「Meet people where they are.(つながりをつくるなら、人々が集まる場所で)」というフレーズがあります。これはもともとは、社会福祉の世界で使われ始めたフレーズになりますが、今ではあらゆる業界で使われており、特に政治家の間では一般的になっています。

 政治家にとってこの考えは、人々に自分を見つけてもらうのではなく、人々が集まる場所へ自ら出向き、メッセージを共有することで有権者基盤の強化を目指すというものです。

 そんなわけで、デンマークのヨアキム・B・オルセン氏という政治家は、この考えを「徹底的」とも言えるほどの姿勢で体現しました。

 というのも彼は、自らの選挙広告を(現状、YouTubeに次ぐ世界第2位の動画共有サイトとも言われている)「Pornhub(ポルノハブ)」のサイト上に出広しているのです。そう、「ポルノハブ」は世界最大のポルノサイトでもあります。時として無料ポルノ動画配信サイトは、このようにして収入を得ているということも垣間見れたことにもなります…。
 
 CNNによれば、かつてのオリンピック砲丸投げメダリストであるオルセン氏は、2011年に中道右派の自由同盟から出馬して、デンマークの国家議員に選ばれたと言っています。そして、そんな彼の再選広告が、最近「ポルノハブ」上に登場したのです。

 「ヨッケに投票しよう(ヨッケはヨアキムのデンマーク語のニックネームです)」というこの広告には多くの人々も、「これは実際に、この政治家が出広したものなのか?」という疑問を抱いたはずです。これに対しオルセン氏は、自らのフェイスブックページ上で同サイトへの出広を認め、デンマーク語で「はい、『ポルノハブ』にいるのは私です」と投稿しています。 
 
 オルセン氏によれば、「今回の広告に、何らかの深い意図はない」と言い、「単に有権者たちを笑わせたかっただけだ」と付け加えて発言しています。「選挙運動は真剣なものです...しかし、いくらかのユーモアがあってもいいはずです」と、彼はデンマークの新聞に語っていました。 
 
 実際、「ポルノハブ」への膨大なトラフィックを考慮すれば、この試みは堅実なものです。デンマークは、「ポルノハブ」へのトラフィックが世界で28番目に多い国です。有権者に好印象を与えたいというのなら、ポルノサイト上にハンサムな顔をさらし、人々が最も「敏感な」ときにアプローチしてみるのも1つの手かもしれません…。

 結局、人生で重要なことは呼吸した回数ではありません。「絶頂に達しようとしているときに、政治家に投票を求められる」と言ったありえない経験も必要ではないでしょうか?

 一方米国では、12を超える州で「ポルノは公衆衛生上の危機をもたらす」という物議を醸す決議が採択されました。つまり州政府は、研究が不十分にもかかわらず、「ポルノに潜在的な健康上のリスクがある」と公然と指摘しているということです。この問題について検討している州の1つに、テキサス州があります。

 共和党のテッド・クルーズ上院議員が選出された州ですが、ポルノについて語るうえで、彼ほどふさわしい人物はいないかもしれません。なにせツイッター上で、ポルノ動画を「いいね」していた議員ですから…。

 今回、意外な場所に広告を打ったオルセン氏ですが、この戦略は決して間違っていることではありません。 しかしながら国民たちは、必ずしも彼に投票するわけではありませんので、選挙キャンペーンの結果が気になるところです。 

 

 
 

From Esquire US 
Translation / Wataru Nakamura 
※この翻訳は抄訳です。