近年、サメによる攻撃は増加の傾向にあり、しかし、その原因は明らかになっていません。いま私たちが知っている明らかな情報は、「攻撃が増加している」ということだけです。

 この恐ろしい傾向を確認する学者の1人、オーストラリア・ボンド大学ダリル・マクフィー(Daryl McPhee)教授です。彼はサメの中でも最も危険な2つの種であるホオジロザメ(別名:白い死神)とイタチザメの研究を行っています。マクフィー教授によると、1982年から今日まで、その攻撃数は約3倍にまで増加していると言います。

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 一体なにが起こっているのでしょうか?

 2020年、オーストラリアでは20回のサメによる攻撃と8回のサメによる攻撃により命を落としたという報告が上がっています。ほぼ100年の間、このような数値は見られていません。さらに気になる点は、これまで攻撃がなかった場所でも、それが起こっているということです。最近では、西オーストラリアのケーブルビーチが例にあげられます。

 しかし、増加の理由を解明することは非常に困難でもあります。サメの習慣に変化があったのかもしれませんし、これは動物実験では明らかにすることができません。では、サメの移動の変化が原因である可能性はあるのでしょうか? これに関する科学的研究がその可能性を示唆しているような文献は、今のところ報告されていません。

 では、世界中でサメの攻撃が増加している原因は、一体何だと言うのでしょうか。

ホオジロザメ
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 最も可能性の高い理由の1つとして考えられるのは、海にいる人間の数が増えたということです。実際、世界の人口は増加しており、行楽客の人口もさらに増加しています。

 考えられる説はこの通りです。泳ぐ人、ビーチに頻繁に行く人が増えたことで、これらの狂暴な海洋捕食者に襲われるリスクにさらされる人が増えたとうことです。しかしこれは、攻撃と死亡の増加を説明するのに十分な理由とは言えません。

 もう1つ考えられる理由は、天候です。既知のとおり、地球温暖化の影響で気候は年々大きく変化しています。陸と海の両方で気温が変化し、これがいくつかのサメの狩猟習慣を変えてしまった可能性もあります。または、地球温暖化が起こったために、ホオジロザメやイタチザメの食糧需要が変わった可能性も考えられます。

 この天候の変化という線をたどると、降雨量が変化するにつれて、オオメジロザメの攻撃と狩猟の頻度が変化することを示した研究があります。オオメジロザメも人間を襲う可能性が高いサメの一種にカウントされていますが、本来は人間を食べることはなく、「好奇心やふとしたはずみで人を襲うことがある」と言われています。

 いずれの理由にせよ、世界中で何千もの被害報告が上がっていることに変わりません。2020年では、最も被害数の多かった米国だけで1000以上もの被害がありました。

 しかし、「サメに殺されるよりも、ビーチで溺れる可能性のほうが高いのも事実です」と、教授は言っています。サメによる攻撃は増加しているとは言え、非常に稀なケースと言えるのです。ここで私たちが心に抱くべきことは、サメへの嫌悪などではありません。私たち人間の行動が、「動物たちの行動をも変えてしまっている可能性が大きくある」ということなのです。

Source / ESQUIRE IT