ワクチン投与が開始、
アレルギー反応は?

 2020年12月14日(月)は、アメリカで大きな変化の日となった。

 まず選挙人投票が行われて、バイデン氏が正式に次期大統領と決定した。翌日には上院総務を務める共和党のトップ、ミッチ・マコーネル氏が、バイデン氏勝利を認めて祝福を与えた。

 そして同日、ファイザー社製新型コロナウイルスのワクチン投与が始まった。ワクチンはICUで働くフロントラインの医療従事者から接種が始まったが、2度の接種が必要なことから、3週間の間をあけて2度目を受けることになる。

 実際にすでに第1回目の注射を受けたニューヨークのロングアイランドジューイッシュフォレストヒルズ病院で内科研修医として勤務する、陳 佳奈医師に尋ねてみた。

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写真提供:陳 佳奈医師
勤務する病院で、ファイザー社製の新型コロナウィルスワクチンを注射される陳 佳奈医師。

 新型コロナのワクチンには不安を持つ市民も多いが、医師として接種することには躊躇(ちゅうちょ)はなかったか、陳医師に尋ねてみた。

 「まだ長期の副作用については、不明なので躊躇はありました。ですが、体質的に薬の副作用が起こることはほぼなく、基本的に健康であることから受けてみることにしました。注射した箇所が痛くなるとは聞いていましたが、当日から接種した部分を中心に腕が筋肉痛のようになりました。翌日は、接種した左腕を下にして寝るのはきついな、という程度の痛みがあり、タイラノール(鎮痛剤)を飲みました。その後は、虫刺され跡のような痛痒(いたがゆ)い感じがありました」とのこと。

 なるほど、新型コロナのワクチンは腕が痛くなるということは覚えておいていいだろう。

 陳医師によると、実際に病床が徐々にコロナ陽性の患者で埋まってきていて、今回も40代、50代の人が亡くなっているという。

 「前回の感染爆発時に行ったように、ふだんICUでない病床を、ICUとして使用する病床数を増やして対応しています。その分人手が必要になるので、研修医が引っ張り出されています。無症状でも陽性のことがあるので、たとえ症状がなくても油断せず必ずマスク着用、ソーシャルディスタンスを心がけて欲しいです。高齢者、糖尿病、肺疾患等の基礎疾患を持つといったハイリスクの人に会いに行く時は検査を受けてから行くことをおすすめします。皆さん気をつけてお過ごしください」と陳医師。

 医療前線で働く従事者のためにも一般市民のわれわれは、まず感染しないようにつとめるのが大事だろう。

 アメリカではすでに27万2000人が接種された中で、「6人が激しいアレルギー反応を起こした」と報告されている。低いパーセンテージではあるものの、タンパク質であるかぎりアレルギー反応はあり得るということだ。そのため接種のあとは、30分ほど様子を見るという方法が取られている。国民の不安をのぞくために、ホワイトハウスでは、マイク・ペンス副大統領とその夫人が先陣を切ってワクチン投与を受けた。

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 トランプ政権では、重鎮たちがつぎつぎとコロナ感染したため、感染していないメンバーの中でトップといえばペンス大統領だからだ。トランプ大統領はすでに罹患したために、医師団のアドバイスがないかぎり、接種をしないとされている。

 アメリカでは特に、黒人層においてワクチンに対する不安が高いのだが、これは1930年代から40年間にもわたって行われた「タスキギー梅毒実験」という、黒人男性を対象にした臨床実験があったことに原因がある。

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 梅毒にかかった黒人男性を観察する臨床実験で、「治療をする」と言いながら実際には、なんら治療をしなかったという残酷な人体実験で、現代ではその非倫理性を激しく非難されている。

 こうした負の歴史があるため、黒人層には政府の治療に対する根深い不信があるのだが、それを払拭するために、オバマ元大統領は率先してワクチン接種をパブリックに行うと発言している。

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Former U.S. Presidents Obama, Bush, Clinton willing to take coronavirus vaccine on camera
Former U.S. Presidents Obama, Bush, Clinton willing to take coronavirus vaccine on camera thumnail
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 ワクチンは医療従事者と介護施設入居者が優先され、2021年1月にはエッセンシャルワーカーや教師、消防士ら、そして、疾患を持つ人と高齢者に投与される予定だ。

 私(筆者)の義母も、年内にワクチンを受ける予定となっている。義母は86歳で疾患があり、介護施設に入っているので、ハイリスクのグループに当たる。とはいえ、正直いって、そんなに早く投与されるとは思っていなかったので、そのスピードには驚いた。さらにモデルナ社のワクチンもFDAから認可がおりて、全米に配布される予定となっている。

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すでにイギリスの変異種コロナは
世界に広がっている?

 アメリカでの現時点までの新型コロナによる死者は、33万人を超えている。ことにカリフォルニア州、テキサス州、フロリダ州の感染の高さが群を抜いている。カリフォルニア在住者の友人は、「まわりでも、次々とハウスキーパーが陽性になっている。しかも外食や仕事に出ていない人でも感染していて、こんなことはさすがにカリフォルニアでも初めてだ」という。

 つまり飲食店ではなくて、スーパーマーケットや配達から感染していると考えられるのだが、NYでも3月にコロナが猛威をふるった時は、ロックダウンしか防ぎようがなくなっていた。イギリスでは、感染力が強くなった新型コロナ変異種が報じられているが、ファウチ博士も「すでにアメリカ国内に入っていると考えられる」とコメントしており、その可能性もありそうだ。

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Fauci says travel ban may be 'premature' in light of coronavirus mutation
Fauci says travel ban may be 'premature' in light of coronavirus mutation thumnail
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 さらに全米を震撼させたのが、フロリダ州オーランドからロサンジェルスに向かうユナイテッド機内で、新型コロナで死亡した男性乗客のニュースだ。この乗客は搭乗した時点で、すでに呼吸が苦しそうにしていたという目撃者の話があるが、わずか離陸後90分後で死亡したというのだから恐ろしい。

 感染していることを本人も妻も知りながら搭乗したという身勝手な行為と、検温させずに乗客させた航空会社の責任も大きい。他の200人の乗客にも感染追跡が行われているが、そういうテロ行為に近いことをする人がいるという危険があるということだ。

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 こうなってくると、ワクチン接種とコロナ伝播力との戦いとなるが、「ワクチンによって感染が劇的に経るのは、2021年の夏になるだろう」というのが、おおかたの専門家の見解で、来夏になるまでマスク生活は続きそうだ。

 こんな世相でも多少明るくしてくれるニュースといったら、サンタクロースもワクチン接種をしたという話だろうか。

 「サンタさんは今年プレゼントを持ってこられるの?」と心配になっている全国の子どもたちにむけて、ファウチ博士はメッセージを披露した。

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Kids ask Dr. Fauci when they can hug grandma again
Kids ask Dr. Fauci when they can hug grandma again thumnail
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 「北極にいって、サンタクロースにワクチンを打ってきたので、サンタさんはまったく出動に問題なし。みんなの家にプレゼントを持ってやってきますよ」とのことで、おかげで全世界の子どもたちは、今年も安心してプレゼントをもらえたことだろう。

陽性率2%でも
インドア飲食禁止のマンハッタン

 NY州でもコロナ感染は増え続けていて、12月半ばには陽性者数が一日で1万2000人を超えた。NY市でもスタテン島やブルックリンの一部地域は陽性率が10%を越えたホットゾーンになっている。

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写真提供:村瀬裕子
高級フレンチ・レストランの「ダニエルズ(Restaurant DANIEL)」では、外にもエレガントなアウトドアダイニング席を設置されている。
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写真提供:村瀬裕子
2020年7月8日より、この店のテラスに「ダニエル・ブールー・キッチン・オン・ザ・テラス」としてオープン。現在は冬支度として、テント形態に。

 しかし、マンハッタンに限っていえば、実は陽性者のパーセンテージは、1.74%から5.8%程度と、それほど高くない。東京都の陽性率7%に比べると、ずいぶん低く感じるが、これはPCR検査数が圧倒的に多く、NY州では25万回ものテストが行われたことによる。

 それでもインドアダイニングは禁止され、この寒い最中に、アウトドアとテイクアウトだけと決められた。レストランも生き残るのに必死であり、まるで建て増ししたような頑丈な造りのアウトドアスペースでヒートを提供するレストランもある。

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写真提供:黒部エリ
雪が積もった中、アウトドアダイニングで果敢に食事をするニューヨーカー。

 気温が5度くらいまで上昇していれば、外でダイニングをするニューヨーカーたちが多いのもたくましい。高級レストランは、アウトドアでもエレガントな雰囲気をつくり上げているが、その設備投資にしたってたいへんなもので、これから氷点下の気温が続く中、悲しいながら、さらに潰れるレストランも増えるだろう。

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写真提供:黒部エリ
今年もロックフェラーセンター前のクリスマスツリーは、点灯されている。例年とは比べものにならないほど人出は少ないが、それでもホリデーにはかなりの見物客が来ていて、感染が懸念される。

 あまりに淋しいホリデーシーズンとはなったが、それでもロックフェラーセンターのクリスマスツリーは今年も点灯され、サックスフィフスアベニューが恒例としているイルミネーションショーも無事行われ、ニューヨークの街並みはきらきらと輝いている。また、タイムズスクエアのカウントダウンとボールドロップも無観客で、テレビ中継で行われる予定だ。

93兆円の経済支援の行方は?

 失業者は増えつづけ、アメリカでの新規失業保険申請者数は88万5000人を越した。2020年12月21日にアメリカ連邦議会は、9000億ドル(93兆円)の新型コロナ追加経済支援策を通過させた。これによって、ひとりあたり600ドルの直接給付や、週300ドルの失業保険の上乗せ、また企業支援や賃貸人への支援が行われる予定だ。

 ただし、現在(12月23日付け)トランプ大統領はサインをしていない段階で、いきなり「しょぼい600ドルではなく、2000ドルにするべきだ」と発言。これには民主党のナンシー・ペロシ下院議長は「2000ドル案に賛成する」と述べていて、この4年間で初めてトランプ大統領とペロシ議長の意見が合致するという奇妙な事態になっている。

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 ホームレスの数は1930年代の大恐慌時代と同じレベルに達していて、ニューヨーク市は今年10月時点で、5万7341 人のホームレス(うち1万8653人が子ども)がシェルターで過ごしている。一時金ではなく、はたして長期にわたった経済の再建ができるのかどうか、バイデン次期政権にかかるプレッシャーはとてつもなく重い。

閣僚に指名された
ブティジェッジ氏に注目!

 この状況下でも、バイデン次期政権への移行は進んでいて、閣僚をつぎつぎと指名しているが、ひと言で言えば、ダイバーシティに富んだ人選だと言える。副大統領のカマラ・ハリス氏は言うに及ばず、女性閣僚の数が多く、ラティーノやブラック、そしてネイティブアメリカン系の人材も登用されている。

 では無理に、ピープル・オブ・カラーや女性の登用をしているのかと言えば、そうではない。高度の専門的知識を持ったテクノクラート(技術者・科学者出身または高度の専門的知識を持った行政官・高級官僚)が多い顔ぶれだ。中でも注目したいのが、運輸長官に指名されたピート・ブティジェッジ氏だ。

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 彼は若干29歳で錆びついた製造業の町の市長となり、なんと街にハイテクのインフラをつくって企業を誘致し、経済をよみがえらせたという手腕の持ち主だ。さらに高学歴であり、軍隊にも行き、教会にも熱心に通い、清潔感あふれるという理想のアメリカン・ガイだ。ひとつネックになるのは、ゲイであることをオープンにして、同性婚をしているところ。民主党大統領候補予備戦でも、早々とレースを下りた。今回の登用では、アメリカでは初のLGBTQ閣僚となる。

 「ジミー・カーター政権以来の弱い大統領」と揶揄されることもある、バイデン次期大統領だが、こうしたダイバーシティに富んだ人事をすることは画期的だといえるだろう。政治家人生が長くて、カトリック教徒で白人男性という王道にあるからこそ、ダイバーシティを盛りこめたともいえる。そのダイバーシティがどのように政治に反映されるか、ぜひ見たいところだ。

1月5日にジョージア州選挙で
政治の行方が決定に!

 さて今回の選挙では大統領選ばかりがニュースとして注目されているが、実は大きなポイントとなっているのが、1月にある上院戦の行方だ。たとえバイデン政権になっても、上院を共和党が多数派として握っていれば、政策が通らない。そのカギを握っているのが、2021年1月5日に行われるジョージア州の上院議員2席の選挙だ。2020年 11月3日に行われた選挙では、現職の共和党議員も、対抗する民主党候補も過半数を取れなかったので、再び決戦投票が行われることになる。

 現在、上院は共和党が50席、民主党が48席と、共和党がリードしている。もしジョージア州の議席を2席、民主党が奪えば、50対50議席の同数となり、ハリス次期副大統領が一票を投じられるので、民主党が上院をコントロールすることができる。

 反対に、共和党が議席を取れば、ねじれ国会となって、バイデン次期大統領の政策は形にできにくくなるだろう。

トランプ組に恩赦の大盤ぶるまい、
自己恩赦も!?

 では、毎度お騒がせのトランプ大統領はどうかというと、いまだに選挙に不正があったと言い立てて、敗退を認めていない。それどころか「コロナのウイルスはトランプ大統領が選挙に負けるためにつくられて、ばら撒(ま)かれたもの」というバズを生んだ陰謀説ツイートをリツイートした。もちろん、このツイートには根拠も証拠もない。

 トランプ側近の会議では、投票機の押収や戒厳令発動も意見として出されたとも報道されていて、あくまで敗北を認めないしぶとさには驚くばかりだが、それでも近頃はめっきりトランプ援護の声が聞かれなくなってきた。ずっとトランプ政権に従って来たバー司法長官も「選挙に不正は認められない」として、トランプ氏と袂(たもと)を分かつ姿勢で辞任することになった。

 前述のようにミッチ・マコーネル上院議員も、もはや次期政権を容認している。すでに保守派の最高裁判事を6人そろえたので、トランプ政権の使命はやりぬいたといったところだろうか。そんな中大きな話題を呼んだのが、トランプ大統領による恩赦の大連発だ。同年同月22日には、トランプ大統領が恩赦15件と、減刑5件を発表した。

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 この中には、金融犯罪で有罪判決を受けた共和党の元議員2人、またイラクの民間人を殺害したとして有罪判決を受けた元ブラックウォーター社の軍人4人も含まれる。さらにロシア疑惑調査で、元トランプ選挙キャンペーン幹部であり、虚偽の証言をしたとして有罪判決を受けたジョージ・パパドプロス(George Papadopoulos)氏と、同じく偽証罪に問われた弁護士アレックス・バン・ダー・ズワン(Alex van der Zwaan)氏に対して恩赦を与えた。二人共すでに、短い刑期は終えている。 

 同年同月23日には、同じくロシア疑惑に係わり、有罪判決を受けた元トランプ陣営選対本部長ポール・マナフォート(Paul Manafort)氏も、長年の盟友でであってロジャー・ストーン氏も、さらに娘婿クシュナー氏の父親、チャールズ・クシュナー氏も恩赦している。

 また、これに先だって、同じくロシア疑惑調査で有罪を認めていたが、のちに撤回したマイケル・フリン元大統領補佐官も、恩赦。身内に恩赦ばらまきという前代未聞のことをやってのけた。

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 つまり、ロシア疑惑に係わったトランプ組の全員に恩赦を与えているわけで、ロシア疑惑をなかったものにするつもりらしい。ロシアが関与したとみられる米政府機関への大規模なハッカー攻撃では、米ハイテク企業や大学、病院にも不正侵入された形跡があることが判明したが、トランプ大統領はなぜかロシアを非難せず、「中国によるハッキングのほうが甚大だ」と、どこまでもロシアをかばう姿勢だ。

 さらに弁護士であるルドルフ・ジュリアーニ氏、そして自分の子どもたち三人、つまりドナルド・ジュニア、エリック、イヴァンカ・トランプ氏に、前もって恩赦がつけられるかを検討しているとも言われている。最終的にはトランプ大統領が、「自身に恩赦」を与えるのではないか? とも目されている。と言っても、恩赦は連邦犯罪にしか適用されないので、ニューヨーク州の脱税については起訴される可能性もあるのだが…。

planet hollywood hosts 4th winner of "the apprentice"
Paul Hawthorne//Getty Images
2004年1月より第1シーズンが開始されたリアリティ番組、『アプレンティス(The Apprentice)』のホストとして活躍していた時代、2005年12月15日にニューヨークで開催されたプラネットハリウッドでのパーティーの後、この番組のシーズン4のフィナーレに出席したときのトランプとメラニア夫人。

 現在でも敗北を認めないトランプ大統領が戒厳令を出すのではないか、あるいは就任式当日に向けて、支持者を集めて勝手に自分の就任式をするのではないかという懸念もあがっている。

 Qアノンなどの陰謀説をとるトランプ支持者たちは、いまだに熱心に支持していて、支持者が立ちあげた「2度目の就任式」なるフェイスブックのオンラインイベントには6万人が参加を表名している。

 厄介なのは、陰謀論者にとってメディアはすべてウソつきになので、例え「陰謀論には証拠がない」といっても聞く耳がないところだ。もしかすると、トランプ大統領がそうした支持者や白人至上主義のプラウド・ボーイズらに、「結集せよ、立ちあがれ」と言えば、大きな示威行動に出るかもしれない。

 はたして大人しくホワイトハウスを出るのか、まだまだ「お騒がせ」がありそうだ。あくまで個人の意見ながら思うのは、「ホワイトハウスを出ることになるのを、少なくともメラニア夫人は喜んでいるだろう」ということだ。

 実は10年以上前に、あるパーティーでドナルド・トランプ夫妻を見かけたことがある。当時はまだリアリティテレビのスターであって、全く政治的な言動もしていなかった。一緒にいたメラニア夫人は、華やかなドレスに身を包み、にこやかにカメラマンに囲まれていた。

 トランプ政権になってからの、いつも引きつった堅い表情をしている夫人ではなく、いかにも富豪のセレブといった生き生きした姿だった。ホワイトハウスを出られてうれしいのは、夫人だけかもしれない…。


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写真提供:黒部エリ

黒部エリ
Ellie Kurobe-Rozie

東京都出身。早稲田大学第一文学部卒業後、ライターとして活動開始。「Hot-Dog-Express」で「アッシー」などの流行語ブームをつくり、講談社X文庫では青山えりか名義でジュニア小説を30冊上梓。94年にNYに移住、日本の女性誌やサイトでNY情報を発信し続けている。著書に『生にゅー! 生で伝えるニューヨーク通信』など。