2020年大会に続き、2021年もサウジアラビアで1月3日(日)~ 同月15日(金)開催の「ダカール・ラリー」。もともとはフランスの首都パリをスタートし、セネガルのダカールをゴール地点とした「パリ・ダカール・ラリー」として親しまれていました。いわゆる「パリダカ」です。

 「パリダカ」は1979年(スタートしたのは1978年12月26日)に第一回大会が行われ、その後、さまざまな事件・事故が起こり、2008年1月5日~同年同月20日の期間予定の第30回は中止となりました。そして翌2009年からは、南米大陸に開催地を移し、さらに2020年からはサウジアラビアでの開催となります。

 こうして1度の中止を挟み、フランス人冒険家である故ティエリー・サビーヌ氏の発案によって開催されたラリーレイド競技大会であり、「世界一過酷なモータースポーツ競技」とも言われているこのレースは、2021年で43回目を迎えました。

 これまでに数多くのラリーカーが優勝を飾ってきました。日本人としては、1985年の第7回大会で三菱「パジェロ」が初優勝。さらに1997年の第19回大会では、日本人ドライバー篠塚建次郎氏が駆る三菱「パジェロ」が優勝。さらに2002年第24回大会、2003年の第25回大会でも日本人ドライバーの増岡 浩氏が駆る三菱「パジェロ」が2年連続で優勝するなど、「パリダカ=パジェロ」という印象が強烈に残っているかもしれません…。

 ですが、世界的視野で見ると、「異次元の存在感を放っていた」と今も語り継がれているのが、ポルシェの「959」ではないでしょうか。

rallye paris dakar 1986
Jean GUICHARD//Getty Images
1986年の第8回パリ・ダカール・ラリーでポルシェ「959」のハンドルを握ったジャッキー・イクス氏が束の間の休息。この年は岩にぶつかり、フロントサスペンションをもぎ取られてリタイアしています。彼は1985年も「959」のドライバーを務めました。ル・マン24時間レースでもポルシェで6度の優勝経験を持つ、「ル・マンのキング」でもあります。ちなみに第8回大会では、ルネ・メッジフランス氏とドミニク・ルモイヌ氏が駆る#186のポルシェ「959」が優勝、2位にこのイクス氏とクロード・ブラッスール氏組が2位と、ワンツーフィニッシュを飾っています。

 ポルシェ「959」は、もともとは世界ラリー選手権(WRC)のグループB(当時の世界ラリー選手権の最上位カテゴリー)に参戦するためにつくられたモデルでした。グループBと言えば、4WDを採用した高性能スポーツモデルであるアウディ「クワトロ」やランチア「ラリー」の名を世に知らしめた過酷を極めるラリーレースで、当時絶大なる人気を集めていました。

 ところが、軽量なものは1トンを切る車体に強力なエンジン、さらに強力なダウンフォースを生む空力性能を擁するマシンは、当時のF1カーをも凌駕しているとも言われる強大なパワーを持ったクルマばかりばかり。しかし、そのパワーに対してシャシーの性能が追いついていないこともあり、重大な事故や死亡事故が発生してしまいます。

 そうしてその危険性が問題視され、1982年に開始されたグループBは1986年を最後に開催中止に…。開催期間はわずか4年という短いものでした。

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Bryn Colton//Getty Images
4WDを採用した高性能スポーツモデル、アウディ「クワトロ」。
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Heritage Images//Getty Images
ランチアのブランドで、フィアットグループが1982年のWRCに投入した「ラリー」。

 冒頭の動画の中で紹介されている通り、当時のパリ・ダカール・ラリーに投入された「959」は極めて斬新かつ異次元の装備を備え、レーシングカーと呼ぶべきものでした。1985年のレースに出走した初代「959」は、元となった標準の「911」のものをベースにしたエンジンを搭載し、四輪駆動システムについてもベースとなった「911」の仕様を継承したものに過ぎませんでした。

 しかし1986年型でついに「959」は、その完成形を世に示すことになります。シーケンシャルツインターボエンジンに、ポルシェ初となるマルチセッティングの全輪駆動システムが採用することに。そうして「959」は見事、この年のパリ・ダカール・ラリーを制覇します。このクルマこそ、市販車をベースとしてつくられたラリー仕様のスーパーカーの、その後のスタンダードとなったのでした。

le paris dakar au sénégal
Jean GUICHARD//Getty Images
1986年1月20日、第8回パリ・ダカール・ラリーにて。セネガル近辺のステージにてスタックした、#187のポルシェ「959」に対応するドライバー、ローランド・カシミール氏。

 1985年から1986年にかけて、2年間で合計6台の「959」がレース用車両として生産されました。その内の1台が1985年型の「911」の改造車で、2018年に販売された結果、現在は個人の所有となっています。残っている「959」は5台となりますが、その内の2、3台がプライベートコレクションとして保存されていると言われています。

 前述の通り、パリ・ダカール・ラリーは開催地を南米に移した後、2020年からはサウジアラビアを舞台に開催。名前も「ダカール・ラリー」と改称されています。参戦するクルマもカスタムメイドのSUVが多いことから、開始当初とは大きく様変わりしたことも否めませんが、ラリー仕様車が走る最高峰のレースであることに変わりはありません。

自動車メーカーがファクトリーとしてエントリーするケースは近年では減っており、ポルシェも1986年を最後に、ファクトリーサポートカーとしての参戦は行っていません。

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Source / Road & Track
Translate / Kazuki Kimura
※この翻訳は抄訳です