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ROBERT SPANGLE
1月28日の撮影。国土防衛隊に志願した元空挺部隊兵。これから深夜パトロールに出かける瞬間。

※本記事は、ウクライナ・キエフに現地入りしたフォトジャーナリストでアメリカ海兵隊にも従軍経験のあるロバート・スパングル氏によって、2022年3月22日に寄稿された現地レポートです。また写真のキャプションは、マーシャ・メドベージェワ氏によって一部追記されています。

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻の開始から、すでに1カ月余りとなります。ですがロシアは、(おそらく)プーチンが想定していたほどの――世界の多くもそうなると思っていた――圧倒的な制圧は成し遂げていないと言っていいでしょう。ウクライナ軍の強固な抵抗によって、ウクライナの東部および南部に投入されたロシア軍が占拠できたのは、この地域にある2つの主要都市に留まっています。

ウクライナ北部の首都キエフに関しては、いまだ包囲には至っていません。侵攻したロシア軍はどの大都市でも予想を超える抵抗に遭遇しており、驚くべき機動力を発揮するウクライナ軍の絶え間ない攻撃によって補給すら妨害されている報告もあります。そして、この抵抗の一因となっているのが、志願したボランティアからなるウクライナ領土防衛隊の働きと伝えられています。この領土防衛隊は2014年のロシアによるクリミア侵攻を受けて創設されたものでありますが、ここ2カ月でその人数は劇的に増加しているということです。

そこで、そんな志願兵たちのことをさらに、現在進行中の戦いにおいて彼らがどのような役割を果たしているのかを知るために、私(撮影したロバート・スパングル氏)は2週間かけてキエフとその周辺で活動する領土防衛隊を撮影してきました。私が出会った戦闘員には、18歳から68歳までの幅広い年齢の人たちがいました。

また、志願を却下された16歳の少年たちも目にしています。志願兵の多くは除隊した元兵士ですが、そのほかの人々は軍隊未経験者。航空会社の客室乗務員もいれば、俳優、新婚のカップル、さらにはロシア出身者もいました。彼らに共通して言えることは、自分の国に対して強い愛情を抱いていることです。

彼らが受け持っているのは土木作業と自警団的活動を合わせたものであり、自分たちの町をパトロールしたり、要塞を築いたりしています。ですが、いずれは手にした銃を構え、自分たちの町を守る任務も行うようになるのでしょう。


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ロシア軍からロケット弾の集中攻撃を受けた後で、タバコで一服する早朝パトロールの隊員。
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即席に設営された野戦病院にて。最初の犠牲者が運び込まれてくるのを待ち受けています。
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一緒に戦おうと、領土防衛隊に志願した若いカップル。シフトの合間の数時間に仮眠を取っています。
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疲れた領土防衛隊員の休息場所として、円形劇場が利用されています。
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不足する兵器を補うため領土防衛隊では、第二次世界大戦の頃に当時ソビエト連邦で開発され使用されていた軽機関銃「DP-27(DP-28)」も導入されています。
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パトロールの指令が出るのを待つ、19歳の領土防衛隊員。
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キエフとその周辺に駐留するウクライナ軍の部隊と領土防衛隊のため、野戦キッチンで多くのボランティアが支援しています。
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キエフから東部にある都市ブロヴァルィー(Бровари)へ向う領土防衛隊の兵士。(写真撮影の)2週間前までは米国アリゾナ州に本社があるハイテク企業に勤務していたとのこと。3日前の夜には、自陣が巡航ミサイルの攻撃を受けたということ。「われわれの部隊はそれをどうにか凌いで、生き延びることができました」と言います。そして2日前の夜には、迫撃砲およびロケット弾、モロトフカクテル(火炎瓶)を使って待ち伏せ攻撃を仕掛け、ロシア軍の武装先遣隊を撃退したそうです。
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領土防衛隊はキエフのロゴが入ったマンホールのふたを利用して、自分たちの拠点を補強しています。
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児童公園の中を通って行く領土防衛隊の分隊。この場所の土は、彼らの防衛拠点を補強する土嚢(どのう)の中に詰めるのに使われています。
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部隊の防衛拠点のひとつを補強する、地元の人気俳優セルゲイさん(フルネームはプライバシーの観点から控えます)。領土防衛隊の部隊は、自らの軍服は自費で購入しているとのこと。セルゲイさんが着ている軍服は、2014年のロシアによるクリミア侵攻を題材にしたウクライナの戦争映画『Cyborgs』の衣装から拝借した…とのこと。
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「ロシア軍の攻撃が差し迫っている」という突然の警報を受けて、領土防衛隊の中隊全体が各自の防衛陣地につく瞬間。隊員の多くは夜明け前のパトロールを終えたばかりで、その他は仮眠をわずか2時間とったところで目を覚ましたそう。
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キエフ郊外の、まだ埋葬が行われいない空っぽの墓。その横にある真新しい墓の数々には、葬儀用の花輪が飾られています。そのすぐ向うに墓標のない墓が25ほどあり、そのさらに先には防衛拠点があります。
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深夜パトロールの最中に、ビルの管理人にふるまわれたお茶を楽しむ領土防衛隊の志願兵コルさん(仮名)。この管理人は、避難した住人からもらい受けた鳥や植物の世話をしています。
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接近してくる不審な車両を監視しながら、防衛拠点の背後で警戒する領土防衛隊の志願兵。
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もう一度いいますが、領土防衛隊には18歳から60代後半までの幅広い年齢層が隊員となっています。
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戦時においてウクライナでは、将校が結婚式を執り行うことができ、今はそれがしばしば行われています。ある衛生兵は自分が所属する部隊の隊員が結婚式を挙げる際、花の代りに包帯を使ってブーケをつくりました。
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アナトリーさん(フルネームは伏せる)はキエフ郊外に駐留する領土防衛隊中隊の司令官で、テロ対策チームで培った20年の経験をこの役目に活かしています。彼は子どもよりも多くの砂糖を紅茶に入れて飲みながら、数箱のタバコとともに長くて予測がつかない日々を過ごしています。
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モスコワさん(仮名)は小隊を率いる天性のリーダー。ロシア生まれでチェチェン紛争で戦ったあと、ウクライナに移住して司祭になった人物です。いま彼は、第二の祖国の側に立って戦っています。
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ロシアの破壊工作員は現実的かつ絶えることのない脅威で、ウクライナのインフラと軍関係者がその標的になっています。ロシア侵攻後に発令された厳格な夜間外出禁止令は、主に領土防衛隊の部隊によって施行されています。写真は、外出禁止時間に出歩いていた男がパトロールに呼び止められている一枚。
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さらに上の写真の男性は隊員が求める身分証明書を提示することできず、またこの周辺地域に関する簡単な質問にも答えられなかったため、破壊工作員である疑いがかけられることに。やがて彼の身柄は拘束され、分隊が周辺の捜索を行っている間に地元警察へと連行されました。
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破壊工作員の可能性がある人物と、近くの廃ビルに無理やり侵入した形跡が発見されたため、元警察官に率いられた領土防衛隊の分隊がその廃ビルの中に入って捜索を行いました。しかし、さらなる破壊工作の形跡は見当たりませんでした。
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戦時下のウクライナでは、夜間外出禁止令の時間帯にクルマを運転することも禁止されています。そんな中、走ってきた自動車を領土防衛隊の分隊が停止させようと試みます。隊員が銃を水平に構えているのを確認できたのか、そのクルマはようやく急停止しました。
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分隊は自分たちの地域にある、人や物を隠す可能性がある場所やターゲットマーカーなどを常にチェックしています。
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長くて寒いパトロールに出る前に、タバコを一服する隊員。
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夜間パトロールの終りは、新しい1日の始まりでもあります。
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破壊工作員の可能性がある男、不審車両、ロシアの巡航ミサイルなどで大忙しだった夜のあと、夜明け前の時間帯をパトロールする領土防衛隊の隊員。このパトロールで彼らは下水道から大通り、高層ビルまで見てまわっていました。

Source / Esquire US
Translation / Satoru Imada
※この翻訳は抄訳です。