1950年代、テレビアニメ『宇宙家族ジェットソン』に登場した空飛ぶ自動車の実現は、「もう、すぐ目前だ」と思われていました…。そしてついに、自動運転車の時代がやってきました。
グーグルが、カリフォルニア州で自動運転車のパイロット版を走らせるようになってから、もう何年か経ちました。ゼネラルモーターズと子会社のクルーズオートメーションは、今年中に無人タクシーのサービス開始を目指して準備を行なっています。
しかし、クルマが自分を職場まで運んでくれる最中に、本を読んだり昼寝をしたりする未来の実現には、まだまだ時間がかかりそうです…。自動運転車の現実はもっと複雑で、思い描いていたカタチに到達するのは、まだ時間がかかることが次第に明らかになってきたからです。
技術的な制限もさることながら、法的ハードルも不透明なままです。もし、自動運転車が事故を起こしたら、誰の責任になるのでしょう? その答えはまだ出ていませんし、保険会社も法廷に出向いてまでして真相を探ろうとはしないようですから…。だからこそ、クルマに乗り込んで目的地を設定したら、あとは何もしなくていい…というのは、現段階では夢のまた夢になっているわけです。
自律走行の定義とは
自律走行車や無人運転車と呼ばれたりもする自動運転車ですが、現在、この世にまだ存在していません。しかし、関連する用語は徐々に浸透してきています。今日、アメリカには完全自動運転車はありませんが、部分的に自動運転のクルマは存在しています。そして、この「部分的」というのが、自動運転車に関する議論を難しくしているのもままた事実なのです。
アメリカの自動車技術会(SAE)によると、自動運転のレベルは人と車が担う運転動作の比率や技術到達度、走行可能エリアの減程度合いなどによって、レベル0から5の6段階に分類されているそうです。
【レベル0: 運転自動化なし】
このレベルのクルマには、一切自動運転の機能がついていません。多くの人が乗っている、ごく普通のクルマであり、運転支援システムを一切有していないクルマになります。
例えば、自動緊急ブレーキやアダプティブクルーズコントロールといった機能もなく、運転者がすべての運転操作を行う必要があるものになります。
【レベル1: 運転支援】
このレベルのクルマには先進運転支援システムが備わっており、運転手の運転操作を支援することができます。
例えば、運転手の代わりに車線逸脱防止支援システムを通じてハンドル操作を行なったり、アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)を通じてアクセルとブレーキの操作を自動で行い、車間維持支援をするなどができるものになります。しかし、両方を同時に実行することはできません。
【レベル2: 部分運転自動化】
このレベルのクルマには、特定の条件下(特定の気候や指定された道路など)でハンドル操作とアクセル・ブレーキ操作を同時に行うことのできる、先進運転支援システムが備わっているものになります。
しかし、運転手は常に集中し注意を払い、他の車両操作を行いながら危険な状況を避け、緊急時にはすぐに運転を代われるように準備しておく必要があります。
レベル2の車両として代表的なのが、2017年にゼネラルモーターズがキャデラック「CT6」に搭載して高い評価を得ている、キャデラック「スーパー・クルーズ」運転支援システムになります。
【レベル3: 条件付き運転自動化】
このレベルでは、特定の条件下で複数の先進運転支援システムが同時に機能し、すべての運転操作を行うことができます。すべての自動運転をシステム側が行うとは言え、運転手はシステムからの要求があれば運転操作を行わなければなりません。
また、条件が満たされない場合は、人間が運転する必要があります。2019年アウディ「A8」に搭載された「Audi AI トラフィックジャムパイロット」がレベル3に該当します。同車は日本では、2018年10月より販売されています。
【レベル4: 高度運転自動化】
このレベルはレベル3と同様、特定の条件下でシステムが運転操作を行えます。が、「先進運転支援システムの機能中は、運転手が注意を払う必要がない」というのが、大きな違いとなります。
ですが、運転環境を監視することもできます。レベル4のクルマは、特定の条件下のみで動作するものとなります。
【レベル5: 完全自動化】
このレベルでは、どのような状況でもシステムがすべての運転操作を行うことができます。
運転手が必要ないため、全員が乗客としてリラックスできることになるのです。
先進運転支援システム
先進運転支援システムとは、自動車の運転時に運転手を支援する技術のことを言います。自動車メーカーはこのシステムに独自の名前をつけることが多いようですが、機能は同じです。
先進運転支援システムに含まれる機能の例として、次のような機能が挙げられます。
- 自動車線維持支援システム自動駐車
- ブラインドスポットモニター
- 衝突被害軽減ブレーキ
- 居眠り運転検知
- ドライバーモニターシステム
- ヒルディセントコントロール
- 前方衝突警報システム
- 車線維持支援システム
- 車線逸脱防止支援システム
- 道路標識認識
これらのシステムが、自動運転車のための第一歩となるのです。パズルのピースといったところでしょうか…。
現在ではさまざまなメーカー、さまざまなモデル、さまざまな価格帯で入手できます。トヨタやホンダのようなメーカーは、全ラインナップになるべく多くの先進運転支援システムを標準装備させるように努めてきました。
次のステップは、運転操作を人が行う必要がなくなるように、これらの技術をひとつのシステムに組み合わせることです。
多くの自動車メーカーとテクノロジー企業が、このステップの実現に苦労しています。すべての支援システムをひとつのパッケージにまとめ、どんな状況下でも機能するようにするのが自動運転車の実現の鍵となるのです。
実現に向けて、その他の課題
技術が構築できても、まだ課題は残ります。
完全自動運転の自動車を気軽に売買できるようになるには、時間がかかるでしょう。なぜなら調査によれば、新しいテクノロジー好きの若者を含めた多くの人々が、未だに自動運転車に対して不安を感じているのです。自動車メーカーは、自社の自動運転車に何ができて何ができないかを、今後も継続的かつ慎重に消費者へ伝えていく必要があるでしょう。
リスクを元に商売をする保険会社では、自動運転車や多くの自動車メーカーがすでに導入している運転支援システムに対して警戒の念を強めています。
事故を防ぎ、命を救うための新技術なわけですから、保険料が下がるのは当然だと思われるかもしれません。ですが、実はそうでもなさそうなのです。このようなシステムは逆に、保険料を上げる原因になる可能性があり、そうなると消費者は自動運転車の購入に足踏みすることに違いありません。
しかし、なぜ保険料が上がるのでしょうか? それはリスクが高いためです。
自動運転車や運転支援システムのレベルは様々で、また完全とは言えないのは確か…。よって、「リスクが高い」と判断し、保険会社としては避けて通りたいところ…となるわけです。
そして最後に無人自動車の台頭は、私たちにさらなる厄介な疑問を投げかけます。人間はいつ機械に責任を委ねるのか、いつ委ねてはいけないのか、そして、責任の移行がいかに危険になりうるのか…です。
自動車メーカーは少しずつ、自動運転化に向けた技術を自動車に導入しています。
高度な運転支援システムを備えたレベル1に該当するクルマは、すでに多く存在します。テスラの「オートパイロット」、メルセデス・ベンツの「ドライブパイロット」、キャデラックの「スーパー・クルーズ」はすべてレベル2です。そしてレベル3も、メルセデスの「Sクラス」やボルボのクルマなどに搭載予定となっています。レベル5の実現には、まだ何年もかかるでしょう…。
また、消費者が混乱する恐れのある、自動運転車にまつわる用語の問題もあります。
レベル5以外の自動車を「自動運転車」と呼ぶことは、不正確なだけでなく、危険を伴います。
安全に自動車の運転をしてもらうには、消費者にレベル1から4の自動運転車の制限をしっかり理解してもらうことが重要となるでしょう。現状で各レベルの自動運転車がどう機能するかを消費者に説明する責任に関しては、各自動車メーカーと規制当局の手に委ねられています。
今後、急速かつ強固な改革なくして、自動運転化の実現はなかなか見えてこないのではないでしょうか…。
From Popular Mechanics
Translation / Yuka Ogasawara
※この翻訳は抄訳です。