ニューヨークの治安は悪化、
冬をサバイバルできるか?

これはxの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

 はじめにニューヨークの様子を語ると、驚くほど、治安が悪くなっている。NY市警によれば、9月の銃発砲事件は2019年の同月比127%の増加であり、殺人事件は76%の増加となっている。マンハッタン内でも銃に打たれたり、ナイフで刺されたり、といった事件が急増。それも治安の悪い地域ではなくて、今までは安全とされていたミッドタウンなどで起こっているのだ。

 9月27日にはジャズピアニストの海野雅威氏が、地下鉄駅構内で若者グループに暴行され、骨折する重傷を負った。また10月5日にはコリアンタウンでは日本人女性が押し倒されて、強盗にあうという事件も起こった。

 アジア系に対するヘイトクライムが増加していることから、NY市警ではタスクフォースがつくられた。残念ながら、現在のニューヨークは荒れていて、夜は出歩きたくない状況になっており、観光にも出張にもすすめられない。

これはxの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

 レストランは25%の屋内ダイニングを許可されるようになったが、それで営業が成りたつわけもない。アウトドアダイニングは引き続き許可されているが、ニューヨークの寒い気候をいかに乗り切れるのか、各レストランはテントを張ったり、ヒーターを導入したりして、サバイバルを図っている。

 ダウンタウンにある(NY初の北海道ジンギスカンで注目される)「Dr Clark(ドクター・クラーク)」では、アウトドアダイニングに日本のこたつを導入した。これは共同経営者の金山雄大氏が北海道出身であるため、雪のかまくらにこたつを入れて楽しむイメージで自社のチームで製作したという。

instagramView full post on Instagram


 カスタマーには靴を脱いでもらって、日本式にコタツ入ってもらっているが、SNSでバズって、たちまち予約が殺到したという。また、「多くのレストランから、こたつ設置に問い合わせが入っています」と金山氏。

 この冬は、KOTATSUがニューヨークでトレンドになるかもしれない…。

ネットフリックスドラマのような展開

 大統領戦へのカウントダウンも、波瀾万丈だ。

 なにより世間を驚かせたのが、10月2日にトランプ大統領夫妻の新型コロナ感染陽性が伝えられたことだ。これは側近であるホープ・ヒックス氏が感染したことから、ホワイトハウスで感染が広がり、共和党幹部たちがつぎつぎと感染した。そしてトランプ大統領は米軍医療センターに入院して、まだ未認可の抗体カクテルなどの治療を受けた。そしてたった3日で病院を出て、ヘリコプターでホワイトハウスに着くなり、マスクを外すというパフォーマンスをしてみせたのだった。

president trump arrives back at white house after stay at walter reed medical center for covid
Win McNamee//Getty Images
2020年10月5日に、ワシントン D.C.のウォルターリード国立軍事医療センターからホワイトハウスに戻ると、マスクを外してスピーチするトランプ氏。入院は3日間で済みました。

 それこそハリウッド映画かネットフリックスのドラマのような展開だ。

 感染者のひとりであるクリス・クリスティ前ニュージャージー州知事は、退院後に「マスクをつけなかったのは、自分の間違いだった」と反省を語った。一方、トランプ大統領のほうは意気盛んで、「ここ20年来ないほど元気だ」と豪語して、ラリー(選挙の遊説活動となる大規模集会)でも、コロナに罹患しても打ち勝つ強い大統領のイメージを打ち出している。

 アメリカは第二波どころか、まだ第一波の感染拡大まっただ中で、10月22日には全米でのあらたな感染者が7万4000人を超え、過去最大の数値を叩きだした。ことに感染が多いのは、テキサス州・カリフォルニア州・フロリダ州・イリノイ州だ。ニューヨーク市はクラスターが出たエリアをレッドゾーンとして再びビジネス閉鎖をしたところ、再爆発をまぬがれている。

史上最もアグリーな
大統領戦

 大統領戦の両候補が政策について討論をするディベートも、アメリカで「史上最悪」と話題になった。

 第一回目のディベートでは、政治討論になる以前にトランプ大統領が、バイデン候補のスピーチ中に横入りするので、醜い様相を呈したものになったのだ。バイデン候補も容易に横入りをさせてしまうほど、喋るスピードが遅く、弱々しい印象は否めなかった。それは「老人ホームでの喧嘩」とSNSでも揶揄されるほど、政治討論の体をなさないディベートだった。

donald trump and joe biden participate in first presidential debate
Win McNamee//Getty Images
2020年9月29日、オハイオ州クリーブランドケースウエスタンリザーブにあるケースウエスタンリザーブ大学の健康教育キャンパスにて。共和党大統領候補の現大統領ドナルド・トランプ氏(74歳)と民主党大統領候補のジョーバイデン(77歳)が、同年11月3日の本選挙に向け第一回目の討論を繰り広げました。

 次に行われた副大統領候補であるカマラ・ハリス上院議員と、マイク・ペンス副大統領のディベートも、なかなかにドラマだった。ハリス上院議員がスピーチしている間に、ペンス副大統領が割り込んでくるので、苦笑いをしながら、「私が話しているんです、副大統領、私が話しているんですよ」(I’m speaking)と抗議をした。これはしばしば職場でも起こる光景で、男性が女性に対して偉そうに解説するMansplaining(マンスプレイニング)という行為に当たる。それに対して、ビシッと切り返したハリス議員の態度に多くの女性たちが喝采を送ったのだった。

 またどういうわけか、ディベートの最中にハエがペンス副大統領の頭に止まり、しばらく微動しないまま、全国放送に流れるというハプニングもあった。

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
Fly Lands On Pence’s Head, Temporarily Steals Show of 2020 VP Debate | NBC News
Fly Lands On Pence’s Head, Temporarily Steals Show of 2020 VP Debate | NBC News thumnail
Watch onWatch on YouTube

 このハエがバズとなって、翌日にはハエ叩きが売り出されたり、I’m speaking と書かれたTシャツが発売されたりと、このあたりがアメリカ文化の面白いところだが、こうしたキャッチーな言葉やアイテムが出ると、すぐに商品になる…。

 そして三回目のディベートでは、ついに相手が話している間はミュートにされるという策が取られて、司会者のクリスティン・ウェルカーがよく仕切り、双方の暴走を許さなかった。

 トランプ大統領はバイデン政権になれば、増税や地球温暖化対策による景気減退、社会主義的保険制度になると批判、自分が経済成功にみちびくと語った。一方バイデン候補は、地球温暖化対策や人種差別撤廃に重きをおき、「自分に投票する人もしない人も、全員がアメリカ人です。この国の品性と尊厳がかかっています」と、統一のイメージを打ち出した。

 経済か、あるいはヒューマニティか。アメリカの未来を選ぶのは、どちらになるのだろうか。

白人至上主義者を否定せず、
Qアノンをリツイートする大統領

 こうしたディベートや対話集会を経て、最も問題視されるのは、トランプ大統領が白人至上主義者や陰謀論に「ノー」を示さなかったことだ。

 第一回ディベートで司会者から訊かれた「白人人種差別主義者たちを否認するか」という問いには、明確な否定がなく、バイデン候補から「例えばProud Boysはどうだろうか?」と水をむけられると、「いったん停戦して、待機せよ」と言い放った。言わば大統領から、私兵のように「待機せよ」と言われたことで、白人至上主義団体のProud Boys(プラウド・ボーイズ)側が喜ぶ結果となってしまったのだった。

 このプラウド・ボーイズは、フレッド・ペリーのブラック地にイエローのポロシャツを制服にしているために、人種差別団体と結びつけられたフレッド・ペリー社は激しい不快感を表し、アメリカとカナダでの特定カラーの商品販売を中止すると決定した。トランプ大統領自身が白人至上主義であるかどうかは別ではあるが、その層を票田としているのは間違いない。

 また市民討論会では、モデレーターのサバンナ・ガスリー氏が、トランプ大統領が、陰謀説をリツイートしたことに対して追求した。

 「あなたは大統領なのです。好き勝手にリツイートする、誰かの頭のおかしいおじさんではないのです」

 このセリフも、たちまちネットでバズを生んだ。

an american flag, a trump re election flag, and a qanon flag
Pacific Press//Getty Images
激戦が予想される、アメリカ中部ペンシルベニア州ダンビルにて、2020年10月21日に撮影された風景。納屋にアメリカ国旗とともにトランプの再選旗、そして「QAnon」の旗が表示飾られています。

 さらに「QAnonが狂っていて、真実ではないと否定できますか?」というガスリー氏に対して、トランプ大統領は「彼らが何なのかは知らない、私が知っているのは、彼らが小児性愛者に激しく反対しているグループであることだ」と否定を避けた。

 QAnon(Qアノン)というのは、政府内部にいるコードネームQが流す陰謀説のことであり、そこではディープステートという闇の政府があり、ハリウッドや民主党エリートが悪魔崇拝の児童売春に係わっているといった説が流れていて、多くがネットで拡散されている。その陰謀論では、悪のエリートから民衆を救うのが、トランプ大統領という説になっているのが特徴だ。

 トランプ大統領のラリーには、「We are Q(われわれはQだ)」と書かれたTシャツを着た支持者たちが集まる。この現代に、まるで中世のような悪魔崇拝の儀式という陰謀論が流れるのも、宗教国家アメリカらしいところで、実際にQアノンにはエヴァンジェリスタなどのクリスチャンが多いとされている。またリベラルが、女性による中絶の権利を主張するのに対して、中絶の禁止を唱える保守キリスト教徒の多くもトランプ大統領再選を支持している。

 再びQアノンの話に戻るが、「オバマ大統領はオサマ・ビン・ラディンを殺害しておらず、実は隠した」という陰謀論まで展開している。トランプ大統領は、Qアノンにつながるアカウントの「オバマとバイデンは(ビンラディン殺害任務に当てられた)海軍特殊部隊シールズ戦闘員6名を殺害した。証拠がある」というツイートを、リツイートした。これには実際に任務に当たった当の元シールズ戦闘隊員が、「われわれはオバマ大統領からビンラディン殺害任務を命じられました。影武者ではありません」と、レスを返したというオチがつく。

 オンラインに流れる陰謀論を鵜呑みにする人たちが多くいるのが、政治の分断をますます生み出している。アルゴリズムで提供されるニュースは自分が聞きたいものばかりをそろえて、どんな陰謀論であっても必ずそこに証拠が出てくるからだ。そして、それがフェイクニュースであるのか? 真実であるのか? 見きわめにくい。

joe biden and running mate kamala harris deliver remarks in delaware
Drew Angerer//Getty Images

バイデン支持のテイラー・スイフト、
トランプ支持の50セント

 アメリカの大統領選に付き物と言えば、セレブによる支持だ。ハリウッドやエンタメ界のセレブは民主党支持者が多いが、中でもテイラー・スイフトは積極的にバイデン支持で、バイデン/ハリスのロゴ入りクッキーを焼きあげた画像をインスタグラムにポストした。

これはxの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

 他にもスティーブン・カリー、ジェニファー・ロペスとアレックス・ロドリゲス、ドウェイン・ジョンソン、ビリー・アイリッシュ、レオナルド・ディカプリオ、ジョン・レジェンド、トム・ハンクス夫妻、ヘイリー・ビーバー、ジャスティン・ティンバーレイクとジェシカ・ビール、カルディB、リン・マニュエル・ミランダといった錚々たるセレブが、バイデン支持を掲げている。

 一方、トランプ支持を打ち出したセレブは、実は2016年よりも増えている。前回はキッド・ロックや、銃賛成派のテッド・ニュージェントら、いかにも白人ロック層が支持していたが、今回は異変がある。

 例えばカニエ・ウエストだ。彼自身がバースデー党から出馬して自分自身を支持しているのだが、実際に選挙活動をしているわけではなく、「バイデンから票を奪うためだ」と公言している。またラッパーの50セントも、バイデンによる増税を懸念して、トランプ支持を表明している。

 構造的人種差別に反対するブラック・ライヴズ・マター運動について、バイデン候補は支持の姿勢を見せ、トランプ大統領は「法と秩序」をもってデモを取り締まるという立場にたち、警察の暴力で亡くなった被害者たちに対する弔辞は一切していない。

 そのため黒人層の多くがバイデン支持ではあるのだが、カニエや50セントのような富裕層の黒人が、トランプ大統領を支持するのが、肌の色だけではない貧富の差も感じさせる。

president trump campaigns for re election in virginia
Drew Angerer//Getty Images

共和党内に広がる
トランプおろし

 さて今回の大統領戦の異変は、共和党内からも離反が起きていることだろう。

 トランプ大統領再選を支持しない共和党の大物としては、コリン・パウウェル元国務長官、ウィリアム・コーエン元国防長官、トム・リッジ元国土安全保障長官、ジョン・ボルトン元国家安全保障問題担当大統領補佐官など、ゴリゴリの保守大物たちが反トランプにまわっている。

 ジョージ・ブッシュ元大統領、ミット・ロムニー上院議員、故ジョン・マッケイン上院議員の未亡人も、トランプ再選を応援していない。

 また、「Lincoln Project(リンカーン・プロジェクト)」は、共和党内で立ちあげられた反トランプ団体だ(“Defeat President Trump and Trumpism at the ballot box(トランプ大統領とトランプ主義を投票所で打ち負かすこと)”をミッションとする)。奴隷解放宣言をしたリンカーン大統領は共和党であり、共和党は民主主義を守る党だとして、反トランプイズムを掲げる。

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
Girl in the Mirror
Girl in the Mirror thumnail
Watch onWatch on YouTube

 YouTubeにアップされた動画「鏡の中の少女(Girl in the Mirror)」では、トランプ大統領の女性蔑視を糾弾している。ここで少女たちが、自分たちのロールモデルを探しているときに、トランプ大統領によって女性がバカにされたり、醜いと罵られたりするさまをテレビで観て、果たして少女はまともな自己評価を育てられるようになるだろうか? という意見広告だ。

 さらにジュリアーニ前NY市長は、トランプ大統領の右腕であるのだが、実の娘であるキャロライン・ローズ・ジュリアーニ氏が、「父の考えは変えられないかもしれませんが、バイデンに投票してください」と訴えた。

これはxの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

 この選挙直前のタイミングで、女性の権利獲得のために戦ってきたルース・ベイダー・ギンズバーグ最高裁判事が亡くなり、その空席に保守派のエイミー・コニー・バレット判事を就けることをトランプ政権が指名して、10月27日に就任した。

 保守派の裁判官を獲得すれば、あとは共和党内でもトランプ続投を望まず、4年後に政権奪取するほうが得策だと考える党員も少なくないだろう。共和党 VS 民主党の闘いというよりも、トランプ党 VS それ以外という様相をていしており、混迷をきわめている。

 では、確実にトランプが破れるかと言えば、そうとも言えない。トランプ党の支持者が熱狂的であるのも事実だ。ニューヨークは民主党寄りの(都会型・工業地帯の州である)ブルーステーツだが、それでもステタンアイランドやロングアイランドに行くと、トランプ賛同者の看板が家々の前に立てられ、またクルマや船を連ねて支持活動を行っている。

 マンハッタンにまでMAGAやTrump2020の旗を取りつけたクルマを駆り出して示威行動を取る、暴走族のようなトランプ支持者も多い。だいたいが郊外の家族が使用する四輪駆動のバンであるのも特徴だ。他州では、旗を立てたクルマを走らせながら、銃を掲げて示威行為する者すらいる。

 世論調査ではバイデン候補がリードしているとはいうものの、実際には表に出ない隠れトランプ支持者も多くて、調査数がそのまま当てにはならない。

本当の危険は、
選挙戦のあと?

 激戦はミシガン、アリゾナ、フロリダ、ノースキャロライナ、ペンシルバニア、アイオワ、ジョージアといった州で、どちらに転ぶかまだわからない。さらに言えば現在、懸念されているのが投票日当日と選挙後だ。「全米で暴動が起きるのではないか」という怖れがあるからだ。

 すでに全米各地で衝突が起こっている。10月24日には、ニューヨーク市内においてトランプ大統領を支援するキャラバンと反対派のデモグループが衝突し、逮捕者が出る騒ぎがあった。ペンシルバニア州では10月26日、黒人男性のウォルター・ウォレス氏が警察官により射殺される事件が起こり、抗議行動が発生し、それに乗じて略奪が発生するなど、不穏な状況となっている。また、マサチューセッツ州でも郵便による投票箱が焼かれるなど、各地でさまざまな事件が起こっている。

 NY市警は投票妨害行為などに対処するため、選挙当日の投票所1201カ所に警察官を配置して警戒を強化すると発表した。

これはxの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

 投票日の妨害行為を懸念して、期日前に投票する人たちも多い。期日前投票数はすでにNY市で59万人、そして全米では8000万人(10月29日時点)にもなっていて、かつてない規模で投票されている。すでに2016年度の総投票数の半分に達する人数が投票をしているところに、今回の大統領戦の熱さを感じる。

 3月のコロナ禍以来、アメリカでは銃購入がかつてないほど伸びている。これはロックダウンやデモによる政情不安に備えた自衛のためと考えられるが、もはやパニック映画のような社会現象だ。2020年は3月から約300万丁も新しく銃が購入されている。

 ミシガン州では、グレッチェン・ウィットマー州知事(民主党)の誘拐と州議事堂への襲撃を企てた事件が起こり、13人(のちに14人)のグループが逮捕された。彼らは「Wolverine Watchmen(ウルバリン・ウォッチメン)」と名乗る武装集団で、新型コロナ対策としてウィットマー知事が施行した規制ルールに反発。トランプ大統領もウィットマー知事に対して規制緩和を求めていた。

 また、19歳の青年アレキサンダー・トリースマンが、バイデン候補殺害計画を立てた容疑で逮捕された。彼は武器を大量に購入して、バイデン候補殺害を企てたてていたという。驚いたことに彼の亡父は、人権派のユダヤ人弁護士で、かつて「チベットのシンドラー」とも言われたほど、チベット移民に貢献したという人物だ。そんなアレキサンダー容疑者が参加していたのが「iFunny」というアプリで、ここでは白人至上主義やネオナチ、あるいは大量殺人などのポストがカジュアルに書き込まれていると言う。

これはxの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

 このような状態では、例えトランプ大統領が負けたとしても、それを認めずに選挙に不正があったとして、ホワイトハウスに居残ることも考えられるし、同調する白人至上主義団体が武装することもあり得る…。

 反対にバイデン候補が敗れたとしても、不正があったとして各地でデモが起きたり、それに対抗する民兵が出動したりするかもしれない。多くのニューヨーカーが選挙後に不安を感じており、高級ビルディングではあらたな警備員を雇い、NY市警からは店舗に投票日に起こる暴動や騒乱に備えるよう注意がうながされていて、また高級ブティックは板で店舗を囲うことになりそうだ。

 次に何をするか予想がつかない「トランプ劇場」に翻弄されてきたアメリカだが、対立と分断が進んだ4年間の結果は、果たしてどうなるのか。全米で巨大な衝突の火が上がらないことを願うばかりだ。


face, photograph, brick, beauty, pattern, snapshot, wall, brickwork, design, photography,
写真提供:黒部エリ

黒部エリ
Ellie Kurobe-Rozie

東京都出身。早稲田大学第一文学部卒業後、ライターとして活動開始。「Hot-Dog-Express」で「アッシー」などの流行語ブームをつくり、講談社X文庫では青山えりか名義でジュニア小説を30冊上梓。94年にNYに移住、日本の女性誌やサイトでNY情報を発信し続けている。著書に『生にゅー! 生で伝えるニューヨーク通信』など。