体幹トレーニングの基本メニューのひとつ「プランク」をするのが大好き、というトレーニーは少ないかもしれません。効果が高いトレーニングとは言え、同じ姿勢でずっと時間が経つのを待っていなければならないのですから。ウォールシット(いわゆる「空気椅子」)についても、同様なことが言えるでしょう。
ところが最新の科学研究 *1によれば、「どちらの筋トレ種目も日々の健康に重要な変化をもたらす」という結果が導き出せたということです。
血圧を下げるのに効果的な運動方法に関して、カンタベリー・クライスト・チャーチ大学とレスター大学の研究チームによる比較実験が行なわれました。その結果、「アイソメトリックトレーニング(等尺性運動)」には、政府の運動ガイドラインよりもかなり高い効果があることが判明したそうです。
アイソメトリックトレーニング(等尺性運動)とは何か?
「アイソメトリックトレーニング」は、別名“静的トレーニング”とも呼ばれています。つまり身体を動かさず、一定のポジションをキープして負荷をかけるトレーニングのこと。筋肉を伸縮させることなく、力だけを加える運動です。
言い換えるとすれば、エキセントリック収縮(eccentric contraction/伸張性収縮=筋を伸ばしながら力を発生させる運動)もコンセントリック収縮(concentric contraction/短縮性筋収縮=筋肉を収縮させながら力を発生させる運動)も行わず、ひたすら筋肉に負荷をかけるのが、このトレーニングの特徴になります。
アイソメトリックトレーニングの種類・例
下記、5種目が代表的な例です。
- プランク…うつ伏せの状態で前腕、肘、つま先を地面につき、その姿勢をキープする体幹トレーニング関連記事:正しい「プランク」のやり方と時間
- ウォールシット…壁を使った空気椅子
- サイドプランク…肘をついて横向きになる体勢をキープし、脇腹に負荷を加えながらお腹周りの筋肉を鍛えることのできる体験トレーニング関連記事:腹斜筋を強化する「サイドプランク」3種目
- ロースクワット
- グルートブリッジ…臀筋(お尻)を鍛えるだけではなく股関節の蝶番のような動き(ヒップヒンジ)をするトレーニング種目関連記事:殿筋(でんきん)を効果的に鍛えるトレーニング
アイソメトリックトレーニングと血圧の関係
収縮期血圧(=心臓がぎゅっと収縮して血液を送り出すときの血圧)を下げることは、脳卒中や心不全といった心血管系疾患の発症リスクを低下させることにつながる可能性があります。
例えば、現在の英国政府およびNHS(健康保険サービス)のガイドラインによると、成人は毎週、少なくとも150分の中強度の有酸素運動を行うべきだとされています。しかし高強度インターバルトレーニング(HIIT)やアイソメトリックトレーニングといった比較的歴史の新しいトレーニング種目については、まだほとんど言及がありません。
そのような状況も、すぐに様変わりすることになるかもしれません。
1万5827人の被験者を対象にした270種の無作為化比較対照試験(=研究の対象者を2つ以上のグループに無作為/ランダムに分け、治療法などの効果を検証すること。効果を公平に比較できるので、信頼性が高い試験とされる。ラムダム化比較試験とも)で、安静時血圧に対するさまざまな運動の効果を比較した結果が、英国のスポーツ医学の専門誌『ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・スポーツ・メディシン』に掲載されています。
あらゆる運動が、安静時の収縮血圧と拡張期血圧の低下に有効であることが証明される結果となりましたが、なかでも高い効果を示したのがアイソメトリックトレーニングでした。
「運動筋に血流を供給する血管が、筋肉の静的収縮により圧迫されることで血圧の低下がもたらされる可能性がある」というのが、カンタベリー・クライスト・チャーチ大学の心臓血管生理医学の研究リーダーであり、今回の論文の上席著者であるジェイミー・オドリスコール氏の考えです。
アイソメトリックトレーニングの最中は筋肉への血流の低下に伴って、酸素供給も減少するとのこと。その後、筋肉が弛緩(しかん)することで血流が大きく増加し、循環調整が改善されるという見解です。
アイソメトリックトレーニング ── 言うは易し行うが難し?
「2分間のウォールシットを間に、2分間の休憩を挟みながら4回、それを週3回の頻度で、他のトレーニングに組み込むのが好ましい」と、オドリスコール氏は推奨しています。ただしウォールシットやプランクは、意外と難易度の高いトレーニングであることを予め認識しておくべきでしょう。
日頃から運動習慣のない人、怪我を抱えている人、肥満傾向のある人、高齢の人などにとっては、アイソメトリックトレーニングは負荷が大きすぎるかもしれず、苦痛が勝れるようではむしろ逆効果となってしまう可能性もあります。トレーニングの理想とは、前向きに取り組める、親しみやすいものであること。そうでなければ、継続することは困難だからです。
アイソメトリックトレーニングの質を高めたいという人は、『プランク5種』の効果的なやり方を解説していますので、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか?
Source / Men’s Health UK
Translation / Kazuki Kimura
※この翻訳は抄訳です。