これほどエクストリームなEV(電気自動車)が、かつて存在したでしょうか。なにしろベースになっているのは、高価にして希少、そしてとにかく速いことで知られるイタリアのカロッツェリア、ピニンファリーナによる超ハイパーEV「バッティスタ(Battista)」なのです。合計1800馬力超という驚異のパワーを生み出すクアッドモーターパワートレイン(※編集注:四つのモーターからなるパワートレイン)が、この新発表の「B95」にも搭載されるというのも自然な、そしてスリリングな流れと言えるでしょう。

ピニンファリーナ「b95」
Automobili Pininfarina
ピニンファリーナ「b95」
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わずか10台のみの生産

このピニンファリーナ「B95」は、紛れもないスピードスターです。そして、あの「バッティスタ」の象徴と言うべき圧倒的なパワーをウィンドウシールドにさえぎられることなく体験するという幸運を手にする人々は、世界に10人現れるということになります。つまり、「B95」はワンオフ(その時1度限りの企画)ではなく、限定10台のみの生産であることが発表されているのです。その限定台数、そして480万ユーロ弱(約7億5600万円)というスタート価格によって、希少価値はすでに保証されているといって間違いないでしょう。

数あるスピードスターの中にあって、「B95」のデザインはとにかく際立っています。公開されたばかりのその姿を見れば、ノーズ部分とロールフープ(※編集注:座席後方の上部に装着されたロールバーのこと。主に競技用車両などに搭載され、事故による転倒からドライバーを守る目的とされています)に施された、鮮やかなイエローのアクセントが目を引きます。それはまるで1950年代のオープンコックピットのレーシングカーを想起させるシンプルなカラーリングを、現代風にアレンジし直したかのようです。

ピニンファリーナ「b95」
Automobili Pininfarina

シート上部は千鳥格子です

そのインスピレーションは、インテリアのデザインにも反映されています。シートのベルトラインから下はタンレザーで覆われていますが、運転席も助手席も上部1/3には個性的な千鳥格子のテキスタイルが用いられています。

あのイタリア最大のカロッツェリアにして名門のピニンファリーナのデザインファームとは経営を異にするアウトモビリ・ピニンファリーナですが、同社はインドの自動車メーカー、マヒンドラの完全所有となっています(ちなみにデザインファームの株式も、マヒンドラが一部保有しています)。そのアウトモビリ・ピニンファリーナにより「ハイパーGT」と銘打たれている「バッティスタ」ですが、「B95」のほうはグランドツーリング向きの車とは言えないかもしれません。

ピニンファリーナ「b95」
Automobili Pininfarina
ピニンファリーナ「b95」
Automobili Pininfarina

EV性能は「バッティスタ」譲り

それでも270kWでの充電で、20パーセントから80パーセントまでわずか25分という液冷式120kWhバッテリーが搭載されているため、「バッティスタ」と同様の卓越したユーザビリティが備わっています。300マイル(約483キロ)というEPA(米国環境保護庁)認定の航続距離を誇る「バッティスタ」ですが、「B95」も同様の性能を持つものと推測されます。

創業93周年を迎えたピニンファリーナのデザインファームですが、「B95」の名は同社の95周年にちなんだものです。つまり10台の「B95」の完成と納車は、祝福の年となる2025年に予定されているというわけです。

ピニンファリーナ「b95」
Automobili Pininfarina

Source / Road & Track
Translation / Kazuki Kimura
Edit / Ryutaro Hayashi
※この翻訳は抄訳です