求めてどこへでも
かき立てるときと場所を譜面に向かい、数世紀前の音楽家が旋律に込めた「声」に耳を澄まし、そこに自らの声も重ね合わせ、自分の音をつくり上げていくクラシック音楽の世界。調和と自己表現の境地に挑む作業だが、反田恭平氏は「イマジネーション」が一番大切と語る。
「確かな技術は大前提ですが、いい音を出すには、イマジネーションが全てと考えています。日々、さまざまな刺激を得ることを意識し、そのためであれば、一日、ピアノに向かわないこともあります」
演奏会においても、ステージに立ち、ピアノに向かい鍵盤に触れた瞬間…、どこかで新たなイマジネーションが湧き上がれば、それに従うという。「X7」がまとうボディカラー「アメトリン」もまた刺激に満ちた、奥深い輝きをまとう。アメシストとシトリンが混ざりあって生まれた宝石、アメトリンが放つ、金色から紫、赤と状況によって変化する色を表現しており、磨き上げられたボディは、流麗な「面」であると同時に、移ろいゆく陰影をも備え、光に応じて刻々と姿を変えていく。
その奥深き輝きに呼応するのが、内装に施された西陣織の精緻な装飾。一枚の織物の中で、図案を立体化させ、繊細な陰影を宿す。緻密な計算と設計、そして織手の経験と技術によって、一本一本の糸全てが調和。その様は、一瞬一瞬、移ろいゆくはかない変化を愛でる日本文化の源泉にも通じる。
「クルマというプライベートな空間で、こうした特別なものに日々触れることができるのは、すごく贅沢なことです。西陣織の技術について専門知識がなくとも、これが長く伝えられてきた確かな技術の集積によるものであることと、そこに込められた作り手の熱意を感じることができます。クラシック音楽も数百年の時を経て、伝承されてきたものです。作曲家自身による演奏は聴くことはできませんが、楽曲に込めた思いは後人たちの手でしっかりと受け継がれています」
「図案家が仕上げた図案に、さらに手間をかけて織物にしていくのが私たちの仕事です。伝統工芸としての『西陣織』の文化を守っていくのはもちろんのことですが、『なぜ織るのか』という原点に立つことを常に心掛けております。その『原点』として捉えているのが、立体化による陰影の創造です」
そう語るのは、「X7」のフロントセンターアームレストとルーフライナーの開発と製織を手掛けた西陣織の老舗織元「加納幸」5代目の加納大督氏だ。
今回のプロジェクトにおいても、西陣織の伝統的技法と、図案の立体化を突き詰め、一枚の織物の中に崇高な文様を巧みに描き出した。
帯を織り上げるのも多大な労を要するところに、クルマの形状に沿って貼り込み、さらに車の部品となるゆえ、難燃性もクリアしなければならない。
そこで西陣織の特徴である金や銀の「箔」による意匠を、本来の楮(こうぞ)和紙ではなく、「X7」のシートに使用されているメリノ・レザーに施すことに。でき上がった革の箔を極細に断裁し、緯糸として織り込んでいった。独創的なアイデア、緻密な設計、「形」として具現する織手の技術、全てに最良のパフォーマンスが求められる仕事だった。
反田氏が一見し、触れて感じた通り、「技術の集積と熱い思い」に満ち、制作に関わった人々のさまざまなインスピレーションが相乗して生み出された、渾身のプロダクトなのである。
BMW X7
NISHIJIN EDITION
- エンジン:直列6気筒ディーゼル
- 総排気量:2992㏄
- 最高出力:340㎰
- 最大トルク:700Nm
- トランスミッション:8速AT
- 駆動方式:四輪駆動
- サイズ:全長5165㎜ 全幅2000㎜ 全高1835㎜
- ※本モデルはすでに完売しております。
●お問い合わせ(「X7」および、オーダーメイドプログラム「BMW INDIVIDUAL」について)
BMW/BMWカスタマー・インタラクション・センター
TEL/0120‑269‑437
公式サイト
Model / Kyohei Sorita
Styling / Takafumi Kawasaki
Hair & Make-up /Masaki Tanimori(W)
Text & Edit / Jun Nemoto