• トランプ政権は、米国のウラン採掘の再開と拡大を支持しています。
  • ウランは核エネルギーや核兵器に使用されており、新たな活用法も模索されています。
  • グランドキャニオン周辺の廃坑は、現地の地下水汚染の原因となっています。

悪い冗談にも思えるかもしれませんが、ドナルド・トランプ大統領グランドキャニオンでの採掘を望むかのような方針を示唆したことがあります。

トランプ政権は大規模なウラン備蓄計画を明言しており、グランドキャニオンでの採掘はこの一環となる可能性があります。米国は核エネルギーや核兵器の推進に必要となり得るウランを「戦略資源」とみなしています。そして、ウランは自然界で最も貴重な資源というわけではありませんが、主にカナダや中国などの他国が大量に保持しているのが現状です。

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上空から撮ったグランドキャニオンの様子。

ウランを重視するのは保守的ですが、トランプ政権が示唆したのは既存の採鉱地の再開や国有地の採掘です。これは明確にグランドキャニオンを指すわけではありませんが、この渓谷周辺にはすでに複数の鉱山が存在しています。グランドキャニオンでは、岩を持ち帰ることさえ違法です(ただし、トランプ氏の在職中には、ある地質学者がふざけた目的でグランドキャニオンの岩を持ち帰ることを、国立公園局が許可したケースもありました…)。

国立公園のものを持ち帰ることは、基本的に禁止されています。たとえば、イエローストーン国立公園には毎年数百万人の観光客が訪れますから、このような規制がなければ公園のメインルートはすぐに台無しになってしまうのです。そして、保護されている公園の土地を採掘することは、他の国有地と同様に基本的に規制されています。これらの土地を主にウランや石油のために採掘するかという議論は、トランプ政権ではまだ始まっていません。

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アメリカを代表する国立公園のひとつとして知られる、イエローストーン国立公園。

このような土地の採掘が将来許可されたとしても、国有地は重複する複雑な規制の対象となっています。そして米国西部においては、「ネイティブ・アメリカンの人々の健康と過去の遺物の保存」という2つの点での人道的な懸念もあります。

この地域の活動家によれば、ネイティブ・アメリカンの土地の周辺では、過去のウラン採掘で有害物質が土壌や地下水中に浸出して健康被害が起こり、これがナバホ・ネイション(アメリカ合衆国先住民族・ナバホ族の準自治領)での新型コロナウイルス感染症の異常なまでの拡大の原因となった可能性も指摘されています。

核研究は政府と民間企業の両方で、かつてないほど活発になっています。ウラン採掘の支持者たちは米国の北極圏での石油採掘を支持する理由と同じように、「石油燃料であっても原子炉であっても、エネルギーの自給自体に価値がある」という主張を繰り返しています。しかし現在、世界経済は既存のウラン鉱山でさえ、生産量を削減している状況なのです。

「ウランを保有することが戦略的に賢明だ」としても、現在はこの資源にお金やリソースを割くべきタイミングでしょうか? また、米国が最悪のパンデミックの最中にある現在、新たな公害の原因を加えることは賢明なのでしょうか?

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トランプ政権が今後どのような動きを見せるのか、気になるところです。

もしトランプ政権が実際、この採掘計画にゴーサインを出すことになれば、おそらくいくつかの既存の採鉱地は再開されることでしょう。そして、自給自足によってコスト削減ができる可能性はあります。

ですが、それも採鉱地が素早く安全に再開できるだけの最新設備を備えてからでなければなりません。なぜならウランは通常、鉱石を周囲の鉱物から分離するため、液体化学溶剤を使って採掘されます。この溶剤が土壌や地下水へと流れ込むことで、放射能汚染が蔓延する大きな理由のひとつになっているからです。

Source / Popular Mechanics
Translation / Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。