※まだこの作品をご覧になっていない人は、本記事は“かなりのネタバレ”を含みますのでご注意ください。

彼女は戦いに来て、戦って帰って行った ——。

最後までこのドラマを視聴した人は、「その結末は、物語の始まりと同じくらい悲痛なものだ」ということに同意してくれるはずです。主人公のユン・ジウ(ハン・ソヒ)は、復讐にすべてを捧げていました。そして視聴者は、その危険な綱渡りが「万事順調にすすむはずがない」とわかっていても、シリーズがすすむにつれて「ジウはもしかしたら、ハッピーエンドを迎えられるかもしれない」と淡い期待を抱かずにはいれなかったはずです。あるいは少なくとも、立派な結末が待っているのだろうと…。

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ですが、最終エピソードのラスト20分でその淡い期待も打ち砕かれます。私たち視聴者の唯一の希望であった同僚でありパートナーのチョン・ピルト(アン・ボヒョン)が、殺害されるのです。

ジウは、有名なギャング(潜入捜査官=アンダーカバー)の娘で、周囲の人間からは疎まれていました。彼女の人生に暗い影を落とした日、つまり彼女の誕生日に、父親は彼女の目の前で射殺されました。彼女はドアの覗き窓から殺人を目撃しますが、父親は彼女が巻き込まれないように最後の力を振り絞って、娘がドアから出られないようにドアノブを握り続けます。

そうした中、このシリーズで最も見事なパラレル・プロットと言えるのが実は、この第1話の殺人事件よりも前にさかのぼったところにあります。そのためには、オープニング・クレジットに戻る必要があります。

ジウは学校から追い出された後、ナイフを持ったいじめっ子を倒すなど、自分がとんでもないファイターであることをアピールしていました。ですが、ジウが裏社会に潜入して父親の仇を討つために受けた警察の訓練やマフィアの試練に対する様子は、彼女がすでに必要なスキルをすべて身につけていることを示唆していたというわけです。

シリーズのクライマックスは、ジウが父のかつての親友であり、父の死の原因となった麻薬王のチェ・ムジン(パク・ヒスン)と対決する場面になります。パートナーとなったピルトと一夜を共にした後、ジウは二重生活をやめ、父の仇を討つという決意を捨てようと考えます。しかし、ジウが助手席に乗ったままクルマを走らせていたところ、赤信号で停車中にバイクに乗ったムジンによって、ピルトは頭を撃たれて即死してしまうのです。

そうして唯一頼れる存在の人が、自らの膝の上で亡くなったのです。ジウはピルトが所持していた銃を持ちさり、彼女が諦めかけたことをやり遂げるために再び出発します。そして、ここから血の海が始まるということに…。

圧倒されるモンタージュ(複数のカットを組み合わせたシーン)の中で、ジウはムジンを守る子分たちを一人で倒していきます。血、銃弾、ナイフ…ギャング映画のすべてがここにつまっていると言っていいでしょう。やがて彼女は、エレベーターでムジンのところへ登っていきます。ムジンは彼女を待ち受け、「ドンフン(彼女の父親)は意気地なしだった」と語り始めるのです…。

そしてジウも、父親を死へと追いやった警察の銃を床に置き、「平凡に生きたくて、ためらっていた」「ためらったせいで、大切な人がまた死んだ…」と言います。彼女に優しさと愛を与えてくれた、たった1人の人間を奪われたことによって、彼女はとうとう自分の手を汚してしまったのです。その上彼女はさらに、「化け物になっても殺したい」とムジンに言ったのです。

ジウはナイフでの激しい戦いの末、ナイフを失います。これで絶体絶命のように思われましたが、ムジンのとどめの一撃を交わして彼に向け、腹部に突き刺すのです。ジウは彼女に向かって銃を撃とうとしますが、弾倉にはもう弾はありません。ジウは最後に彼の胸を刺し、彼の死を見届けるのでした…。

エピローグでは、彼女が生きて両親(のお墓)に会いに行ったシーンが描かれており、父親が立派な警察官として殉職したという栄誉を取り戻したことになります。シリーズの最後にジウは、ピルトと一緒に過ごした喜びを思い出し、背を向けて墓地を後にするのでした…。

「マイネーム: 偽りと復讐」の全8話は現在、Netflixで配信中です。

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