※注意:写真は、「ハエトリグモ(クモの眼は左右4対、計8個あるところ、このハエトリグモの場合は中側眼が退化的で機能しておらず、実質6個の眼となっています。そのうち正面の2個の眼が大きく愛らしい、一般に体長 0.2~2cmとなる小型のクモ)」ですが、この研究で使用した同種ではありません。
 
 
 科学者たちは、「一般的に哺乳類というものは毛髪を有し、子供を産み、ミルクを生産する動物である」と定義しています。至ってシンプルな定義ですが、自然というのはシンプルな定義に逆らう事が非常に長けているのです。

 ご存じの方も多いと思いますが、例えばカモノハシ…この生き物は哺乳類であるのに、卵を産みます。また逆に、非哺乳類動物でありながら、その子孫のためにミルクを生産している生き物もいるというわけです。しかも…。

 そして今回、中国の研究者たちのあるグループは、「クモもミルクを生産している…」ということが研究で明らかにあったと発表しました。そして、その子孫たちは驚くほどに長い間、そのミルクを摂取し続けている事実も発表し、そのミルクらしきものは、とても栄養価が高いとものであることも説明しています。

 

 まず、中国の研究者たちは「このクモが、子孫たちをどのように世話をしているのか?」という探究心が膨らみ、ハエトリグモの一種を研究し続けてきたそうなのです。

 そうして継続的に観察する目的のため、研究室内に母親クモと子孫たちの巣をつくりました。そして驚いたことにそのクモの子孫たちは、巣の中に1カ月以上も居続けていたことがわかったそうなのです。これはクモにとっては、非常に長い期間と言えるのです。

 …というわけで、2018年11月30日付けの学術誌『サイエンス』にその論文が掲載されたわけです。

 それによれば、アジアの熱帯に広く生息しているクモの中には、子どもに母乳を与える種が存在する…と発表。「Toxeus magnus」というハエトリグモの1種は、自分の体から分泌される液体を子グモに与えていたということなのです。

 より詳細な調査を重ねた結果、研究者たちは母親クモが何らかの物質を産み出し、それを巣の床に分泌していることを確認。子孫たちは、その物質を摂取しているように見え、さらに約1週間後には、母親クモに直接触りながら摂取し始めたそうなのです。

 こうして中国科学院の保全生物学者の権 鋭昌氏らは、この液体を調べたところ…糖質、脂質、そして牛乳の4倍近くのタンパク質が含まれていて、「ミルク」と呼ぶにふさわしいものだった…ということ。その物質は「本質的にはミルクである」ということがわかったそうです。

 そう、少なくともクモにとっては、実に美味しいミルクだったようなのです。

 クモの子孫たちは一般的に約20日間過ぎれば、巣を離れて自分たちで生きていけるようになるものです。ですが、その研究室の子孫たちは巣の中で約38日もの間、「クモ牛乳」を飲みながら生活していたそうなのです。

 この種族だけが唯一、「授乳をするクモなのか?」、あるいは科学者たちが思っていたよりも「この行動は普通なのか?」…実際には、まだまだ誰もわかっていません。

 しかし地球には、100万種以上の無脊椎動物が生息しているわけです。自らの子孫を繁栄させるために、ミルクを生産する種がもっと発見されたとしても驚くべきことではありませんね。

 動物界が提示する驚くべきダイバーシティーに対し、我々は哺乳類のエキスパートとして、さまざまな方向からこの素晴しい習性に関して、さらなる研究を重ねていく必要があるかもしれません。
 
 そこに不安な未来を救う、なんらかのヒントもありそうな気がしますので…。
 




Source: Science
From Popular Mechanics
Translation / Kazuhiro Uchida
※この翻訳は抄訳です。