“史上最強”とも噂されるイタリア車が、ついに本格的な生産体制に入りました。

それは、電気モーターから生み出される1900馬力の出力と1725lb-ftのトルク。異次元のパワーを擁するピニンファリーナのEV(電気自動車)「バティスタ」のこと。そのルーツを、クロアチアのEVメーカー、リマック・アウトモビリの「ネヴェーラ」と同じくすることで広く知られてもいます。

アメリカのカーメディア「CAR AND DRIVER」編集部がこの車に試乗したのは、ちょうど1年前のことでした。その後さまざまな改良や修正が行われ、ついに199万ドル(約2億7600万円)のハイパーカーの全貌が明らかになりました。

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Pininfarina
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ピニンファリーナの親会社であるマヒンドラ&マヒンドラ(※編集注:インドのマヒンドラ・グループ傘下の企業で、2015年12月にピニンファリーナの株式の76%を取得しています)によると、2022年内にもアメリカへの上陸が実現することになる見込みです。

「信頼性と耐久性を高めるべく、パフォーマンス性能の改良を続けてきました」と、「CAR AND DRIVER」の取材に述べているのは、プロダクト&エンジニアリング部門の責任者パオロ・デラカ氏です。

「あれから11カ月を費やし、eパワートレイン、シャシーのキャリブレーション、ESC(※編集注:Electric Stability Control:電子制御の働きによって車のさまざまな部品をコントロールし、走行中の横滑りなどを防止する技術)、トルクベクタリングなどの細かな調整を行っています。11カ月前に試乗された状態よりも、さらに洗練され、遥かに速い車になっているはずです」とのこと。

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1980年代半ばにピニンファリーナが発表した「アズーラ」(※編集注:1982年からの3年間、ピニンファリーナ「スパイダー・ヨーロッパ」の北米市場向け車両として展開されました)以来となる、同ブランドのエンブレムを冠した1台ということで、リマックの「ネヴェーラ」とは一線を画するものであるというのがピニンファリーナの主張です。

ピニンファリーナの公式情報によれば、0-100km/h加速は1.8秒、電子制御によって制限された最高時速は217マイル(約350km/h)とのこと。試乗した感想としては、「示された数値以上の体感速度に驚かされた」と記せられています。

54ヘルツの振動を伴う特徴ある音色も、「『バティスタ』ならではの個性」とのこと。EPA(米国環境保護庁)認定の航続距離については、市街地で290マイル(約467キロ)、高速道路で309マイル(約497キロ)とされ、これは「ネヴェーラ」の287マイル(約461キロ)を上回る性能です。

公表されているトルクから、さらに29lb-ftを上乗せしたとピニンファリーナは明かしていますが、こちらは「ネヴェーラ」の最高出力1914馬力にわずかに及びません。「DC急速充電は180kWから250kWに引き上げられ、5種類のドライブモードをそれぞれ個別にカスタマイズできる仕様である」と、デラカ氏は述べています。

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外観ですが、「バティスタ」のエクステリアのデザインを担当するデイヴ・アマンティア氏が個々の購入者ごとの個別のスペックに対応します。しかしながら、そのエクステリアのバリエーションは実に13.9兆通りの組み合わせが存在するということ。そのためイタリア・カンビアーノ(ピエモンテ州トリノ県)の専用施設では、1台の「バティスタ」の製造に10週間を要するものと見られています。なお、ハンドペイントによる「アニバーサリオ」というスペックを選べば、その工期が18週間にまで延長されます。

ピニンファリーナはさらに、3種類のアフターサービスパッケージがあることも公表しています。

「エッチェレンツァ」では、「パフォーマンスの最大化を保証するサービスを提供することで車両の価値を維持する」ためのメンテナンスとして5年間で7万2千ドル(約100万円)、もしくは10年間で1万4500ドル(約200万円)を保証。「フーツラ」では、15万ドル(約2000万円)でバッテリーとパワートレインに対する補償を7年延長することが可能です。そして「エテルナ」のパッケージを選べば、不慮の事故などでボディパーツの交換が必要となった際などの対応がなされることとなります。ボディパーツの保証対価については、「スペックによって異なるもの」とされています。

今年(2022年)の8月に予定されている、カリフォルニア州モントレーの街を拠点に行われる車の夏の祭典、モントレー・カー・ウィーク(MONTEREY CAR WEEK)でこのピニンファリーナ「バティスタ」を再び見ることができそうです。その最終形態は果たしてどうなるのでしょうか。引き続き注目です。

Source / CAR AND DRIVER
Translation / Kazuki Kimura
※この翻訳は抄訳です