米国で同時にヒットしている原子爆弾の開発者J・ロバート・オッペンハイマーの伝記映画『Oppenheimer』と、マテル社の人形の世界観を大胆に解釈した『バービー』。COVIDE-19による打撃もあり長らく低迷が続いた劇場映画を復活させる同時ヒットとあってか、ハッシュタグ「#Barbenhimer」がトレンド入りまでする事態に。

そんな中、ある個人アカウントが『Oppenheimer』のポスタービジュアルに、マーゴット・ロビー演じるバービーを組み合わせた作品を投稿。それが瞬く間にシェアされていきました。問題になったのはこのミームに、『バービー』本国のX(元twitter)アカウントが「It's going to be a summer to remember(忘れられない夏になりそう)」と乗っかったことです。さらに問題だったのはこの1投稿だけでなく、その後も同様の複数のミーム投稿に、ポップな語り口でリプライをしていたことです。

日本はもちろんのこと、海外からも多くの人々がこれに対して憤慨、そして抗議の声があがりました。さらには、こうした抗議のツイートに「Barbenhimer」のポップアートをプリントしたTシャツを販売しているECサイトを次々にリプライするアカウント(嫌がらせ?売名?)も現れるなど、プラットフォームは荒れに荒れた状態に…。

これに対して「#NoBarbenhimer」というハッシュタグも生まれる中、ワーナー ブラザース ジャパンは公式アカウントで親会社であるワーナー・ブラザースに対し、「配慮に欠ける」とした遺憾の意を表明し、「アメリカ本社に対して然(しか)るべき対応を求めている」と説明。子会社が親会社に対して謝罪を求めるという、極めて異例な事態にまで発展しました。

これはxの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

そうして現地時間2023年7月31日午後10時59分、ワーナー・ブラザースはエンターテインメントサイト『Deadline』で公式コメントを発表しました。

「Warner Brothers regrets its recent insensitive social media engagement. The studio offers a sincere apology(ワーナー・ブラザースは先日の無神経なソーシャルメディアへの対応を後悔しています。スタジオとして真摯に謝罪したいと思います)」

これはxの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

きのこ雲に関しては、これまで日本のアニメーションなどでポップ文化表現のひとつとして使用されてきた部分もあります。ですが、原子爆弾という大量虐殺兵器を使用した側が軽々しく消費することは、現実の被害者の存在を軽視すること・侮辱することに他なりません。

『バービー』はジェンダーに関する観念を見事に風刺した非常に優れた作品である分だけ、「観たかったけれどもう観ない」というコメントが続出する事態は、非常に残念と言えます。これをきっかけに、本国の宣伝方法に無自覚に従わない姿勢やときに対峙する覚悟、広報活動におけるSNS担当者のトレーニング方法など多くの点で、映画宣伝の進歩が期待されます。