「これ以上耐えられないと気づく瞬間がある」と、元バルセロナの天才MFアンドレス・イニエスタは語りました。はたして彼の身に、何があったのでしょうか?
2018年5月下旬、スペイン代表MFアンドレス・イニエスタ選手がヴィッセル神戸へ移籍することを発表。日本でもただいま話題沸騰中の彼ですが、今回友人の死をきっかけに患った「鬱病」との闘いについて口を開きました。
2009年、RCDエスパニョールのキャプテンだったダニエル・ハルケ選手がシーズン開幕前に心臓発作に襲われ、26歳の若さで亡くなりました。そのタイミングでイニエスタ選手は、「自分はこれ以上耐えられない…」と実感したことがあったと明かしました。
「自分が自分ではないような感じで、何をしても楽しめず、周囲の人たちが単なる人間としか感じられなかった」と、イニエスタ選手は「Antena 3 TV」に語りました。そして、「感情もなければ情熱もない…といった状態だった」と明かしました。
「自分の内面が空っぽに感じられ、そして、自分がこれ以上耐えられないと気づく瞬間があるんだ…」と、イニエスタ選手は当時を振り返ったのです。そして、そんな状態ではマズいとイニエスタ選手は、ワールドカップ(2010年の南アフリカ大会)を見据え、「鬱病」に対処するために専門家の力を借りようと決心したのでした。
「私には、あの状況から抜け出すためには、誰かに相談するしかない…と判断する力がまだあった。大切なことはあの時期に、私が決して生気を失わなかったということだ」と、イニエスタ選手はコメントしました。
イニエスタ選手はその後、2010年のワールドカップにスペイン代表として出場しました。そして決勝戦では、決勝ゴールを決めています。このゴール後に、ユニフォームを脱いだ彼のアンダーシャツには「ダニ・ハルケはいつもわれわれとともに」というメッセージが書かれていました。
サッカーの世界では、メンタルヘルスの問題がいまだにタブー視されています。しかし、ここ数年の間に数多くのスター選手がメンタルヘルスに関する発言をしてきており、イニエスタ選手もそうした選手のひとりに過ぎません。
2018年4月には、元アーセナルのキャプテンで現役を引退したばかりのペア・メルテザッカー選手(元ドイツ代表)が、サッカー選手として支払う精神的な代償の大きさについて話をしていました。「試合の開始前には胃がひっくり返り、思わず嘔吐しそうになる」と、彼はサッカー専門誌『デア・シュピーゲル』に語っています。
また、「その後は、目が潤むまで激しく喉を詰まらせなくてはならない…」と明かしてくれました。
イニエスタ選手はこうも語っています。
「肉体的にも精神的にも、すべてが重荷で仕方ないとリアルに身につまされる日もある……でも、たとえ自分がケガをしていたとしても、はっきりと結果を出さなくてはならない、それが選手なんだ」と。
2018年6月16日、日本時間の3:00よりW杯ロシア大会グループB予選であるスペイン対ポルトガルという好カードがあります。#6イニエスタ選手が当然出場することが予想されていますが、いかがでしょうか? われわれも、彼が日本でプレーすることをリアルに感じながら観戦しようじゃありませんか。
イニエスタ選手、そしてスペイン代表およびポルトガル代表…もちろん日本代表もです。そればかりではありませんね。スポーツを愛する皆さんであれば、このたびの大会に出場するすべての選手の皆さんに対し、ケガなく、一戦一戦で最高のパフォーマンスが発揮できるよう願いながら応援しましょう。
Source / ESQUIRE UK
Translation / Hayashi Sakawa
※この翻訳は抄訳です。