• 現在トヨタは、新たな実験都市を静岡県にゼロから構築しようとしています。
  • その都市の名は「Woven City(ウーブン・シティ)」。名前に「Woven」にように、まさにウェブによって自律的に編み込まれた実験都市となる模様です。これは特に、自動運転車の未来を占う都市であることには間違いないはずです。
  • 170エーカー(およそ687966平方メートル/東京ドーム約14.78個分)におよぶ元工場の敷地内にできるこの都市計画の起工は、2021年初頭に予定。そしてトヨタは、「5年以内には居住できるようになる」と述べています。

 そうです、世界にその名を馳せる日本企業トヨタは、ちょっとした不安も誘いながらも、クールであること間違いなしの都市を2021年より建設しようとしています。「さすが先見の明のある会社だ!」と、この知らせは世界にとどろきました…。

 そのプロジェクトの建設予定地は、日本は静岡県裾野市。やがて富士山の麓(ふもと)に、広さおよそ68万7966平方メートル/東京ドーム約14.78個分からなるプライベートメトロポリスとできるとなるわけです。

 で、そこで浮かんだ「ちょっとした不安」とは何でしょう? それは…想像を広げれば、この地にはまるでジェームズ・ボンド映画の悪役の基地のような、少年が抱く夢のようなイメージも浮かんでしまうからです(笑)。しかし、これを世界のトヨタがつくるとなれば、クールとしか言いようがないでしょう。

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Toyota

  実際にトヨタが唱えるこの「ウーブン・シティ」の目標は、さまざまな面での自律型マシンおよびコネクテッド・ビークル・テクノロジー(Connected vehicle technology=)のテストベッド(Testbed=新技術の実証試験に使用されるプラットフォーム)になることであり、最終的には「そこに住む人々の数は2000人前後になるだろう」とトヨタは発表しています。つまり、世界最先端の人が実際に住むサイバーシティとなることが目標となっているようです。

 上記の「コネクテッド・ビークル・テクノロジー」というワードは、簡単に言えばクルマと人と環境をつなげ、そこから大量のデータを取得。そのデータから分析・学習することによって得られる知見・洞察から、より安心・安全な自動車およびそれを支える環境を創り上げること。そしてさらに、そこに住む人々に対し、新しい価値を提供するサービスを行うための技術のことになります。まさに、SF映画に登場するような未来都市の完成が迫りつつある…と言っていいでしょう(ですが、さすがに自動運転車が空を縦横に飛び交うまではまだまだ遠い先のようです)。

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Toyota

 自動運転の都市と言えば現在、米カリフォルニア州コントラコスタ郡の元海軍施設を利用した「GoMentum Station(ゴーメンタム・ステーション)」が存在します。ここでは交差点や信号などは再現し、自動運転車のテストが行っていますが住民はいません。

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 つまり、このトヨタの「ウーブン・シティ」は、実際に自動運手車が走行する街並みに、人々は実際生活できるかも確認するための最初の地となるわけです。また、自動運転に加えて「モビリティ・アズ・ア・サービス(MaaS)」、パーソナルモビリティ、ロボット、スマートホーム技術、人工知能(AI)技術などを検証できる実証都市の役割も担っています。

 では、実際のところ、この「ウーブン・シティ」にはいつ入居できるのでしょう?

 トヨタはまず従業員と研究者を優先して、その街への居住する方を募るようです(場合によっては、会社からのお願いとなることもあるでしょう)。なので、トヨタの就業員でない我々は、しばらくの間は待たなければならないようです。

 ちなみにこの都市で許可される唯一の動力車両は、2020年の東京五輪でも選手村での使用が予定されているAutono-MaaS専用EV「e-Palette」など、完全自律型ゼロエミッション輸送車両になるとのことです。

 道路は3種類用意され、そのひとつは、比較的速度が速い車両専用となります。そこには「e-Palette」など、完全自動運転でゼロエミッションのモビリティだけが走行できる道になるとのこと。街路樹によって、人と車両のエリアが区分されるそうです。

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 この「e-Palette」に関して少々説明したほうがいいでしょう。

 これはトヨタの車両制御プラットフォームに専用開発の自動運転システムを搭載したMaaSであり、高精度3Dマップと運行管理によるレベル4の低速自動運転が可能となっています。車両の周囲360度の障害物を検知し、周囲の状況に応じて最適な速度で運行。システム異常時には、同乗するオペレーターが緊急停止させるそうです。1回の充電で最大約150kmの走行が可能となっています。

 2つ目の道路は、歩行者と速度が遅いパーソナルモビリティが共存するプロムナード。3つ目の道路は歩行者専用で、公園内の歩道のようになるそうです。

 そして、このように道路を3種類に分ける狙いとしては、「交通事故をなくすこと」と明言しています。さらに、より静かな住環境の追求やトヨタの自動運転この街のインフラの実証を加速させるため、人間・動物・車両・ロボットなど、さまざまなユーザーが行き交う多彩な交差点をつくり出す狙いもあるそうです。

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  この都市のデザインは、デンマークの建築家ビャルケ・インゲルス(Bjarke Ingals)氏によって設計されます。インゲルス氏はニューヨークの新たな第2ワールドトレードセンターやGoogleの新しい本社屋など、これまで数多くの著名なプロジェクトを手掛けています。 初期の起工としては2021年に予定されており、さらにトヨタは「今後5年以内に、人々が生活できるようになる」とも言います。

 さて、このプロジェクトは大成功するでしょうか?

 それとも、映画のようなストーリー「人工知能自身による自己フィードバックで改良が重ねられ、高度化した技術や知能が、人類に代わって文明の進歩の主役になる」といった「Technological Singularity(技術的特異点、またはシンギュラリティ)」へシフトしてしまうのでしょうか? その危険性を事前に推し量るためにも、この「ウーブン・シティ」はかけがえのない存在となるでしょう。

 SF作家アイザック・アシモフ氏が提唱した、「ロボットは人間に危害を加えてはならない」「人間の命令に服従しなくてはならない」「ロボットは自分を守らなければならない」というロボット工学三原則…だけでいいのか、そこに賢明なるAIたちが発見できる「隙」がないのか? 考察するためには絶好の都市になるに違いありません。

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 トヨタの豊田章男社長はその発表の場で、「人々が実際に住んで、働いて、遊んで、そんな生活をおくりながら実証に参加する街です。実際、私たちと一緒にこのプロジェクトに参画することに関心がある方、また将来の暮らしを改善したいと思われている方は、どなたでも歓迎する予定です」と語っていました。なので実際には、我々にも住むチャンスはありそうです…。

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CES2020 豊田章男からのメッセージ
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 2020年1月27日、茨城県境町は自動運転バスを同年4月から町内の公道で運行すると発表しています。医療施設や銀行、小学校をつなぐ往復5キロのルートを最大時速20キロで走るとのことです。

 さらに同年2月6日には、鹿島建設やJR東日本など9社が出資する羽田みらい開発は、羽田空港の拡張に伴って生じた跡地で開発を進める「HANEDA INNOVATION CITY(羽田イノベーションシティー)」を同年7月初旬に開業すると発表しました。ここでは、先端技術の実証実験を行う施設や日本文化を体験できる施設を中心に、日本初の「スマートエアポートシティー」の構築を目指しているそうです。

 羽田空港国際線ターミナルから1駅の「天空橋駅」に直結し、敷地面積は約5.9ヘクタール(5万9000平方メートル)。2020年7月初旬は一部先行開業であり、2022年にグランドオープンするとのことです。ここでは「先端技術」と「文化」の2つの産業が核となり、先端技術の分野では「先端モビリティセンター」「研究開発拠点」「水素ステーション」などを整備。文化施設としては「文化体験商業施設」「足湯スカイデッキ」「芝生広場」などが設置されるとのことです。

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 先端モビリティセンターでは、デンソーが自動運転技術の試作開発、実証を行う新拠点を開設するとのこと。また、「交流・連携」を目的とした拠点も設置し、開放型のコワーキングスペースやビジネスフォーラムなどに利用できる広場、予約制会議室などを開設。さらに自律走行バスやアバターロボットの導入も計画しているとのこと。

 こうして、自動運転車が走行する未来が着実に近づいているのです…。

Source / Car and Driver
Translation / Utah ZiOn
※この翻訳は抄訳です。