしまって…。それから復帰まで、4カ月かかってしまいました。

 そのときに何を学んだかというと、「人は回復するためには十分は時間をとる必要がある」ということです。そのときに“コンディショニング”だけではく、故障などした際の“リカバリー”の大切さを痛感したんです。「休むことも練習」だと、当時は知っていたつもりなのですが、実際には行動できていなったわけですね。このような大きな問題にぶつからない限り、「休むことも練習」という本当の意味を知ることができませんでした。これは大きな学びでした

 自分のフィーリングだけに頼ったトレーニング方法の間違いを知ったわけです。気力だけで前へ進もうとするスポーツは過去にすべきだと…。データに基づき、見える化した上で計画的にトレーニングを重ね、コンディションもコントロールできてこそトップアスリートの条件であることを痛感しました。もちろんそこに、疲労や故障からのリカバリー(回復)のためのケアに関しても同等に実践しなければならないということを、身を持って学んだのです。早く回復できるよう願うのではなく、それだけ身体を酷使したなら、それだけ回復させる時間もきちんと取らなくてはならない、そして、それを効率よく回復させるためのケアも怠ってはならないということを…。

 「まだ自分はできる」といった過信、「このくらい我慢できる。練習さぼったら、他の仲間に抜かれる」といった根性論的行動を私は自然と取っていたんだと反省しました。その当時もっと早く、科学的に検査を重ね、専門医の診断を仰いでおけば結果も違ってきたかな…と思うんですね。

第3回へつづく…


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Yohei Fujii

鈴木啓太
AuB株式会社 代表取締役

元プロサッカー選手。東海大翔洋高校卒業と同時に、Jリーグ浦和レッドダイヤモンズに入団。2015シーズンで引退し、その後はサッカーの普及に関わるとともに、自身の経験から腸内細菌の可能性に着目し、AuBを設立。「すべての人をベストコンディションに。」を目標に掲げ、アスリートの腸内細菌の研究成果よってヘルスケア、フードテック事業を行う。第1弾の商品はサプリメント「AuB BASE」は、累計出荷個数1万個を突破。さらに2021年1月には第2弾となる商品はプロテイン「AuB MAKE」を発売。腸内環境改善を目指した上で身体づくりをサポートするプロテインはこれまでなかったことで、絶大な注目を浴びている。

AuB公式サイト