この逸話は、デイヴィッド・エンリッチ氏の新著『Servants of the Damned: Giant Law Firms, Donald Trump, and the Corruption of Justice』の発売に先だち、前刷りを既に入手していた「ザ・ガーディアン」紙によって、現地時間2022年9月5日(月)に明らかにされた記事を受けてのものになります。

その内容は…1990年代のこと、ドナルド・トランプ氏は権威ある法律事務所への200万ドル(2022年9月の為替で約2億8000万円)にもおよぶ弁護士費用の支払いをする余裕がなく、その代わりに馬で支払う提案をしていたことがつづられているということ。

エンリッチ氏はこの自著の中にはさらに、「トランプは“支払いを拒否”したことで業(ごう)を煮やした弁護士は、アポイントはおろか予告もなしにトランプ所有のトランプタワーを訪れた」とも記述されています。さらに…

「それでも誰かが、トランプのオフィスへ案内してくれた。トランプは最初、彼との再会を喜んでいた。彼の恥ずかしがり屋の気質は変わっていない。だけど弁護士のほうが怒りを隠せないでいる…」と書かれています。そしてエンリッチ氏はさらに、「その弁護士は、信じられないほど失望していた」と続けています。「当時、(不動産業を好調に営んでいる)トランプ氏が、なぜ弁護士費用が支払えないのか? その理由がわからなかった」。これらはすべて、「ザ・ガーディアン」紙につづられています。

「するとトランプは、申し訳なさそうに声を出した。『私は請求書に対し、(お金で)支払いをするつもりはない。君にはもっと価値のあるものをあげるつもりだ』とのこと。彼は一体、何を言っているのか……。当然弁護士は面食らった」と、エンリッチ氏は記しています。

この件について、この「ニューヨーク・タイムズ」の記者つまりエンリッチ氏は、トランプが「私は種牡馬を持っている。それには500万ドル(現在の為替で約7億2000万円)の価値がある」と語ったと付け加えています。実際その著書を確認すれば、「トランプはそれから書類キャビネットを探し始め、『馬の権利書』を取り出した」という内容も記されています。

さらにエンリッチ氏によれば、「弁護士は当初、その申し出に唖然として言葉も発せられなかった」ということ。ですがその後、「今は1800年代じゃないんだ」と言い返したそうです。その続きは前出の「ザ・ガーディアン」紙が、「エンリッチ氏の著者の中で、『トランプ氏は少なくとも“借りた額の一部 ”を支払った』とつづられていた」と明かしています。 

他にも弁護士費用未払い事件が

この件に関して、トランプ大統領就任後の広報代表に対して「ビジネス・インサイダー」がコメントを求めるも、すぐには応じませんでした。これまでの報道の中にも、「トランプ氏は自身が関わった弁護士に対して、弁護料を払わなかった」という履歴はあります。

例えば2021年、マイケル・ウォルフ氏が上梓した『Landslide: The Final Days of the Trump Presidency』では、元ニューヨーク市長で2018年に大統領の顧問弁護士になったルディ・ジュリアーニ氏が1日約2万ドル(現在の為替で280万円)の請求をしていた仕事に対し、それに報酬を要求したこと自体にトランプが苛立っていたことが明らかにされています。

donald trump holds weekend meetings in bedminster, nj
Drew Angerer//Getty Images
2016年11月20日。大統領選勝利直後のドナルド・トランプ氏とルディ・ジュリアーニ元市長。



一方、共和党全国委員会はこれまで、トランプ氏の訴訟費用の支払いを支援してきましたが、トランプ氏が2024年の選挙戦を開始した場合、「支援をやめる」と述べています。2021年に同委員会は、トランプの弁護士費用として200万ドル(約2億8000万円)近く支出することを約束していましたが、2022年8月に行われたFBIによる同氏の邸宅マール・ア・ラーゴへの家宅捜索に関する訴訟には資金を提供していません。

「お金にいい加減な富豪」というイメージを後押しするような事実が、ここで明らかになっているトランプ氏。そんな彼は支持者からの人気はいまだ高く、2022年11月8日に控える中間選挙での勝敗の行方にはさらに注目が集まっています。