サンダンス映画祭からは、毎年大きな話題になる映画が複数出てきます。ですが、2019年は『Leaving Neverland(原題)』ほどの衝撃的な作品は他にありません。この映画は、少年時代にマイケル・ジャクソン(以下、マイケル)の付き添いをしていた2人の男性が、ネバーランド・ランチでジャクソンから受けたという性的虐待について表立って証言するものです。

 製作したのはHBOとチャンネル4で、英国では年内に2部構成で放映される予定(日本公開未定)となっていますが、まずはサンダンス映画祭で初公開されました。

映画の内容について 
 
 ダン・リード監督によるこのドキュメンタリーは、主にジェームズ・セーフチャック氏とウェイド・ロブソン氏の2人の話を軸に展開します。このドキュメンタリーについてのほとんどの報道は、マイケルの虐待疑惑に注目しています。が、4時間近くあるこの作品で取り上げられるテーマは、虐待自体にとどまりません。セーフチャック氏やロブソン氏、2人の母親や妻、兄弟などのインタビューを通して、虐待やその影響についてより幅広い視野を与えるものとなっています。 
 
 ニュースサイト「スレート」によれば、2人はこのドキュメンタリーの中でマイケルに性的行為と引き換えに宝石類をプレゼントされたことや、マイケルから「性的虐待についての経験を明かせば、残りの人生は刑務所でおくることになる」との脅迫を受けたことなどを語っていると言います。一方、この映画の後半部分では、虐待の被害者やその周囲の人に影響を与えたであろう心理的ダメージについて掘り下げています。 
 
 英国アカデミー賞で3度の受賞経験があるリード監督は、特にこのテーマについては長年関わってきました。

 2014年には、未成年の少女を装って小児性愛者を捕まえるスティントン・ハンターらのグループを追ったドキュメンタリー『The Pedophile Hunter(原題)』を公開しました。『Leaving Neverland』はこのドキュメンタリーにも負けず劣らず、衝撃的なものだということ。

 「スレート」の記事はサンダンス映画祭でのプレミア上映後に書かれたもので、「『Leaving Neverland』を観ている人が、ロブソン氏やセーフチャック氏に懐疑的な目を向けることは想像し難い」と記しています。 

 
1993年と2005年の訴訟
 
 
 このドキュメンタリーのテーマは、特に新しいものではありません。マイケルは過去にも、児童への性的虐待の疑いで捜査を受けたことがあります。セーフチャック氏とロブソン氏のケースのほかにも、マイケルは別の2つの虐待疑惑で訴訟を起こされたこともあるのです。 
 
 このうち最も注目を浴びたのは、彼の全盛期である1993年に起こされた訴訟ですが、最終的には法廷外での和解となり、彼に刑事罰が課されることもありませんでした。この訴訟は、ジョーダン・チャンドラーというファンの少年について、マイケルを性的虐待の疑いで訴えるものでした。この訴訟のストレスによる健康上の問題を理由に、マイケルはワールドツアーの後半をキャンセルするに至りました。

 一方、もう1つの訴訟は2005年のもので、児童の性的虐待や誘拐・恐喝の陰謀、酒を飲ませたことなど複数の容疑に関わるものでしたが、最終的に陪審員はマイケルを無罪と判断しました。 
 

2017年の訴訟の棄却
 
 
『Leaving Neverland』で取り上げられているのは、セーフバック氏とロブソン氏の訴訟です。2人はジャクソン・エステートとの複雑な関係を経て、それぞれ2013年と2014年に訴訟を起こしていましたが、いずれの訴訟も2017年に棄却されていました。 
 

ドキュメンタリーへの反応 
 
 マイケルの遺族はすぐさま反応し、このドキュメンタリー映画を非難する声明を発表しています。

 「...この公開が続き、ハゲワシのようなツイッターユーザーやマイケルに会ったこともない人々が彼を追い回すのを黙って見過ごすことはできません。マイケルはもはら自らを守ることはできませんので…。それができたのなら、これらの申し立てがなされることもなかったでしょう」としています。 
 
 リード監督はこれに対し、「USAトゥデイ」紙のインタビューの中で、「遺族の声明には、この映画への懸念や内容のある批判は含まれていません。彼らは明らかにこの映画を観ておらず、彼らの主張について話すことはありません」と反論しています。 
 
 この映画を非難しているのは、マイケルの遺族だけではありません。マイケルのファンたちも黙っておらず、サンダンス映画祭のラインナップからこのドキュメンタリーを外し、プレミア上映をやめるよう要求していました。サンダンス側はこの批判を受け止めつつ、「映画祭からこの作品を外すことにはない」としています。 
 
 「ワシントン・ポスト」紙によれば、HBOでの『Leaving Neverland』は公式な放映日は現時点で決まっていないものの、放映は2019年春(英国公開)に予定されているそうです。 
 


 

From Esquire UK 
Translation / Wataru Nakamura 
※この翻訳は抄訳です。 


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